新型「3シリーズ」は本当にBMWらしいのか? 元カーデザイナーが感じた変化とは ——渕野健太郎の「カーデザイン解説ラボ」#8
元スバルのカーデザイナー・渕野健太郎氏が、いま気になるクルマを紹介! 今回は、BMWの次世代コンセプト「ノイエ・クラッセ」を採用した新型「3シリーズ」に注目する。
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新型3シリーズはコンセプトカーからどう変わった?
BMW 3シリーズといえば、カーデザインの世界でも長年ベンチマークとされてきた、FRセダンのお手本とも言える存在です。そのクルマが今回新型になりましたが、少しややこしい展開に。まずBEVのi3が発表され、続いて今回取り上げるICEの3シリーズが登場しました。
この2台は、BMWの新世代コンセプト「ノイエクラッセ」に基づいています。デザインのルーツは2023年発表のコンセプトカー「ビジョン・ノイエクラッセ」で、モチーフを一言で言えば「シンプル」。ただし、コンセプトカーにあった軽快さは薄れ、重厚さすら感じます。
i3が登場したとき、私はあまりBMWらしくないプロポーションに戸惑いましたが、3シリーズは従来的なFRらしいロングノーズ・ショートデッキの比率です。ここ30年ほどのBMW製セダンはほぼこのバランスだったので、ある種の安心感がありますね。おそらく、旧型と内部構造を共用している部分も多いのではないでしょうか。新旧をサイドビューで重ねると、タイヤの位置や前後オーバーハングの長さをはじめ、フロントガラスからAピラー、Bピラー、ドア分割位置もほぼ同じです。
さて肝心のデザインですが、サイドビューは近年のセダンでは珍しいくらいシンプルに仕上がっています。特に特徴的なことは、通常ドアの下部にある光を受ける上向き面が無いこと。ちなみに旧型は、ここに強い立体がありました。この面には、クルマを低重心に見せることをはじめ、間延び感を払拭したり、立体感や前後のつながりを表現する役割があります。デザイン上、非常に重要な要素なのです。
ライバルでも、例えばアウディのデザインは必ずここに強い上向き面があります。メルセデスもアウディほどは強調されていませんが、リアバンパーに繋がる重要な役割がある面なんですね。これを省くのは、実はかなりチャレンジングなものだと感じます。
渕野健太郎氏による「BMW 3シリーズ」のデザイン解説
ちなみにコンセプトカーも同じようなデザインなのですが、ドア断面が全く異なるんですよ。コンセプトカーのドア断面は明確な台形になっており、これによって低重心な印象を表現していたんです。この断面は新鮮でした。しかし量産車である3シリーズ(i3も同様ですが)は、強いショルダーを持っており、断面は通常のクルマに近いです。コンセプトカーとは似ているようでかなり異なるんですね。このショルダーを設けた意図は分かりかねますが、これにより重厚なイメージになったと感じます。やはりドイツ車は視覚的な重さが必要という事でしょうか。
フロントは、グリル部が明確に逆スラントしているシルエットですが、旧型よりやや「重い」イメージです。これは最新の歩行者保護要件の他に、逆スラントにするためのデザインしろ(余地)を稼いだ感じもします。オーバーハングの重さは、BMWのようなスポーティを売りにしているブランドであれば避けたいところですが、ここはデザインを優先させたような気もします。
グリルとヘッドランプが一体になったデザインはコンセプトカーから踏襲されたもので、これ自体はシンプルにしたいという意図が明確ですね。近年のBMWはモデルチェンジのたびにキドニーグリルが大型化されるので賛否両論ありました。市場の要望を踏まえれば理にかなっていたのですが、BMW自身も疑問を持っていたのではないでしょうか。今後反応がどう出るか、大変興味深いです。
リアはBMWらしく、インテリアは大胆に変化
渕野健太郎氏による「BMW 3シリーズ」のデザイン解説
リアはいつものBMW的なシルエット。車幅が旧型から25mm拡大されたこともあり、ボリューミーなリアフェンダーが魅力的です。ただし、コンセプトカーは、トランク周りのシルエットも逆スラントでした。これにより軽快さを出していたのですが、3シリーズには(i3も)片鱗が見られません。もちろん各種要件によって出来ないことはあるのですが、マツダ6eのような造形もあり得るので、もう少し明快さが残っていても良かったのでは、と思うところです。
インテリアは、エクステリア以上にガラッと変わりました。最大の特徴はインパネ奥に設置された横長のディスプレイでしょう。手元にも平行四辺形のような異形の画面があり、2つのディスプレイで表示機能を分担しています。この組み合わせはiX3やX5、7シリーズなど、最新のBMW全てに共通したもので、一枚ディスプレイにこだわっているメルセデスとは異なる考え方で面白いですね。ただ空間全体としてスポーティさよりルーミー(開放的)な印象の方が強いので、こちらも既存のBMWファンにどう映るのか、気になります。
BMW M350 xDrive
ノイエクラッセでBMWのデザインがガラッと変わろうとしています。基本的にはシンプルにしようとする意図がよく分かるのですが、これまでの歴史を踏まえるとやや唐突に感じる部分も。ただ、まだ始まったばかりなので、新たなBMWらしさを築き上げることに期待したいです。
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