新型「パジェロ」のデザインを徹底解説! ランクル250とは異なる「上質なクロカン」の形とは?——渕野健太郎の「カーデザイン解説ラボ」#7
元スバルのカーデザイナー・渕野健太郎氏が、いま気になるクルマを紹介! 今回は、20年ぶりのフルモデルチェンジを受け、10月1日に予約注文の受付が始まったばかりの三菱「パジェロ」に注目する。
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新型パジェロは「上質なクロカン」を目指した?
国内では7年ぶりの復活となる新型パジェロが、大きな注目を集めています。ボディサイズは全長4920×全幅1925×全高1910mm、ホイールベース2870mmで、トヨタ・ランドクルーザー250(以下ランクル250)にかなり近い寸法。そのためよく比較されますが、デザインの方向性は大きく異なります。
ひと言で表すなら、新型パジェロは「上質」。本格クロスカントリーの中で、という注釈付きですが、ラギッドで機能的なランクル250と比べると、プロポーション、面質、線質のどれにも上質さを感じます。
基本的な立体構成はシンプルで、スタンスの良さ、造形の破綻のなさなど、欧州車的な仕上がりを感じます。一方で、近年のカーデザインによくあるリフレクションの変化などは抑えられており、面を大胆に動かすデザインとは対極にある、極めて王道な構成になっています。
まずサイドから見ていきましょう。薄いキャビンと厚いロアボディの組み合わせが、力強いプロポーションを生み出しています。ロア部の黒樹脂は最小限。サイドウインドウが一段下がり、黒樹脂を多用して機能性を感じさせるランクル250とは対照的に、ボディの厚みを強調して上質に見せる手法です。
ボディの基本的な軸は、前後のシルエットからも分かるように高めです。もともと背の高いラダーフレームのクロスカントリー車とはいえ、やや高すぎる気もします。この点は実際に街で走る姿を確認したいところですね。
また、個人的に注目しているのは、ボンネットのシルエットからサイドウインドウ下端線にかけてのラインが、前後フェンダーと連動している点です。これによりボディ全体で力強さを表現していると言えます。特徴的なCピラーの処理は、他の三菱車(海外向けのデスティネーターなど)にも見られるもので、キャビンを必要以上に長く見せない工夫でしょう。
新型パジェロの顔つきは賛否両論?
フロントは面構成が特徴的。面取りを多用した立体構成はかなり複雑ですが、不思議と一体感があります。ヘッドランプ周りには、サイドからのラインがぐるりと回り込んでいます。リアも同じモチーフですが、フロントはグリルがある分だけ存在感がやや薄く、グリルの輪郭がこのラインとあまりリンクしていないため、少し煩雑に見えるかもしれません。
渕野健太郎氏による「三菱 パジェロ」のデザイン解説
下回りを見ると、クロスカントリー車らしくアプローチアングルをしっかり確保した造形です。歩行者保護の面では不利ですが、オフロードでの機能性を優先した処理でしょう。下端部はフロントだけでなく、サイドやリアでもしっかり絞り込まれています。これが造形の塊感とスタンスの良さに直結しており、実はデザインのキモとも言えそうです。
ヘッドランプは賛否が分かれているようですね。バンパーコーナーをしっかり主張させるデザインは、ワイド感や高さ感を出す狙いですが、昔からのファンには丸目を期待していた方もいるでしょう。ただ、パジェロの主な市場はアジア各国、中東、オーストラリアなど多岐にわたります。そうした市場で上質さや堂々とした存在感が重視されることを考えれば、この選択にも納得がいきます。
リアとインテリアでは上質感をどう表現した?
リアもフロント同様にスタンスが良く、立体構成が明快で、むしろフロントより力強い印象です。特に、サイドからリアコンビ周辺を回り込んでロア部へつながる面取りのような処理は、ラギッドさと上質さを両立させています。リアデザインでこれだけ立体感を出すのは難しく、上手いモチーフだと思います。
渕野健太郎氏による「三菱 パジェロ」のデザイン解説
最後にインテリアですが、トレンドである水平基調のインパネは広さ感の演出に効果的。ただ一歩間違うと線が細くなり、本格クロスカントリーらしいゴツさとは異なる印象になります。
しかしパジェロはインパネ中央に分厚い革調のソフトパッド(素材はPVCだと思います)を効果的に使い、ディスプレイ、通風口、ボタン類など機能部はひとまとめにしています。これにより、室内の広がりを感じさせるデザインと、本格クロスカントリー車らしい力強さを両立させています。目的と手段が明快で、近年最もデザインの良いインパネかもしれない、と個人的には感じています。
三菱パジェロ|Mitsubishi Pajero
新型パジェロのデザインは、「上質さ」を軸に、本格クロスカントリー車としての力強さと機能性をうまくまとめています。薄いキャビンと厚いボディの対比や、絞り込まれた下端によるスタンスの良さ、明快なインテリアなど、魅力的な要素が随所に見られます。細かいところでやや煩雑に見える部分など気になる点はありますが、ランクル250とは別の価値観で「本格クロカンの上質さ」を打ち出した点が見事だと思います。
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