新型フィアット・グランデパンダのMTモデルに乗ってみた! イタリア人の「ツボ」にドンピシャ!——『イタリア発 大矢アキオ ロレンツォの今日もクルマでアンディアーモ!』第69回【Movie】 | KURU KURA(くるくら)

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公開日:2026.09.25

『イタリア発 大矢アキオ ロレンツォの今日もクルマでアンディアーモ!』第69回【Movie】——イタリア人の「ツボ」にドンピシャ! 新型フィアット・グランデパンダに乗ってみた

イタリア人の「ツボ」にドンピシャ! フィアット・グランデパンダに乗ってみた

イタリアでじわじわと存在感を高めている、フィアットのコンパクト・クロスオーバー「グランデパンダ」。今回、大矢アキオ ロレンツォさんが試乗したのは、2026年5月に追加された3気筒1.2リッター・ターボ+6速MTの「ターボ100」だ。イタリア人の心をつかんだ、その魅力とは?

イタリア人の「ツボ」にドンピシャ! フィアット・グランデパンダに乗ってみた

文・写真・動画=大矢アキオ ロレンツォ(Akio Lorenzo OYA)

写真・動画=大矢麻里(Mari OYA, Akio Lorenzo OYA)

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人気加速の理由

2025年5月の本欄第57回で紹介したコンパクト・クロスオーバー「フィアット・グランデパンダ」。筆者が住むイタリアで、販売店の厚意により特別に試乗する機会を得たので、今回はそのお話を。

ブランド発祥の地イタリアで、グランデパンダは発売直後から引く手あまたというわけではなかった。登録台数に勢いがついたのは、実は2026年に入ってからである。

2026年8月におけるグランデパンダ全車種の登録台数は1561台。同じフィアットの従来型「パンダ」、ルノー・グループの1ブランドであるダチアの「サンデロ」、「シトロエンC3」、「ジープ・アベンジャー」に次ぐ5位に入っている。実際に街でも頻繁に見かけるようになった。

好調のきっかけは2026年5月、3気筒1.2リッター・ターボ100HP+6段マニュアルの仕様が「ターボ100」の名称で投入されたことだった。これによりデビュー時のEV仕様、3気筒1.2リッターターボのマイルドハイブリッド仕様と合わせて3種のパワーユニットから選択できるようになった。

ターボ100は、従来グランデパンダに興味はあったものの、EVやマイルドハイブリッドのオートマチックを敬遠していたユーザーの関心を一気に呼び込んだ。参考までに2024年調査で、イタリアの新車AT普及率は52%にとどまる(データ参照:JATOダイナミクス-Motor1 2024年)。EVやマイルドハイブリッドより安い1万7900ユーロ(約326万円。イタリア付加価値税22%込み)という価格設定も奏功した。

イタリア中部トスカーナ州に展開するフィアット正規販売店グループ「ウーゴ・スコッティ」の特別な計らいで、市街地および郊外道路を試乗したのは、まさにそのターボ100であった。

装備グレードは個人向けに設定された3段階の最上級「ラ・プリマ」で、車体色はフィアットが国際的チャリティー・ファンド「RED」に協賛していることを示す赤である。販売店では、2カ月前に新車登録されて以来、試乗やデモに供されてきた車両だ。

筆者が対面した日には、彼らが前々日にスポンサーを務めた「ミス・イタリア」地方大会のきらびやかなデカールが残っていた。以下はあくまでもイタリア国内仕様であること、また本稿執筆時点でこの仕様が日本に導入されるかは不明であることをおことわりしたうえで、解説を進めてゆく。

トスカーナ州シエナ県で長年フィアットを扱う販売店「ウーゴ・スコッティ」にて。

トスカーナ州シエナ県で長年フィアットを扱う販売店「ウーゴ・スコッティ」にて。

営業スタッフのフランチェスコ・スグラメッラ氏(1997年生まれ)。インタビューの模様は動画で。

営業スタッフのフランチェスコ・スグラメッラ氏(1997年生まれ)。インタビューの模様は動画で。

フィアット・グランデパンダ・ターボ100。試乗車は最上級のグレード「ラ・プリマ」で、基本価格は2万2650ユーロ(約412万円)。この「レッド」仕様は900ユーロ(約16万4千円)のオプションである。販売店のデモカーゆえ、協賛した「ミス・イタリア」地方大会のロゴが貼られていた。

フィアット・グランデパンダ・ターボ100。試乗車は最上級のグレード「ラ・プリマ」で、基本価格は2万2650ユーロ(約412万円)。この「レッド」仕様は900ユーロ(約16万4千円)のオプションである。販売店のデモカーゆえ、協賛した「ミス・イタリア」地方大会のロゴが貼られていた。

秀逸なデザイン

全長は3999mm、すなわち4メートル以下に抑えられている。イタリアで頻繁に遭遇する縦列駐車にはありがたいサイズである。いっぽう全幅が1760mm、全高が1585mmあるのでそれなりの塊感がある。中世の建築物にも対峙できる力感であり、意外にも日本車のデザインに欠けている要素だ。

ダッシュボードに広がる大きな棚は、初代パンダ以来の意匠に新たな解釈を加えたものである。メーターパネルと10.25インチ・タッチスクリーンを囲む枠、そしてセンターコンソールの黄色い楕円は、フィアットの歴史的生産拠点であるリンゴット工場の屋上テストコースへのオマージュである。スクリーンの隅には初代パンダのミニチュアが配されている。

ただし、ノスタルジーだけでインテリアを評価するのは早計だ。車内の色調や、ドアの内張りをはじめとするプラスチック部品は、いずれも不器用に高級感を追い求めていないところが潔い。フランソワ・ルボワン率いるフィアットのデザインチームが、イタリアン・プロダクトデザインの美点を正しく理解した結果といえる。

竹繊維を表面に用いた小物入れ「バンボックス」の趣は悪くない。だがすでに擦れが見え始めていたから、長く使うには丁寧な扱いが必要と思われる。また、マニュアルのシフトレバーを置いた代償として、EVやマイルドハイブリッド仕様にあったスマートフォンの置き場所は無くなってしまった。

前席の着座位置は高めだが、特異な姿勢を強いられないのが好ましい。身長166cmの筆者に頭上空間は十分確保されていた。座面、バックレストともサポートは適切だ。四角いフロントフード形状のおかげで前方の見切りは良好である。対して初代の意匠を再現した太いCピラーのため、後方確認にはリアビューカメラとの併用がベターだ。

後部座席の前方視界が良いのは、肩の部分を落とした前席バックレスト形状の恩恵だ。残念なのは、前方から延びているセンターコンソールによって中央の足元が狭いことと、空調吹き出し口が無い点である。

グランデパンダはセルビア工場製。欧州のクラス分けでは従来型パンダがセグメントAなのに対して、セグメントBに属する。初代のデザインを巧みに再解釈している。

グランデパンダはセルビア工場製。欧州のクラス分けでは従来型パンダがセグメントAなのに対して、セグメントBに属する。初代のデザインを巧みに再解釈している。

ラ・プリマ仕様にはルーフレール、17インチ・アルミホイール、電動格納式ドアミラーなどが標準装備される。テールゲートの敷居は高め。開閉は手動である。

ラ・プリマ仕様にはルーフレール、17インチ・アルミホイール、電動格納式ドアミラーなどが標準装備される。テールゲートの敷居は高め。開閉は手動である。

Bピラーに貼られた「レッド」仕様を示すバッジ。

Bピラーに貼られた「レッド」仕様を示すバッジ。

後部ドアのFIATロゴは見る角度によって浮き上がる。

後部ドアのFIATロゴは見る角度によって浮き上がる。

3気筒1199ccターボの最大トルクは205Nm。カタログ上の最高速は160km/hで、WLTP混合モード100kmあたり燃費は5.7〜5.6リットル(約17.5〜17.8km/リットル)である。

3気筒1199ccターボの最大トルクは205Nm。カタログ上の最高速は160km/hで、WLTP混合モード100kmあたり燃費は5.7〜5.6リットル(約17.5〜17.8km/リットル)である。

センターディスプレイ(注:試乗車のため、保護シールは剥がされていない)は10.25インチ。ラ・プリマ仕様にはナビとオートエアコンが標準装備される。

センターディスプレイ(注:試乗車のため、保護シールは剥がされていない)は10.25インチ。ラ・プリマ仕様にはナビとオートエアコンが標準装備される。

フィアットのお家芸である粋なプラスチック使いが発揮されている。

フィアットのお家芸である粋なプラスチック使いが発揮されている。

メーターのディスプレイはグラフィック・書体ともそれほど遊びは感じられない。

メーターのディスプレイはグラフィック・書体ともそれほど遊びは感じられない。

センターコンソールとダッシュボードの鮮やかなループは、フィアット旧リンゴット工場屋上テストコースへのオマージュ。

センターコンソールとダッシュボードの鮮やかなループは、フィアット旧リンゴット工場屋上テストコースへのオマージュ。

助手席側には通常のグローブボックスに加え、竹繊維を表皮に用いた「バンボックス」が備わる。

助手席側には通常のグローブボックスに加え、竹繊維を表皮に用いた「バンボックス」が備わる。

ディスプレイの右端に配された初代パンダのミニアチュア。

ディスプレイの右端に配された初代パンダのミニチュア。

頼もしいターボ

始動は、キーをステアリングコラムに差し込んで回す方式である。デジタルディスプレイのグラフィックは、内外装と比較するとやや保守的だ。タコメーター表示も無い。

ステアリングのパワーアシストは乗る人によっては軽めに感じるかもしれない。また、中央付近の遊びも好みが分かれるだろう。だが大半のユーザーにとっては許容範囲といえる。3本のペダルの位置も申し分ない。

前輪を駆動するEB型エンジンの歴史は、それなりに長い。フィアット・ブランドを擁する旧FCAグループとフランスの旧PSAグループが合併してステランティスとなる以前、2012年「プジョー208」に搭載され、のちにピュアテックと呼ばれた自然吸気ユニットにまでさかのぼる。

今日のEB型は、従来問題があった湿式タイミングベルトをタイミングチェーンに替え、可変ジオメトリーターボを装着した第3世代である。そのターボに関していえば、市街地では存在をあまり感じさせないが、機敏な発進や追い越しが必要なときは、滑らかにかつ頼もしく反応してくれる。

トランスミッションに関していえば、とくに3速で使えるトルクの有効回転域がかなり広い。クラッチもそれほど踏力を要さず、繋がりが滑らかゆえ、ATからMTへの回帰派もそれほど苦労を強いられないであろう。サスペンションは、イタリア名物ともいえる郊外道路の荒れた路面でピッチングを感じることもあるが、不快というほどのものではない。

運転姿勢は自然。室内に閉所感は無い。

運転姿勢は自然。室内に閉所感は無い。

後席は前席バックレスト形状のおかげで、こちらも開放感が保証されている。

後席は前席バックレスト形状のおかげで、こちらも開放感が保証されている。

欲をいえば後ドアはもう少し広い開口角度がほしいところだが、不便なレベルではない。

欲をいえば後ドアはもう少し広い開口角度がほしいところだが、不便なレベルではない。

ラゲッジルーム容量は412リットル。これは標準的キャビントロリーを積んだところ。

ラゲッジルーム容量は412リットル。これは標準的キャビントロリーを積んだところ。

分割式後席バックレストは完全フラットにはならない。だが「あともう少し」の積載性は十分に確保できる。

分割式後席バックレストは完全フラットにはならない。だが「あともう少し」の積載性は十分に確保できる。

イタリア家庭のような

話は変わるが、イタリアでは中世以来の家にデザイン家具を組み合わせてコントラストを楽しむ家庭があるいっぽうで、新築アパルタメントに、代々家族で使い慣れた調度を運び込んで愛用している家も珍しくない。

今回のグランデパンダは後者だ。斬新な佇まいでありながら、操作系は慣れ親しんだイグニッションやマニュアル変速機、そして伝統的なレバー式パーキングブレーキ(EVおよびマイルドハイブリッド仕様は電動式)を残している。

走りも長年のフィアット愛好者を裏切らない。そして、小さな村まで網羅したフィアット・サービス網に頼れる。イタリア人の「ツボ」にはまる1台であり、それこそがイタリアで人気の理由であると確信した。自動車の無国籍化が進行した昨今において、久々にブランド発祥地の文化を漂わせる1台である。

ラ・プリマ仕様は、ヘッドライトだけでなくウィンカーもフルLEDとなる。

ラ・プリマ仕様は、ヘッドライトだけでなくウィンカーもフルLEDとなる。

必要時に十分な加速が得られるターボは、追い越し時などにきわめて有効だ。

必要時に十分な加速が得られるターボは、追い越し時などにきわめて有効だ。

市街地や郊外で、3速の有効域はかなり広い。

市街地や郊外で、3速の有効域はかなり広い。

コンパクト・クロスオーバーを探す人にとって、同じステランティスのスマートカー・プラットフォームを用いた「シトロエンC3」とどちらを選択するかは悩ましい問題となろう

コンパクト・クロスオーバーを探す人にとって、同じステランティスのスマートカー・プラットフォームを用いた「シトロエンC3」とどちらを選択するかは悩ましい問題となろう。

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