『イタリア発 大矢アキオ ロレンツォの今日もクルマでアンディアーモ!』第67回【Movie】——新しいスーパーカーショーで起きた、若者たちの「驚き」
ヒストリックカーの祭典「レトロモビル」から、新たなイベントが誕生した。その名も「アルティメート・スーパーカー・ガレージ」。現代のパリっ子たちは、スーパーカーをどう受け止めているのだろうか。
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わっ、これって12年前の……
「究極のスーパーカー・ガレージ Ultimate Supercar Garage(以下USG)」と銘打ったショーが2026年初春にフランス・パリで催された。第50回を迎えた著名ヒストリックカー・イベント「レトロモビル」の姉妹イベントとして、今回初めて企画されたものである。
事前の開催概要には、ブガッティ、フェラーリ、ベントレー、ランボルギーニ……といったブランド名が並んでいた。それを見た著者の印象を正直に告白すれば、「きっと見慣れた既存モデルが展示されるだけだろう」というものだった。
当日ポルト・ド・ヴェルサイユの見本市会場を訪れると、2カ所あるパビリオン入口のひとつはレトロモビルと直結で、共通券を購入した来場者は往来できるようになっていた。面白いのはレトロモビル側の最後は、展示中で最も素朴な「3万ユーロ(約550万円)以下の中古車コーナー」だ。そのため、USGに足を踏み入れたときの別世界観は、さらに強調された。
実際の会場は前述の思い込みとは異なり、内容がかなり新鮮だった。その代表はブガッティで、「F.K.P.オマージュ」を前夜祭で世界初公開した。ヴェイロンの誕生20周年を記念するとともに、ブランド復興に貢献したフォルクスワーゲン・グループの元会長・故フェルディナント・カール・ピエヒ博士を讃えたワンオフである。ヴェイロンの再解釈であるが、メカニズムはシロンがベースで、製作は同社のスペシャル部門「プログラム・ソリテール」が担当している。
ブガッティのカスタマイズド部門は会場でF.K.C.オマージュ(手前)を世界初公開した。奥は誕生20周年を迎えたヴェイロン。(photo : Bugatti)
ブガッティはヴェイロンの誕生20周年を祝った。(photo : Bugatti)
マセラティとアルファ・ロメオは、2025年11月に発表した新プログラム「ボッテガ フオリセリエ(ボッテーガ・フォーリセリエ)」を紹介した。こちらの詳細は動画でご覧いただこう。
ブースでは、3週間前にブリュッセル・モーターショーで公開したばかりのアルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオの特別仕様「ルナロッサ」を展示した。参考までに世界限定10台はすでに完売という。
アルファ・ロメオが公式スポンサーを務める著名セーリングチームの名前を冠したジュリア・クアドリフォリオ・ルナロッサ。同モデル中最高水準の空力性能を謳う。
ボッテーガ・フォーリセーリエの活動を解説してくれたカミッラ・ロスターニョさん。詳しくは動画で。
マセラティGT2ストラダーレ(手前)とMCXtrema
いっぽう、ベルトーネも参加していた。イタリアにおける伝説的カロッツェリアの名称を取得したルクセンブルク企業によるもので、彼らが会場で披露したのはマルチェッロ・ガンディーニによる1969年のショーカーを若きデザイナー、アンドレア・モチェリンが再解釈したモデルだ。販売予定価格は税別39万ユーロ(約7100万円)という。
伝説のカロッツェリアの名前を復活させた新生ベルトーネ。1969年の名コンセプトカー、ラナバウト(奥)の新解釈を初公開した。
新ラナバウトのインテリア。ミドシップのエンジンは、トヨタ製を基にしたロータス・エキシージの3.5リッターV6である。
過去のクルマを基に近代化を図るレストモッドも意欲的なものが数々みられた。また、「クォークス」に代表される少量生産ハイパーカーの多くが、エキセントリックな外観とは裏腹に、公道走行が可能であることを謳っていることもビジターたちの関心を誘っていた。
ポルシェ928をベースにレストモッドを手掛けるフランスのナルドーヌ・オトモビルの最新作。
イタリアのエッチェントリカ・カーズ社がランボルギーニ・ディアブロの車体をフルカーボン化した1台。パワーユニットはハイブリッド・モジュールを追加することで強化を図っている。(photo : Ultimate Supercar Garage)
会期中は6万人を超える来場者で賑わった。1日数回のトークイベントではフランスの自動車ジャーナリスト、ジェラルディーヌ・ゴディ(中央)が各出展車両と関係者をステージ上で迎えた。
主催者発表によると、4日間で6万3450人が来場した。それは過去最高を記録したレトロモビル来場者層の若返りにも一役買ったようだ。実際にヘッドホンをしながら会場を楽しんだり、仲間とお気に入りの展示車を見つけては自撮りを楽しむ女子グループなど、従来のレトロモビルにはなかった光景が数々みられた。
そうしたなか著者にとっては、ある高級車ショップのブースでひとりの若者が呟いた言葉が印象的だった。「わっ、これって12年前のクルマなんだ。最新型みたいだよ」。
彼の視線を追うと、そこには2014年の「ラ・フェラーリ」があった。今日のクルマも十数年後に同じことを人々に言わしめるだけの魅力を備えているのか、興味深いところである。
往年のF1選手エマーソン・フィッティパルディを記念したロータス・エヴァイヤの限定モデル。こちらは世界限定8台。
ルノーも出展。5ターボ3Eはインホイール・モーターで後輪を駆動、最高出力は555HPに達する。
1978年創業で、かつてはロータス・スーパー・セヴンに着想を得たキットカーで知られたドンカーブート。これは彼らの近作である「P24RS」で、エンジンはフォードGTのものを使用している。
2023年にイタリアで設立されたラフィット・アウトモービリによるLM1。1000HPエンジンを搭載。コンセプトは「公道のル・マンカー」である。
1960年代のクルマへのノスタルジーが原点というイタリアのコンストラクター、アウトモービリ・リニャッタのリーナ。
一角には高級ヒストリックカー・ショップのコーナーも。間もなく誕生40年のフェラーリF40にも熱い視線やカメラが向けられていたのは、強烈なオーラゆえか。




