僕の愛したポルシェたち【994S編】——河村康彦の「ポルシェは凄い!」#18 | KURU KURA(くるくら)

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公開日:2026.10.05

僕の愛したポルシェたち【994S編】——河村康彦の「ポルシェは凄い!」#18

ポルシェ944S|Porsche 944S

いつの時代もスポーツカーファンから一目置かれているブランドと言っていいポルシェ。ではポルシェのいったい何が凄いのか。ポルシェ愛好家のモータージャーナリスト河村康彦の連載コラム、今回からは筆者がこれまで所有してきたポルシェ車を順に振り返る。まずは「944S」から。

ポルシェ944S|Porsche 944S

文=河村康彦

写真=ポルシェ

編集=細田 靖

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高速でどこまでも走って行く気にさせてくれた

最近になって突如の復活が話題となっている三菱パジェロの初代モデル、世界初となるセンターピラーレス構造のボディが画期的だったミニバンの先駆け的存在とも言える日産プレーリー。そして先頃、ほぼ四半世紀ぶりとなる6代目が復活を遂げ話題を集めたホンダ・プレリュードの2代目、母国日本からは姿を消したものの現在でもアメリカでモデルライフを重ねるトヨタ・カムリの初代モデル等々と、そんな数々のメモリアルなモデルが誕生したのが1982年。そんなタイミングでとある月刊自動車誌の編集部へともぐり込んだ自身はその後、必然的に内外を問わず様々なニューモデルへと触れるチャンスに恵まれることになった。

そうしたなかにあっても、ある時の取材でトヨタ・ソアラの初代モデルなども交えながら都心の編集部から関西地方にまで脚を伸ばしたポルシェ944にはとくに、まさに目から鱗が何枚も落ちる経験をさせられたことを今でも鮮明に覚えている。

さすがに詳しい行程などはもはや忘却の彼方だが、取材へと連れ出したのはターボなど付かない“普通の944”だったことは確か。

全幅が1.7m以下という5ナンバーサイズが大半だった当時の日本車たちと比べると、相対的に大いにグラマラスに見えたボディのサイズは、古いカタログを引っ張り出して改めて確認してみると全長×全幅が4300×1735mmと、むしろ現在では「コンパクト」という表現が当てはまるに過ぎない大きさ。

ポルシェと耳にすれば誰もが911の姿を思い浮かべるに違いなかったなかにあって、異例とも言えるフロントフードの下に収まっていたのはボア×ストローク値が100.0×78.9mmと、極端とも言えるオーバースクエアのデザイン持つ単なるOHCの2.5リッター水冷直列4気筒ユニット。それが発する最高出力は160ps(DIN)に過ぎなかった。すでにソアラが6気筒から170ps(グロス)をマークするなど、スペック的にも格段目を見張るようなデータは存在しなかったと言っていい。

けれどもそんな944は、確かに加速は大したことのなかった一方で、速度を高めて行くほどに「路面に吸い付く」という比喩がピタリと当てはまる感覚を味わわせてくれることに心底驚いた。これがアウトバーン育ちの走りというものなのか! いくら走っても疲れを微塵も感じさせない。まだまだ経験豊富とは言えなかったものの、それでもそれまで乗ったすべての日本車は速度が高まるほどに緊張感も加速度的に高まっていくのが当然だったが、944は高速でどこまでも走って行く気にさせてくれたのである。

何ともお粗末と言うしかない招かざるトラブルも

ポルシェ944S|当時のカタログより

ポルシェ944S|当時のカタログより

かくして、このクルマを知る以前は半ば“スペック至上主義”になりかけていた自分を、「速さとはエンジンパワーではなく脚で決まるんだ」と強く改心させてくれたのはこの時。大多数の人が一目を置くポルシェとなれば当然911ということになるのだろうが、実体験として“ポルシェの凄さ”を教えてくれたのはだから自分の場合には944だったということになる。

そして、そんな944は“曲がり”も凄かった。

196/65VR15と現在であれば到底スポーティなどとは言えないサイズのタイヤもあって、当時でもさほどグリップ力に長けた感覚は受けなかった。が、ターンインからコーナー出口にかけてのどこまでも自在に操れるバランス感覚の高さは、やはり構造が複雑でコストも掛かるに違いないトランスミッションをリヤアクスル部分へと置いたトランスアクスル方式の恩恵を実感させるものだった。

そんな944をぜひとも手に入れたくはなったものの、それが叶ったのはそうした経験から5、6年ほどの月日が経った後のこと。価格的に新車には手が届かなかった一方で、月日の流れもあって、1987年にDOHC化によって最高出力が190psにアップされたブラックメタリックの944Sの中古モデルと巡り会い、相変わらずの圧倒的とも言える高速巡行性能の高さに魅了されることになったのである。

ところが、確かに走りは期待どおりだったそんな944S、後に経営危機にも繋がる品質問題までもを、身をもって教えてくれたというのは皮肉というべきか。そう、ようやく手に入れた944Sはカーペットの下でブレーキランプへと繋がる配線がショートしたり(!)、樹脂製のカムシャフトプーリーの歯が欠けて危うくエンジンが全損になりかけたり(!!)と、何ともお粗末と言うしかない招かざるトラブルをも体験させてくれることになったのだ。

と、そんなこんなでポルシェには愛想を尽かして他のブランドへ……とはならなかった。それどころか、これもまたとある実体験の末にさらなる大借金を抱えながら次なるポルシェ車に乗ることに、というハナシはまた次回。

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