新型「Cクラス」のデザインは何がスゴい? メルセデス・ベンツは伝統と未来をどう両立させたのか——渕野健太郎の「カーデザイン解説ラボ」#6
元スバルのカーデザイナー・渕野健太郎氏が、いま気になるクルマを紹介! 今回は、メルセデス・ベンツの基幹車種「Cクラス」に登場した、Cクラス初のBEVモデルに注目する。
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伝統と新しさを融合したエクステリア
メルセデス・ベンツ新型CクラスのEV版「Cクラス エレクトリック」のデザインは、これまでのEQシリーズから変化させてきました。例えばEQSやEQEは、ノーズを短くしたワンモーションフォルムが特徴で、オーセンティックなセダンだったSクラスやEクラスとはまったく異なるデザインでしたよね。
しかし、それが消費者に十分受け入れられたかというと疑問が残ります。こうした高級セグメントのクルマでは、デザインにおいても歴史や連続性が重要視されるんですよ。そうした反省もあってか、新世代は歴史とのつながりをより重視したデザインになりました。特にフロントまわりは、どこか旧世代に戻ったかのようです。
渕野健太郎氏による「メルセデス・ベンツ 新型Cクラス エレクトリック」のデザイン解説
まずサイドビューを見ると、しっかりと見える伝統的なノーズが復活しています。それでもICE車のCクラスと比べると短めです。一方で、リアまわりはクーペライクなシルエットとなり、サイドウインドーも6ライトにして従来のCクラスとは異なる新世代らしさを演出。つまり、EQシリーズで挑戦した新しさと、これまで積み重ねてきたメルセデス・ベンツらしい歴史をミックスしたようなデザインです。
またドアの断面を見ると、かなり潤沢な造形しろが与えられていることも分かります。ボルボなどもそうですが、これくらいの立体感があってこそ高級車らしい豊かさが生まれるのでしょう。一般的な日本車は薄いドアの中で何とか立体感を出そうと苦労しているので、正直なところ羨ましいですね(笑)。
フロントまわりでは、縦長になったグリルがまず目を引きます。これまでのCクラスは、モデルチェンジを重ねるごとにグリルが横長になってきました。それでワイド感や新鮮さを演出していたのですが、このクルマはあまりそうしたセオリーに縛られていないようです。基本的な立体構成やバンパーの細部処理を見ても、造形そのものに大きな新規性があるわけではありません。
その代わり、グリル自体にLEDを仕込み、発光させることで未来感を補っているということでしょう。
それにしても面白いのは、ライバルであるBMWが新世代でグリルの存在感を抑える方向に進んでいるのに対し、メルセデス・ベンツは対照的なアプローチを取っていること。高級車のデザインは、グリルを起点にボディの塊感をつくることが一般的ですので、その意味では、伝統的な考え方に基づいたデザインとも言えます。
渕野健太郎氏による「メルセデス・ベンツ 新型Cクラス エレクトリック」のデザイン解説
一方、リアまわりはエクステリアの中で最も新しさを感じる部分でしょう。トランクエンド近くまで伸びたCピラーとその処理によって、これまでのCクラスとはまったく異なるシルエットになっています。
ただ、個人的にはICE車のCクラスのリアまわりはものすごくよく出来ていると思っていました。特にスタンスについては、2クラス上のSクラスにも引けを取らないほどどっしりとしたプロポーションが秀逸で、街で見かけるたびに、一瞬Sクラスと見間違えたほど。
その点、この新型Cクラス エレクトリックは、従来のようなセダンらしいスタンスとは異なります。見る角度によってはリアまわりがやや宙に浮いたような印象にも見えるため、街中でどのように感じるのか、ぜひ確認してみたいポイントです。
コンセプトカーのようなインテリア、その先進性は?
メルセデス・ベンツC 400 4マチック エレクトリック|Mercedes-Benz C 400 4MATIC Electric
一方で、私がより良く出来ていると感じたのはインテリアデザインです。全面ディスプレイを採用したインパネについては賛否があると思いますが、デザインとしての処理は非常に明快。ルーミーな空間の中にディスプレイを浮遊させているかのような構成は、まるでコンセプトカーのインテリアをそのまま市販化したかのようです。
BMWやアウディは比較的小さなディスプレイを複数配置する構成ですが、そこまで多くの情報を表示する必要があるのであれば、個人的にはこのメルセデス・ベンツのように大きなディスプレイに集約したほうが、よほど理にかなっているように思います。
もちろん、「そもそもクルマの中にそこまで多くの情報表示が必要なのか」という議論はありますが、ここまで振り切ったデザインを見ると、これはこれで納得させられてしまいます。
メルセデス・ベンツC 400 4マチック エレクトリック|Mercedes-Benz C 400 4MATIC Electric
総評すると、新型Cクラス エレクトリックは、メルセデス・ベンツが培ってきた伝統的なデザインと、EVらしい未来感の演出を組み合わせた、非常に巧みなデザインだと言えそうです。ただ、インテリアの先進性を見ると、エクステリア、特にフロントまわりについては、もう少し新規感のある処理を期待したいというのが正直なところです。
「伝統と未来のバランス」をどう評価するかが、この新型Cクラス エレクトリックのデザインを読み解くうえで、最も興味深いポイントなのかもしれません。
メルセデス・ベンツC 400 4マチック エレクトリック|Mercedes-Benz C 400 4MATIC Electric




