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最終更新日:2023.07.19 公開日:2023.07.11

吉田 匠の『スポーツ&クラシックカー研究所』Vol.20番外編 メルセデスがつくった豪華な大型万能電動車、EQS SUV。

モータージャーナリストの吉田 匠が、古今東西のスポーツカーとクラシックカーについて解説する人気連載コラム。第20回はメルセデス・ベンツ最新にして最上級の電気自動車、EQS SUVに試乗。そのリポートをお届けする。

文=吉田 匠

3列シート7人乗りのフラグシップ電動SUV

メルセデス・ベンツ EQS 450 4MATIC SUV

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メルセデスベンツの新しいBEV=バッテリー電気自動車、EQS 450 SUVが日本で発売になり、そのプレス試乗会が東京を舞台に開かれた。これは新開発されたBEV用プラットフォームを使った大型のSUVで、しかも3列シートの7人乗りという仕様。

スタイリングは写真で見るとおり、近年のメルセデスの多くが採用する角の丸いスムーズな面が独特の雰囲気を醸し出すものだが、フォルムとしてはいわゆるキャビンフォワードなスタイルで、ボンネットの長さを感じさせないところがBEVに相応しいと思う。

その全体にバランスの採れたフォルムの恩恵もあって、写真を見ているだけではサイズ感を掴みにくいと思うが、スペック表のボディサイズを見るとちょっと驚かされるはずだ。そこには、全長5135×全幅2035×全高1725mm、ホイールベース3210mmという数字が並んでいて、なかでも特に2035mmという全幅の数字が目につく。しかもこれはボディのみの数字で、ドアミラー含めると2155mmになるという。

電気自動車専用のプラットフォームを採用するEQS SUV。全幅は2035mmと、見た目以上に(!?)かなりワイド。

これまでにも全幅2m前後のクルマには乗ったことがあるが、こいつはちょっと手強いぞという気分でコクピットに乗り込む。ドライバーズシートは明らかに高めの位置にセットされていて、そこへの乗り降りを補助する意味でドアの下にランニングボードが加えられているが、試乗当日は軽い雨だったので、シューズの底が滑らないかちょっと心配ではあった。

フルサイズSUVらしい内外装

「MBUXハイパースクリーン」と呼ばれる3枚の高精細ディスプレイで構成されるインテリア。ダッシュボードは1枚のガラスで覆われている。

車両本体価格1542万円に加えて、AMGラインパッケージ(440,000円)、ショーファーパッケージ(858,000円)、デジタルインテリアパッケージ(1,210,000円)、ブラウンマグノリアウッドインテリアトリム(110,000円)、ダイヤモンドホワイトメタリック塗装(187,000 円)といった多彩なオプションを装着した試乗車のプライスは1822万5000円に達するが、そのインテリアはひとことで表現して絢爛豪華なものだった。

そこにセットされたクリーム色のレザーシートに収まって、外苑東通りを走り出す。このあたりは幸い道幅が広いので、2035mmのボディ幅をさほど意識させられることなく走れた。よく言われるとおり、SUV独特の着座位置の高さが見晴らしをよくしているのも、幅広いクルマを走らせる助けになっているのを感じる。そうはいっても、幅の狭い裏道に入るとぐっと緊張感が増したが、こういうビッグサイズのクルマもずっと乗っていると幅に慣れるということはあるだろう、という想像はできた。

走りと乗り心地

ステアリングコラムから生えるレバーで前進を選んでアクセルを軽く踏み込むと、車重2900㎏に達するボディがスッと動き出す。2人乗った乗員を加えれば3トンを超える重量だからさすがに軽快感はないが、余裕のスタートなのは間違いない。

駆動方式は前後にモーターを備える4WDで、システムの最高出力は360㎰/265kW、最大トルクは800Nm。航続可能距離は593kmとされている。

航続可能距離は593km。フロントとリアふたつの電気モーターで駆動し、最高出力265kW(360PS)、最大トルク800Nmを発生する。

都心の一般道から首都高に乗り、空いたところで多少深めにアクセルを踏んでみると、パワフルなBEVに独特の押し出されるような力強い加速感が味わえる。けれども例えばテスラのハイパワーモデルのフル加速時のような暴力的な印象はなく、どこか角が取れた印象を伴っているのがメルセデスのBEVらしい。

サスペンション形式はフロントが4リンク、リアがマルチリンクで、連続可変ダンピングシステムとエアサスペンションを組み合わせたAIRMATICを標準装備。その特徴のひとつは、荷重に関係なく車高を一定に保つほか、逆に走行スピードに応じて車高を適正なレベルに変化させることもできる。

乗り心地に関する第一印象は、メルセデスらしく角の取れた乗り味というもので、20インチと21インチがあるタイヤのなかで試乗車は大径の後者を装着していたものの、タイヤの重さや硬さを明確に感じさせられることはなかった。結果として、路面からの衝撃がダイレクトに使わってくる感触がほとんどない、大型のメルセデスらしい乗り心地に仕上がっているように思えた。

昼間でもアンビエントライトが光り輝くEQS SUVの室内。

さてその7人乗りの室内、3列目のシートはさすがに大人が長時間乗るにはスペース的にきつい印象があるから子供用と割り切るべきだが、乗員の数や荷物の多寡によって車高が変わらないAIRMATICサスペンションの恩恵で、ドライバーだけの1人乗りでも、フル乗車の7人乗りでも、快適なドライブが味わえるはずだ。

このサイズの車重3トン近いBEVをワインディングで愉しもうという御仁もめったにいないと思うが、バッテリー搭載位置の関係から重心も低いはずだから、ルックスから想像するよりコーナリングは安定している。それにもうひとつ、後輪ステアを装着している効果で最小回転半径は5.1mとこれも見た目からは想像もできないほど小さく、小回りが利く。この小回りのよさは、特に市街地では強い味方になってくれるはずだ。

ラゲッジルームは乗員5人の場合でも、ゴルフバッグを4つまで積むことができる。2列目シートを倒せば最大2100Lのスペースが広がる。

EQS SUVのキャラクターとは

これは自分では体験していないが、プロモーションビデオを観るとこのEQS SUV、この図体と重さでなんとオフロード走行もこなすらしい。ドライブモードをOFFROADに設定すれば、駆動系やサスペンションがオフロード向けにセットされて、道なき道を走ることも可能なのである。ただし、狭いケモノ道には入り込まない方が正解だと思うが。

 

実際にはそう長くない時間乗っただけだが、EQS SUVのキャラクターが見えた気がした。必要とあれば最大7人が乗って、最長593kmという航続距離を活かした長距離クルージングに出るもよし、5.1mの最小回転半径を活かして市街地を走るもよし、さらにはオフロードに踏み込むことも可能という、1台で何でもできる電動オールラウンダー。メルセデスがこのクルマに与えたかったのは、そういうキャラクターではないかと思う。

さらにそれに加えてEQS SUVには、災害時などに家の電源として使える、外部給電器としての機能も備わっているのだから、やはりこれは現時点における万能電気自動車である。ただしこの万能車、外出の際の駐車場選びだけは慎重にやる必要があるが。

SPECIFICATIONS
メルセデス・ベンツ EQS 450 4MATIC SUV

ボディサイズ:全長5135×全幅2035×全高1725mm
ホイールベース:3210mm
車両重量:2900kg
駆動方式:4WD
モーター:交流同期電動機
蓄電池種類:リチウムイオン電池
フロントモーター最高出力:88kW
フロントモーター最大トルク:260Nm
リアモーター最高出力:178kW
リアモーター最大トルク:540Nm
システム最高出力:265kW(360PS)
システム最大トルク:800Nm
サスペンション:(前)4リンク式(後)マルチリンク(AIRMATICを標準装備)
ブレーキ:(前後)ベンチレーテッドディスク
タイヤ:(前)275/45R21(後)275/45ZR21
交流電力量消費率:221Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:593km(WLTCモード)
価格:1542万円(税込)
オプション装備を含む車両価格1822万5000円(税込)

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