なぜ「MINIポール・スミス・エディション」は、スペックではなくセンスで選ばれるのか?——渕野健太郎の「カーデザイン解説ラボ」#5
元スバルのカーデザイナー・渕野健太郎氏が、いま気になるクルマを紹介! 今回は、ジャパンモビリティショー2025で世界初公開され、注目を集めた「MINIクーパー ポール・スミス・エディション」の魅力に迫った。
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現行型MINIクーパーについて
まずはじめに、現行型MINIクーパーのデザインについて触れましょう。
2024年に登場した新世代モデルは、EVモデルとエンジンモデルで異なるデザインが採用されていることが特徴です。特にEVは完全新設計であり、従来のMINIらしさを保ちながらも立体構成そのものが刷新。
一見するとシンプルに見えるボディですが、サイドからよく観察すると立体がフロント、ドア、リアで分かれ、またドアのピークは比較的低い位置にあります。これにより低重心を感じさせるだけでなく、ボディに映り込む光の流れ、いわゆるリフレクションが揺らぐんですよね。
通常、このような立体構成はこれ見よがしに強調されることが多いのですが、MINIクーパーはそれをあえて抑え、極めて控えめに処理しています。シンプルさの中に奥行きを持たせる高度なデザインアプローチと言えるでしょう。
渕野健太郎氏による「MINIクーパー ポール・スミス・エディション」のデザイン解説
フロントデザインは、MINIの象徴である丸型ヘッドライトと台形グリルを継承しながら、さらに要素を削ぎ落としています。装飾性を減らすことで、アイコンとしての純度が高まり、「ひと目でMINIとわかる」強さがより際立っていますね。
一方でリアデザインは大きな変化が与えられています。これまで長く採用されてきた楕円形のリアコンビランプを廃し、より幾何学的で個性的な形状へと進化しました。歴代モデルの中でもここまで大胆な変更は珍しく、本来であればブランドアイデンティティを損なうリスクもあります。
しかし、それでもなおMINIらしさを失っていない点は、全体のプロポーションや面構成の完成度の高さが理由でしょう。
渕野健太郎氏による「MINIクーパー ポール・スミス・エディション」のデザイン解説
さらに、この新世代MINIを象徴するのがインテリアです。特にインパネ中央に配置された円形ディスプレイは、単なる表示装置ではなくデザインと体験をつなぐ中核的な存在です。円形という異形のディスプレイは、一般的なものとは異なりGUIデザインやソフトウェアも専用に設計する必要があるはず。
そのため開発コストは非常に高いでしょうが、それでも採用した背景には「MINIらしいデジタル時代の表現をしたい」という強い想いがあったのでしょう。このディスプレイは、かつてのセンターメーターの系譜を受け継ぎながら、新世代のインターフェースとしてブランドを象徴する存在となっています。
このように、現行型MINIクーパーは「シンプルでありながら奥行きのある造形」と「強いアイコン性」を両立した、非常に完成度の高いデザインをベースにしています。どの角度から見てもスタンスが良く、軽快に走り出しそうな印象を与えるプロポーションも健在で、視覚的にも“キビキビ感”が伝わってきます。
MINIポール・スミス エディション|MINI Paul Smith Edition
MINIクーパー ポール・スミス・エディションの完成度の高さ
MINIポール・スミス エディション|MINI Paul Smith Edition
そして、この完成されたベースの上に、ポール・スミスならではのコーディネートが重ねられます。今回のコラボレーションで特に印象的なのが、ボディカラーの扱いです。
クリーム色などのニュートラルなボディ色に対して、グリルの枠やルーフ、サイドミラーにグリーンを組み合わせるという、一見すると大胆で難易度の高い配色。しかし実際には、明度や彩度など色味のトーンが緻密にコントロールされており、全体として非常に調和の取れた仕上がりになっています。
この「一体感」は簡単に実現できるものではありません。一般的に、ベースカラーと大きく異なる色を組み合わせる場合、コントラストが強すぎてチグハグな印象になりがちです。国内メーカーの特別仕様車でも似たような試みは見られますが、ここまで自然に成立させるのは難しい領域です。
それを可能にしているのは、ポール・スミスが持つ色彩感覚と、MINIのシンプルで整理された造形の相性の良さにあります。つまり、形がシンプルであるからこそ、色の個性が引き立ち、かつ全体として破綻しないのです。
MINIポール・スミス エディション|MINI Paul Smith Edition
またインテリアもポール・スミスならではのストライプを随所に取り入れていますが、トーンがうまく抑えられ上品な印象。大胆な柄なのにまとめられる技術はさすがと言うところでしょう。
総じて、このMINIクーパー ポール・スミス・エディションは、クルマを単なる移動手段ではなく「自己表現のためのプロダクト」として再定義していると言えます。
ベースとなるMINIの高度に洗練されたデザインがあるからこそ、ファッションとしての大胆な提案が成立しているのです。それは、これからの時代におけるクルマの在り方。スペックではなく感性で選ばれる存在を示唆する、非常に象徴的な一台と言えるでしょう。
MINIポール・スミス エディション|MINI Paul Smith Edition
MINIクーパー・コンバーチブルSポール・スミス・エディション|MINI Cooper Convertible S Paul Smith Edition




