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最終更新日:2024.11.21 公開日:2024.11.21

「日高横断道路」は、なぜ幻の道となったのか? およそ半世紀越しの計画を凍結した理由。 【いま気になる道路計画】

北海道の日高と十勝を結ぶ東西軸のアクセスルートとして事業が進められてきた「日高横断道路(静内中札内線)」。しかし厳しい自然環境と多額の事業費、そしてその他の高規格道路の優先度により事業は凍結されてしまった。40年以上にわたる計画の経緯と今後の行方を追う。

文=KURU KURA編集部

資料=北海道開発局

「日高横断道路」を凍結した理由とは?

日高横断道路の十勝側・中札内村の中心部から日高山脈を眺める。(c) makieni - stock.adobe.com

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日高地方の新ひだか町静内(旧静内町)と十勝地方の中札内村を結ぶ「日高横断道路(静内中札内線)」。この道路は、総延長100.8km(実延長94km)のうち日高側46.3kmと十勝側33.2kmは整備されているものの、その間の25.3kmは未開通で通り抜けられない「未成道」となっている。

日高の静内町と十勝の中札内村を結ぶ日高横断道路。中間部は未供用で通り抜けられない。ルート図は国土交通省の2003年時点の資料から。

日高横断道路の全線開通を目指して、未開通の25.3kmを事業化したのは1981年度(昭和56年度)のこと。1984年度(昭和59年度)には工事を開始した。しかしこの事業化された区間のうち整備されたのは日高側の4.0kmだけで、2003年(平成15年)に事実上の凍結に。未開通区間21.3kmのうち13.6kmの工事に着手しており、工事を中断するかたちとなった。何故このような事態になってしまったのか。

まず、大きな課題となったのが、大規模な橋梁やトンネルの建設だ。計画では、急峻な山岳地の沢沿いを橋梁で乗り越え、日高山脈の中央部をトンネル通過するルートとなっており、そのために何十年という長い工期と莫大な事業費を投じなければならない。北海道開発局が発表した資料によれば、冬期の積雪で施工期間も限られることから、残りの工事を完了するのに20年を要するという。

さらに、開通済の区間にも課題がある。日高側も十勝側も、急カーブや急勾配の連続する狭あい道路で、砂利道のままのところもあり、長期間の通行止めが常態化している。つまり、この開通済の区間の道路を改良しなければ、未開通の区間を整備しても日高横断道路は通行止めばかりの不便な道路となり、全線開通後の交通量も見込めない。

もうひとつあげられるのが、「日高自動車道(苫小牧市~浦河町)」と「帯広・広尾自動車道(帯広市~広尾町)」の存在だ。北海道は、道道の日高横断道路より、高速ネットワークの整備を優先するべきだと考えたのだ。日高横断道路の事業凍結後は、まさにこれに取ってかわるように、日高自動車道と帯広・広尾自動車道を延伸していった。

「日高横断道路」の事業は再開するのか?

日高横断道路の日高側となる新ひだか町(旧静内町)から日高山脈を見る。 (c) okimo - stock.adobe.com

では、日高横断道路はつくりかけのまま、この先も日の目を浴びることはないのだろうか。当然、地元の自治体は事業の再開を望んでおり、北海道に対しても要望を出している。しかし北海道は、巨額の事業費に対する費用対効果を考慮したうえで、「日高自動車道と帯広・広尾自動車道を延伸すれば、国道236号の天馬街道(浦河町~広尾町)と接続して新ひだか町の静内と中札内村を連絡する」と判断。日高横断道路の重要性は低いとしている。

実際、日高自動車道と帯広・広尾自動車道、そして天馬街道は、日高横断道路の「代替路」となり得るのか、検証してみよう。日高自動車道で現在開通しているのは苫小牧東ICから日高厚賀ICまでで、東静内までは事業化している。一方、帯広・広尾自動車道で現在開通しているのは帯広JCTから忠類大樹ICまでで、広尾町まで全線事業化に漕ぎ着けている。

日高自動車道と帯広・広尾自動車道の延伸を前提とするものの、北海道の主張するとおり、日高自動車道(静内~浦河町)と帯広・広尾自動車道(中札内村~広尾町)は、天馬街道を通じて連絡するため、日高横断道路の代替路といえなくはない。

日高横断道路と周辺の道路網。画像は北海道開発局の道路図を元に作成(令和5年4月1日現在)。

しかし、新ひだか町の静内から中札内村までの距離を比較すると、日高横断道路より天馬街道の方が長い。その分、所要時間がどれだけ違ってくるかというところで、アクセス性も変わってくるのではないだろうか。高規格の日高自動車道と帯広・広尾自動車道を利用することで、どれだけ時間を短縮できるかが鍵となりそうだ。

日高自動車道のルート図。 画像:室蘭開発建設部

帯広・広尾自動車道のルート図。 画像:室蘭開発建設部

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