北海道の矢羽根の標識はどんな意味? 雪道で役立つ「固定式視線誘導柱」とは
北海道の矢羽根の標識こと「固定式視線誘導柱」は雪道で役立つものだ。今回は、現地で実際に使われている写真を見てもらいながら、この標識についてわかりやすく解説する。
北海道の矢羽根は何のためにある?
北海道の道路でよく見かける、道路の上に設置されている矢羽根の標識。どんな意味があるのかご存知だろうか。
正式名称を「固定式視線誘導柱」と呼ぶが、実は雪道を走行するのにとても役立つものなのだ。さっそく北海道の矢羽根の標識こと、固定式視線誘導柱を紹介しよう。
頭上の矢羽根が指し示すのはどこだ?
北海道の道路に設置されている固定式視線誘導柱。地上から5m程とかなり高い位置にある。逆L型ポールの先端に取り付けられており、次の矢羽根までの間隔はおおむね80m以下。目の前の矢羽根を通過したら、次の矢羽根がちょうど見えている距離感だ。
写真は今年5月に撮影した国道452号 三笠-芦別間の片側1車線の直線区間である。積雪がないので、固定式視線誘導柱の姿がよく分かる。矢羽根がどこを指し示しているかよく見てほしい。そう、ぴたりと車道と路肩の境目にある白線の位置を指し示しているのだ。
矢羽根の目的は何だ?
北海道で生まれ育った筆者は、積雪期には、脱輪してロードサービスの到着を待っている車両をあちこちで見かけていたものだ。
路肩は雪に埋もれ、ホワイトアウト(猛吹雪)で一寸先が見えない。もし、そんな日に運転すれば、路肩の位置がわからず、側溝に落ちて脱輪してしまう恐れが高まる。矢羽根は、積雪期の悪天候時に車道と路肩の境目を知らせるためのものであり、雪道での脱輪を防ぐためになくてはならない存在なのだ。
矢羽根が生まれたきっかけは、除雪車の目印だった
もうひとつ、固定式視線誘導柱(矢羽根)には重要な役割がある。それが除雪だ。北海道の道路は国道と高規格道路であれば北海道開発局、高速道路であればNEXCO東日本、それぞれの道路管理者によって除雪されている。夜中に雪が降り、早朝に除雪しようとしたとき、路肩どころか道路標識や走行車線まで雪に埋もれている。その中で、大型の除雪車は矢羽根やスノーポールを頼りに路肩に沿って除雪していくのだ。
ちなみに、矢羽根には通行車両のライトを反射して発光するものと自動で発光するものがある。いずれも、夜間の暗がりや猛吹雪などにより視界が悪くなった時(視程障害)でも矢羽根を視認するためだ。
北海道での機械による除雪は第二次世界大戦後にはじまっているが、当時の車両は大型で小回りも利かず、車輪が側溝にとられることもしょっちゅうだったという。そこで、笹の葉を束ねたものに白黒の平行縞模様を付けた現在のスノーポールのような視線誘導標を、道路と側溝の境目に立てて目印にした。いわば、北海道の矢羽根の起源だ。
しかし、スノーポールタイプの視線誘導標は除雪車になぎ倒されることが多かった。そこで1965年頃には、オーバーハングの支柱に矢羽根を付ける、現在の固定式視線誘導柱(矢羽根)タイプが生み出されたのだそう。
そんな北海道になくてはならない矢羽根だが、近ごろ、ちょっとした変化が起きている。北海道の景観に優れた道路を巡るドライブルート「シーニックバイウェイ北海道」(詳細はシーニックバイウェイ北海道ってなんだ? 実は超絶景のルートらしいの記事で解説)では”道”を観光資源にする取り組みも行われており、矢羽根が道路景観を損ねるという意見もみられはじめているのだ。
このような背景から、最近では黄色と紺色の縞模様でペイントされた景色に溶け込みやすいものや、無雪期に取り外せるものなど、新たな矢羽根が開発されていることも、最後に伝えておこう。