なぜ日本の自動車メーカーは攻勢に出なかった? パリモーターショー2026で世界に存在感を示した国とは【クルマの経済学】 | KURU KURA(くるくら)

はじめよう、クルマのある暮らし。

Cars

公開日:2026.11.05

なぜ日本の自動車メーカーは攻勢に出なかった? パリモーターショー2026で世界に存在感を示した国とは【クルマの経済学】

奇瑞汽車のブランドであるOMODAとJAECOOのブース

自動車ジャーナリストの山崎明氏が、パリモーターショー2026を現地取材。いま勢いのある自動車メーカーはどこなのか? 会場で感じた自動車業界のトレンドを考察する。

奇瑞汽車のブランドであるOMODAとJAECOOのブース

文と写真=山崎 明

この記事をシェア

活況を取り戻しつつあるパリモーターショー

2026年10月12日から18日まで、パリモーターショーが開催された。私は会期中の一般公開日の二日間、会場を訪れた。

2015年に発覚した「ディーゼルゲート事件」を境に、ヨーロッパでのモーターショーは一気に縮小の道を歩んでしまい、コロナ禍もあってかつてはその規模に驚かされたフランクフルトモーターショーは消滅。世界各国のメーカーがバランス良く出展していたジュネーブモーターショーも消滅となってしまった。フランクフルトにかわってミュンヘンでモーターショーが開かれるようになったものの、フランクフルトに比べるとかなり小規模なものとなってしまった。

そんなヨーロッパで唯一、現在もそれなりの規模感で開催されているのがパリモーターショーなのである。パリも以前に比べ規模は小さくなってしまっているが、前回の2024年のショーからは、かつての活況を彷彿とさせるような雰囲気となっていた。

それゆえ今回も、迷った末に訪問することにしたのである。訪れると、期待に違わず前回と同等以上の賑わいとなっていた。

かつての賑わいを取り戻しつつあるとは言え、その中身は大きく変化している。フランスを代表するブランドであるルノー、プジョー、シトロエンの存在感が大きいのは今まで通りだが、現在勢力を拡大しているのが中国メーカーである。なんと私が確認した限り17もの中国ブランドがブースを構えていた。2024年は9ブランドだったので大躍進である。また前回は出展していなかったヒョンデも今回は大規模なブースを展開し、キアとともに韓国勢の存在感も感じられたショーだった。

欧州勢ではフォルクスワーゲングループの各ブランド(アウディ・フォルクスワーゲン・クプラ・シュコダ)と、ステランティスの非フランス勢(フィアット・アルファロメオ・ランチア・オペル)が存在感を示していた。

今回のモーターショーで一番華やかだと感じたルノーブース

今回のモーターショーで一番華やかだと感じたルノーブース

日本車はフランス市場でどんな立ち位置なのか

それでは日本勢はどうだったか。ブースを出展していたのはホンダとスバルのみで、スバルは見逃してしまいそうなほど小さく仮設的な展示で、ホンダもメインの他社ブースの裏側の小さな空間にブースを設けているだけだった。

その他トヨタが「イノベーション・パーク」と呼ばれる合同ブースにヤリスクロスハイブリッドを展示している程度。つまり日本勢の存在感は非常に小さいと言わざるを得ない状況だったのだ。

ホンダのブースは海外メーカーと比べて規模も小さく、華やかさが足りない印象だった

ホンダのブースは海外メーカーと比べて規模も小さく、華やかさが足りない印象だった

モーターショーでは存在感の希薄な日本車だが、実際のフランス市場ではどうか。

トヨタは2026年1~7月で約7万台を販売、ブランド別で6位に入っている。フランス系ブランド以外では首位のフォルクスワーゲンとほぼ同等の販売台数だ。トヨタはフランスに工場を持っており、ヤリスとヤリスクロスを生産しているので当然の結果とも言える。

以下、日産が18位で約1.8万台、スズキが22位で1.2万台ほど売っているが、なぜかこの上位3ブランドは今回のショーに事実上出展していない。出展していたホンダは約3000台、スバルはごく限られた数しか販売できていない。

それにしても「地元」ともいえるトヨタが出展していないのは残念だ。

中国の低価格ハイブリッド車がヨーロッパで人気!?

では次に、なぜ中国ブランドが大躍進しているのか。まずBYDだが、まだ絶対数は日産と同レベルだが前年比では2.5倍の販売台数となっており、2026年から販売を開始した新興メーカーJAECOO(ジェイクー)は、いきなり5608台(1-7月)を販売している。

JAECOOはイギリスでも急速に販売を伸ばしており、2026年3月と9月ではモデル別販売台数でJAECOO 7がなんと1位を獲得している。パリモーターショーでもJAECOOは注目されているようで、ブースは常に大勢の人で賑わっていた。

高級志向SUV「JAECOO 7」のハイブリッドモデル

高級志向SUV「JAECOO 7」のハイブリッドモデル

JAECOO 7の特徴は、中国車でありながら電気自動車(BEV)ではなく、ハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)の2種でラインナップしていることだ(イギリスでは純ガソリン版もある)。

またJAECOO 7の魅力は、レンジローバーを思わせる高級感のあるスタイルや装備を持ちながら、ハイブリッドで3万ユーロを切る価格で売られていることだ。プラグインハイブリッドでも3.6万ユーロ(1ユーロ=178.80円 ※11月5日時点)である。

3万ユーロというのはヤリスクロスの中級グレードと同等の価格で、サイズ的に近いプジョー3008の最廉価グレードが3.6万ユーロ、ルノー・オーストラルのHEVが4.2万ユーロ、RAV4のHEVは4.6万ユーロなので、そのコストパフォーマンスの高さがわかるだろう。

JAECOOに限らず、中国車ブースではHEV/PHEV、ハイブリッド技術の展示が目立った。中国車のBEVには高額な関税が課せられているが、HEVやPHEVには現状課されていない、というのが主たる理由だが、HEVやPHEVに対する需要が大きいというのもその理由のひとつだろう。実際フランスで売られているトヨタ車のほとんどはHEVであるし、パリ市内を走っているタクシーの多くはトヨタのHEVである。

XPENG(小鵬汽車)のブース

XPENG(小鵬汽車)のブース

ZEEKR(吉利汽車のブランド)のPHEV技術展示。素晴らしい性能を誇っている

ZEEKR(吉利汽車のブランド)のPHEV技術展示。素晴らしい性能を誇っている

ハイブリッド車が人気の今こそ、日本メーカー攻勢のとき!

パリ市内をはじめ、フランスの都市部では駐車スペースのある住宅は極端に少なく、路上駐車がメインである。それゆえ都市部では夜間充電はできず、BEVは普及しつつあるとはいえ限界がある。一方で環境対策として排ガスを大量に出す車の都市部への乗り入れは制限され、その基準は毎年強化されている。従って多くの人にとってはHEVを選ぶのが最適解なのである。

このトレンドに遅ればせながら気がついたのが欧州メーカーなのだ。欧州メーカーはHEVを軽視しBEVに開発資源を集中させてしまったため、現在発売されている新型車はBEVが多い。HEVもあるがいわゆるマイルドハイブリッドと言われる簡易型がほとんどだ。今まで欧州メーカーで日本車並みのフルハイブリッドと呼べるシステムを製品化できているのはルノーだけである。

各メーカーはハイブリッドの開発に躍起となっており、フォルクスワーゲンは2026年第4四半期にようやくヨーロッパでフルハイブリッドの販売を開始する予定だ(現在ゴルフとT-Rocのみ)。

しかし価格は高く、小型SUVのT-Roc HEVで約3.8万ユーロからである。これでは中国車だけでなく日本ブランドのハイブリッド車にも対抗は難しい(T-Rocと同クラスのトヨタC-HRハイブリッドの価格は約3万ユーロから)。EUでの中国製HEVの数量規制が決まったようだが、欧州メーカーは厳しい戦いを強いられることになるだろう。

トヨタC-HR。2代目C-HRは欧州専用でHEV/PHEV専用モデル 写真=トヨタ

トヨタC-HR。2代目C-HRは欧州専用でHEV/PHEV専用モデル 写真=トヨタ

複雑かつユニークなシステムを用いるルノーのハイブリッドシステムを除けば、中国メーカーやフォルクスワーゲンが新採用したハイブリッドシステムは、ホンダのハイブリッドシステムに似たもので、低速では電気モーターで走り(エンジンは発電に専念)、高速ではエンジンを直結してエンジンメインで走るというものがほとんどである。

トヨタのハイブリッドシステムは、動力分割機構によってエンジンとモーターの動力を効率よく配分し、走行状況に応じてエンジンとモーターの働きを無段階に制御する。また停止時にエンジンが稼働してもクラッチが不要という画期的なシステムで、燃費が他社より良いだけでなく耐久性が高く、維持費も安い。

例えば、JAECOO 7ハイブリッドの欧州基準燃費は18.2km/Lだが、RAV4は20.4km/Lである。ホンダや日産e-POWERもトヨタには燃費でやや劣るとはいえ、優秀なハイブリッドを実現している。

つまりHEVに注目が集まっている現在は、日本ブランドにとって絶好のチャンスなのである。価格競争力も中国ブランドには及ばないが、欧州ブランドには十分対抗できる。返す返すも、今回のパリモーターショーで日本ブランドの存在感が希薄だったのは残念でならない。モーターショーはとても活況で、かつてのモーターショー同様のレベルで連日多くの人が訪れており、絶好のアピールの場であったはずなのだ。

中国セレスグループとファーウェイの合弁ブランドAITOのブース

中国セレスグループとファーウェイの合弁ブランドAITOのブース

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(11月30日まで)
応募はこちら!(11月30日まで)