マツダ渾身の「マツダ スピリット レーシング ロードスター」、足回り交換は必要だった? コアモデルオーナーが4000km走って選んだ答え
走りは刺激的、でも一般道では少し硬い。サーキット志向の「マツダ スピリット レーシング ロードスター」に感じた足回りの悩みを解決するため、コアモデルオーナーで自動車ジャーナリストの山崎明氏が選んだモディファイとは?
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目次
なぜMSpRロードスターの足回りに手を入れたくなった?
2026年2月1日に納車された私のマツダスピリットレーシング(以下、MSpR)ロードスターも、乗り始めて4か月が経過し、走行距離は4000kmに達した。リアスポイラーやステアリングなど、すぐに好みに合わせて交換できるものは変更したが、4か月の間ずっとモヤモヤしていた問題がある。それは乗り心地だ。
納車直後、サーキット指向でセットアップされた足回りだが乗り心地は悪くなく、悪名高い西湘バイパスの継ぎ目も鋭い突き上げなくいなすなど、なかなかの出来と思ったものだ。他のジャーナリストの評価も似たようなもので、硬いが乗り心地はこの手のスポーツモデルとしては良好、というのがほぼ共通の見解のように思える。
しかし自分のクルマとして乗り続けるうちに、一般道を通常のペース(ワインディングロードで常識の範囲内でちょっとペースを上げた場面も含む)では、あまりに硬すぎるのではないかと感じる場面が増えていったのだ。前述したように、段差は問題ないのだが荒れた路面がずっと続くような道(箱根や伊豆の山道では結構多い)ではクルマが絶えず揺すられる状態となり、不快感が募っていくのである。
そのため、まだ4000kmしか走っていないのでもったいないとは思ったが、足回りに手を入れることにしたのだ。
MSpRロードスターには日本製のB12キットは合わない?
まず考えたのは以前所有していたRFで使っていて好印象だった、ビルシュタインB12キットである。しかしNDロードスター用のB12はソフトトップ用とRF用の2種類があり、それぞれスプリングレートの設定が大きく違うことがわかった(スプリングレート比較表参照)。
そもそもノーマルの設定でも1.5Lソフトトップと2LのRFではかなり異なる。MSpRロードスターの前後の荷重を調べると、フロントの荷重はRFとまったく同じ560kg(1.5Lは530kg)で、リアは510kgと1.5L(480kg)とRF(540kg)のちょうど中間の荷重である。
つまり日本仕様ソフトトップ用の製品もRF用の製品も、MSpRロードスターには今ひとつ適合しないということになる。
そのため海外製品に目を向けることにした。海外製品であればソフトトップの2L仕様を前提に開発されたものと考えられるからだ。
検討したサスペンションキットのスプリングレート一覧
まずは2Lエンジンを搭載したアメリカ仕様の標準サスペンションのバネレートを調べたところ、標準仕様とスポーティなCLUB仕様の2種類があることがわかった。
CLUB仕様はフロントが日本のRFのノーマルグレードとほぼ同等、リアがRFのRSグレードよりさらに硬めの設定である。CLUB仕様の数値がひとつの基準として考えられるだろう。
次に海外のビルシュタイン製キットについて調べてみた。ここで判明したことは「ビルシュタインB12キット」といっても、日本のものとアメリカのものとヨーロッパのものでは違うということだ。アメリカ仕様のB12キットはビルシュタインB8ショックアブソーバーにアイバッハのスポーツラインスプリングを組みあわせたもの。スポーツラインは車高が40mmも下がるので、実用面ではちょっと不便だろう。
ヨーロッパ仕様のキットもB8ショックアブソーバーとアイバッハスプリングとの組み合わせ。明記はないもののこちらは車高ダウン量が25mm程度のPRO-KITとの組み合わせのようだ。PRO-KITのスプリングレートはCLUBグレードに近く、ヨーロッパ仕様のB12キットが有望のように感じられた。
取り外したビルシュタイン製ショックアブソーバー
オランダメーカーの気になるショックアブソーバー
しかし、ひとつ非常に気になるショックアブソーバーを発見してしまったのである。KONIのスペシャルアクティブというショックアブソーバーである。KONIにはKONI SPORTという製品が以前からND型ロードスター用にあり、ハードなスプリングと組みあわせてもビルシュタインよりしなやかな乗り味になるという評判だった。
「アクティブ」であることを主張するステッカーが貼られている。
スペシャルアクティブというのは、以前FSDという名で売られていた製品の進化版で、ピストンのストロークやスピードに応じて減衰力を自動調整するというものである。コーナリング性能を上げると同時に乗り心地も良くなるというもので、能書きを信ずる限り私のニーズにぴったりの製品に思える。
そのスペシャルアクティブのNDロードスター用が2024年に発売されていたのだ。アメリカのユーザーの評価を見るとCLUBグレード標準のビルシュタインより荒れた路面での乗り心地がぐっと良くなるという。またスペシャルアクティブは標準車高での利用が推奨されているが、若干の車高ダウンならば問題はないようだ。
ここで方針は決定である。アイバッハのPRO-KITにKONIスペシャルアクティブの組みあわせである。
KONIの輸入元に問い合わせたところ、NDロードスター用のものが1セットだけ在庫があるというので、いつもロードスターの足回りの調整を依頼している藤沢のガレージ・ソニックに取り寄せてもらうように依頼した。
いざ装着! 結果はどうだった?
6月に入って準備が整ったのでいよいよ装着である。
第一印象だが、PRO-KITのスプリングレートはノーマルロードスターに比べればハードなので、乗り味は依然として「硬い」という表現が適切だが、MSpRの足で感じられた荒れた路面での絶えず揺すられる感じはかなり緩和されたのである。
スペシャルアクティブは細かな入力はきれいに吸収してくれるようだ。コーナリングもあまり飛ばさなくなった現在の私のペースでは全く問題なくキビキビと動き、ダンピングもMSpRほどはぴしっとは収まらないが、私の乗り方では必要十分に感じられる。
モディファイは基本的には大成功といっていいだろう。
KONIスペシャルアクティブ。ビルシュタインの黄色から赤になった。
想定外に下がってしまったフロント車高をどうする?
ただし、これで100%満足というわけではない。ちょっと気になるのがフロントの車高である。リアは私の希望通りの15mmダウンくらいであったが、フロントが30mmも下がった。PRO-KITは1.5L/2.0L共通仕様で、2.0Lの場合そのくらい下がることはスペックからわかっていたのだが、視覚的にちょっと前だけ下がり過ぎに思えるようになってしまったのだ。
またMSpRロードスターのフロントスポイラーはノーマルロードスターよりかなり低く、この車高だと駐車場の入り口などでもかなり気を遣わされる。
あとになってわかったのだが、PRO-KITは日欧向けとアメリカ向けで設定が異なり、2.0Lモデルしかないアメリカ向けはフロントが硬めで、かつフロントの車高ダウン量も20mmに留まるようだ。見た目だけでなく、スペシャルアクティブの本来の性能を引き出すためにもフロントも15mmダウン程度に留めたいと思うようになった。
アイバッハ・KONI装着後の筆者のMSpRロードスター。リアに対してフロントが低すぎるように感じられる。
アメリカ向けPRO-KITの購入も考えたが、オートエグゼのRF用ダウンスプリングが車高20mmダウンでアメリカ向けPRO-KITより若干柔らかめの日欧仕様PRO-KITに近い設定であることがわかった。前輪荷重はRFと同じなので、フロントだけなら20mmダウンで収まってくれるだろう。
早速取り寄せてフロントのみ交換してみたところ、ノーマル車高比-17mm程度と前後のバランスが良くなり、視覚的に私の好みの車高となった。前後とも12R広報車とほぼ同じ車高でもある。まだ一般道しか走れていないが乗り味への影響はなさそうで、私好みのサスペンションモディファイはこれで完成といえるだろう。
あとはタイヤを標準のポテンザS001からミシュランパイロットスポーツ5に交換したいところ(さらには16インチにインチダウンも検討したいところ)だが、これはさすがにもったいないので1万km以上は走ってからにしたいと考えている。おそらく来年になるだろう。
タイヤ交換が終われば、私のモディファイプロジェクトはひとまず終了の予定である。
フロントのみオートエグゼ製スプリングに交換した後の状態。




