なぜBYDの軽EV「ラッコ」は“買い”なのか? 日本市場に刺さる「LFPバッテリー」のメリットとは | KURU KURA(くるくら)

はじめよう、クルマのある暮らし。

Cars

公開日:2026.08.13

なぜBYDの軽EV「ラッコ」は“買い”なのか? 日本市場に刺さる「LFPバッテリー」のメリットとは

BYD RACCO発表会の様子

BYDの新型軽EV「RACCO(ラッコ)」が発売された。国のCEV補助金(15万円)を適用した実質価格は199万5000円。果たしてこのモデルは日本市場に受け入れられるのか? 自動車ジャーナリストの山崎明氏が、RACCOに採用されたLFPバッテリーに注目し、その実用性と魅力を考察する。

BYD RACCO発表会の様子

文と写真=山崎 明

写真=BYD

この記事をシェア

日本の軽自動車市場を狙った新型EV

2026年7月28日、BYDの軽自動車、RACCO(ラッコ)が発売された。海外の自動車メーカーが日本の軽自動車市場に向けて専用車を開発したのは歴史上初めてのことである。

軽規格に適合するモデルとしてはメルセデス・ベンツのサブブランドのスマートが「スマートK」を発売したことがあったが、これはわずかに軽規格より大きかったスマートをフェンダーやホイールを変更させることで軽規格を満たすようにしたもので、一から軽自動車として開発されたものではなかった。

RACCOは日本の軽自動車市場を念入りに研究して開発されただけあって、現在の軽自動車に求められる要件を満たした上に、パワーシートやハンズフリースライドドアなど、より上級車格のモデルでなければ採用されない装備も備えている。テスラのようなOTAでのソフトウェアアップデートにも対応しているし、ADAS機能も軽自動車としては最も充実しているといって良い。

BYD RACCO発表会の様子

BYD RACCO発表会の様子

また「幼児置き去り検知機能」という装備も備わっている。幼児やペットが室内に取り残されていることを検知した場合(生体物検知)、警告音を出すと同時にエアコンも自動的に作動させるというシステムである。

販売のほとんどを占めると思われる上位モデルは、35.8kWhのバッテリーを積み、航続距離は日産サクラの180km、ホンダN-ONE eの295kmに対し320kmとなっている。320kmあれば、軽自動車としての用途ならほとんど問題ないのではないか。

またドイツ車のようなレーザー溶接を採用している(日本車ではレクサスなど一部の車種にしか採用されていない)ので、車体剛性も軽自動車としては優れている可能性が高い。

価格も安く最上位モデルでも250万円を切るが、国の補助金が日本メーカーBEVの58万円に対し15万円に留まるので、実質価格のアドバンテージはそれほどではない。しかし一般保証は6年15万km(日産、ホンダは3年6万km)と長いので、総合的なアドバンテージはあるだろう。

ネガティブな面としては大容量バッテリーやスライドドア、豊富な装備のため車重はサクラに比べると140kgも重く(最上位グレード同士の比較)、モーターのトルクがサクラの195Nmに対し160Nmと少ないので、加速性能はサクラが一枚上手だろう。それでも軽ガソリンターボモデルの1.5倍ほどのトルクがあるので、ガソリン車より軽快な加速を味わえるはずだ。

ビーワイディー ラッコ|BYD RACCO

ビーワイディー ラッコ|BYD RACCO

なぜRACCOのバッテリーに注目すべきなのか

では総合的に見てRACCOはお勧めといえるのか。私はある一つの理由により、軽のBEVを現時点で買うのであればRACCOが最もお勧めと言わざるを得ない。その理由とは、RACCOがLFPバッテリーを搭載しているからだ。

現在BEVのバッテリーはリチウムイオンバッテリーが主流だが、BEV用リチウムイオンバッテリーには大きく2種類ある。日産リーフやテスラといったBEV黎明期から使われているNMC(ニッケル・マンガン・コバルト:三元系とも呼ばれる)と、中国を中心に採用が広まりつつあるLFP(リン酸鉄リチウム)である。

LFPも以前からある技術なのだが、NMCに比べ体積当たりのエネルギー密度が低く、航続距離を長くできないため当初BEVには採用されなかったのだ。

現在も日米欧メーカーのほとんどのBEVはNMCバッテリーを採用しており、サクラやN-ONE eもNMCを採用している。

バッテリーパックのイメージ。上から2層目がブレードバッテリーを束ねた部分

バッテリーパックのイメージ。上から2層目がブレードバッテリーを束ねた部分

しかしLFPは希少金属をあまり使わずに済むため生産コストが安く、発火の危険も大幅に少なく、劣化しにくい(NMCの倍以上の寿命)というメリットもあり、CATLやBYDといった中国のバッテリーメーカーが開発に力を入れてきたのだ。

BYDは「ブレードバッテリー」という細長く平らなバッテリーの開発に成功し、これを効率よく配置することで、限られたスペースでも高いエネルギー密度を実現したのである。

さらにRACCOでは、軽自動車サイズに合わせたブレードバッテリーを新開発するとともに、主要コンポーネントも一体化した「X-PACK」と呼ばれる新技術を採用している。この技術により、RACCOは軽サイズに大容量のLFPバッテリーを積み込むことができているのだ。

「X-PACK」イメージ

「X-PACK」イメージ

ではなぜ軽のBEVではLFPがお勧めなのか。安くて寿命が長く発火しにくいというベネフィットだけでなく、小容量バッテリーの場合LFPのアドバンテージがさらにあるのだ。

NMCの場合、満充電すると劣化しやすく、スマホなどでも80%や90%で充電を止めることが推奨されているが、LFPは逆に100%充電が推奨されており、100%充電を繰り返しても劣化しにくいのだ。

さらに、満充電に近づくと充電スピードが遅くなるのはどちらも共通なのだが、LFPの方がスピード低下のタイミングが遅く、満充電に近い水準まで充電しやすいのである。つまり常に限られたバッテリーの性能を使い切るような運用ができるのだ。

大型で航続距離の長い高価なBEVにはNMCが向いているが、容量やコストが限られる小型車や軽自動車にとってはLFPの特性は大きなベネフィットなのである。日本メーカーでもスズキのeVITARAやトヨタのbZ3はBYDのLFPバッテリーを採用しているし、テスラもバッテリー容量の小さいベーシックモデルでは2020年頃からCATL製のLFPバッテリーに置き換えている。

RACCOはリセール価格が下がりにくいかも?

ビーワイディー ラッコ|BYD RACCO

ビーワイディー ラッコ|BYD RACCO

バッテリーが劣化しない(しにくい)ということはリセールにも影響するはずだ。

NMCバッテリーを使っていた三菱i-MiEVや初期の日産リーフはバッテリー容量が少ないため満充電を繰り返しがちになり、バッテリーが早期に劣化してリセール価格が暴落してしまったが、LFPは劣化が少ないという事実が浸透すれば通常のガソリン車並みにリセールが保たれる可能性もでてくるだろう。

もっとも、オイル交換の必要もなくブレーキの消耗も少ないBEVで、さらにバッテリーの劣化も抑えられるのであれば、買い換える必要もなくかなりの長期間使うことができるかもしれない。

もし自宅にBEV充電器が設置できる環境があれば、スペックを見る限りこのRACCOはかなりお勧めできるかもしれない。もちろんBYDの販売店はまだ全国に70か所程度しかない(ホンダ、日産は2000か所以上ある)ので、実際に購入を検討できる人は限られるだろう。

またすべてが新開発されたクルマなので初期トラブルの可能性があるから、実際の評価が定着するまで慌てずにじっくり検討することをお勧めしたい。

BYD RACCOの内装

BYD RACCOの内装

SPECIFICATIONS
ビーワイディー ラッコ200|BYD RACCO 200
ボディサイズ:全長3395×全幅1475×全高1800mm
ホイールベース:2520mm
最小回転半径:4.8m
乗車定員:4人
荷室容量:280L
車両重量:1160kg
モーター最高出力:47kW(64ps)
モーター最大トルク:160Nm
駆動方式:FWD
バッテリー総容量:22.40kWh[35.84kWh]
一充電航続距離(WLTCモード):210km[320km]
税込車両価格:214万5000円[239万8000円]
※[ ]内は300Plusの値

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(8月31日まで)
応募はこちら!(8月31日まで)