総額866万5822円! 「マツダ スピリット レーシング ロードスター 12R」は普通のロードスターと何が違うのか? コアモデルオーナーが感じた魅力と弱点、そのリアルな評価とは?【試乗レビュー】
マツダ スピリット レーシング ロードスターの標準モデルを実際に所有する自動車ジャーナリストの山崎明氏が、すべての純正パーツを装備した限定仕様車「12R」に試乗! 公道でのリアルな使い勝手や乗り味の違いを通じて、総額900万円近い超スペシャルモデルの正体と、最適なモデル選び方を探った。
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総額900万円! オプション全部盛りの12Rに初試乗
私のマツダスピリットレーシングロードスター(以下、MSpRロードスター)の標準モデル(コアモデル)が納車されて約1か月半、慣らし運転が終わったタイミングでマツダから200台限定の12Rに試乗する機会を頂けた。ちなみにお借りした広報車の12Rは限定200台の枠外の扱いなので、シリアルナンバーは「000」である。
この広報車は標準仕様の12Rではなく、すべてのオプションパーツを組み込んだスペシャル仕様で、なんと総額866万5822円になる。オプションパーツの取付工賃も考えると900万円近い超スペシャルである。
シリアルナンバー「000/200」を発見!
まずは素の状態の標準モデルと12Rの違いを整理しておきたい。大きな違いはエンジン周りとシートの2点に絞られると言って良い。まずエンジンだが、標準モデルのエンジンもRFに搭載されている2Lエンジンと同じではない。スロットルマップ変更、レブリミット制御変更(レッドゾーン直前まで高出力を維持)、スピードリミッター解除機能追加などは標準モデルも12Rも共通だ。
標準モデルと異なる12Rのエンジンの特徴は高回転域での性能を向上させるモディファイが施されていることである。4000rpm以上の領域でのトルクアップ、パワーアップを達成するため、カムシャフトを変更しバルブリフト量を増やしている。そしてスムーズに空気を取り込むためのポート研磨やエアダクトの大型化、4-1エグゾーストマニフォールド(標準モデルは4-2-1)の採用なども行っている。またピストンとピストンリングも低抵抗のものとなっている。
結果として標準モデルの184馬力に対して200馬力を達成している。ただしバルブリフト量の増加や4-1エグゾーストなどは高回転域でのパワー・トルクアップに貢献するものの、低中回転域のトルクは細くなってしまう傾向がある。そのため最大トルクの発生回転数は標準モデルの4000rpmに対し4700rpmと高くなっている。またフライホイールは標準モデルには騒音や振動の少ないデュアルマスが使われているが、12Rはレスポンスと耐久性を重視したシングルマスが採用されている。
MSpRロードスター12Rに搭載された「SKYACTIV-G 2.0(200PS)」エンジン。特別ロゴをあしらったタワーバーオプションを装着した状態。
そしてシートだが、標準モデルは通常のロードスターのRSグレードに使われているレカロシートと基本的に同じものだが、12Rには専用のレカロ製フルバケットシートがついている。これは完全にサーキット指向のもので、リクライニング機構、シートヒーター、サイドエアバッグ、ヘッドレスト内蔵スピーカーなどの快適・安全装備が省かれている。そのためかなり軽量になっているはずで、標準モデルと12Rの車重は20kgの違いがあるのだが、その大部分はこのシートの差だと思われる。
それ以外の12Rの違いはストラットバーの材質・形状(剛性アップ+軽量化)とサスペンションのアライメント調整と1G締めが行われていること、あとはデカールやホイールの仕上げなど、化粧の類である。多くのユーザーは車高調整をすると考えられるため、アライメント調整/1G締めはやり直さなければならず、工場出荷時でのアライメント調整と1G締めは大きな違いとは言えない。
このエンジンとシートに標準モデルと12Rとの差額234万6300円の価値を見いだせるかどうかが、12R試乗のポイントとなる。
MSpRロードスター12Rに標準装備されているレカロ製フルバケットシート
純正オプションパーツを装備した12Rの乗り心地はどうだったのか
私の標準モデルにはフジツボ製チタンマフラーを装着し、車高をアライメントキットを組み込んだ12R広報車と同等に調整し、アライメント調整と1G締めを施してある(ただしアライメントキットに含まれる強化ブッシュは装着していない)。だから標準モデルながらやや12R広報車に近い仕様となっている。その仕様との比較ということでご理解いただきたい。
まずエンジンだが、やはり高回転域の吹け上がりの良さ、スムーズさは格別でとても気持ちがいい。レスポンスもよりシャープに感じる。ただし、ワインディングロードも含め、公道で普通に走っている状態で5000rpm以上を使うのは「使える場面をわざと創り出して、あえて使う」という感じとなり、通常では12Rエンジンの本領を発揮できる機会は滅多にない、というのが現実だと思う。一方で中低速域のトルクは標準モデルの方が若干太いように感じられた。
藤壺技研工業のチタン製スポーツマフラーを装着した姿
オプションのフジツボ製チタンマフラーは標準車でも十分快音を奏でる。ノーマルのマフラーもいい音なのだが静かすぎて物足りないので、MSpRロードスターには必須アイテムとも言える。
ただしこのマフラー、高回転域にあわせて調律されているようで、低中回転域では低音が目立ち、通常のサードパーティ製ステンレスマフラーと大きな違いは感じられない。現時点でMSpRロードスターに合法的に装着できるマフラーはこれしかないので私も装着したが、チタン製は高回転域を滅多に使わない私には過剰だったかもしれない(4月以降、サクラム製ステンレスマフラーが標準モデルのみ対応となるようだ)。
次にシートだが、12Rのフルバケットシートのサポートの良さは圧倒的で、標準モデルのレカロシートが普通の乗用車用シートに感じられるほどの違いがある。
ただし当然のことながら乗り降りはしづらいし、冬の走行ではシートヒーターが欲しくなる。他の快適・安全装備も公道走行ではとても有益なものばかりなので、公道使用がメインであれば標準モデルのシートの方が優れていると思う。ちなみに12Rに装着されるフルバケットシートは標準モデルにもオプション部品として装着可能だが、なんと1脚49万6980円もする。
MSpRロードスター12Rに標準装備されているレカロ製フルバケットシート
車高に関しては標準のビルシュタインサスペンションでは最大に下げても標準より15mm程度しか下がらない。ごく僅かな差なのだが、やはり視覚的にバランスが良くなると思う。私のクルマは車高調整に加えアライメント調整/1G締めの効果もあり、若干乗り心地は悪化するもののステアリングの安定感、切り始めのシャープさが増したように感じられた。
12R広報車にはオプションのアライメントキット(強化ブッシュに加え、車高調整+独自アライメント調整を行う)」と推奨オプションタイヤであるアドバン・ネオバが装備されており、こちらはさらにシャープな味付けとなるが、乗り心地もより厳しくなる。
筆者所有のMSpRロードスター標準モデルの車高比較写真。上がモディファイ前で、下がモディファイ後
12Rに乗るならどんな目的を持つべき?
12Rは確かに素晴らしいクルマだった。しかしエンジン特性やシートなど、12Rはサーキット走行を楽しむために作られたクルマと理解した方が良く、サーキット走行が目的であれば約235万円の差額は価値があるだろう。もちろん、サーキット走行はしなくてもスペシャルなエンジンを搭載した貴重なクルマに乗っているという心理的満足度は非常に高いだろう。
しかし客観的に見ればサーキット走行をしないのであれば12Rの性能は過剰であり、価格も含め様々な意味で標準モデルの方が最適解であると思う。さらに加えれば、私個人の率直な感想としてはノーマルのRSグレードに2Lエンジンを搭載してもらえればそれで十分であったとも言えるのだが……。
SPECIFICATIONS
マツダ スピリット レーシング ロードスター 12R|Mazda Spirit Racing Roadster 12R
ボディサイズ:全長3915×全幅1735×全高1245mm
ホイールベース:2310mm
最低地上高:145mm
最小回転半径:4.7m
乗車定員:2人
車両重量:1050kg
総排気量:1997cc
エンジン:直列4気筒
最高出力:147kW(200ps)/7200rpm
最大トルク:215Nm(21.9kgf-m)/4700rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:FR
WLTCモード燃費:15.0km/L
税込車両価格:761万2000円(オプションなし)
マツダ スピリット レーシング ロードスター12R|Mazda Spirit Racing Roadster 12R




