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最終更新日:2017.06.29 公開日:2017.06.29

ル・マンはスーパーカー天国! 第2弾はアストン・マーチンvsシボレー・コルベット

第85回ル・マン24時間のLM GTE Proクラスでクラス優勝(総合18位)した、アストン・マーチン「V8 ヴァンテージ GTE」97号車と、クラス9位(総合26位)の95号車。ル・マンのファイナルラップはスロー走行し、同じチームなどで並んでゴールするなどのシーンがよく見られる。画像はアストン・マーチン・レーシング公式サイトより。

 ル・マン24時間レースには、「LM GTE Pro(プロ)」と「LM GTE Am(アマチュア)」と呼ばれる、市販のGTカーをベースにしたレース専用車両で参加するクラスがある。要は、スーパーカーがレースをするのである。2017年6月17・18日に開催された第85回にも5車種29台のスーパーカーたちが参戦した。

 そんな24時間を戦ったスーパーカーたちを紹介する第2弾は、ファイナルラップまで激闘を繰り広げたアストン・マーチン「V8 ヴァンテージ GTE」とGM「シボレー・コルベット C7.R」だ。まずはヴァンテージ GTEから紹介しよう。

ヴァンテージ GTEは市販車「V8 ヴァンテージ」がベース

市販のV8 ヴァンテージ。ヴァンテージにはエンジンがV8のほか、V12もあり、大別して5車種ある。なお、ヴァンテージ GTEはV8ヴァンテージより400kg以上軽量化されているという。V8 ヴァンテージの車両価格は、1660万7168円(税込)から。画像はアストン・マーチン公式サイトより。

 ヴァンテージGTEは、市販車「V8 ヴァンテージ」をベースとしたレース専用車両で、開発はワークスチームとしてル・マンに参戦したアストン・マーチン・レーシングだ。市販車ベースのレース専用車の常として、各部に空力パーツが追加されている。中でも目立つのは、車両後部から10cmほど突き出した大型のリア・ディフューザー。角度によっては、まるで熊手を取り付けてあるかのようにも見えるほどだ。

 第85回ル・マンには、プロクラスに2台(95、97号車)、アマクラスに3台(90、98、99号車)が出走した。95、97、98号車がアストン・マーチン・レーシング、90号車はTFスポーツ、99号車はビークディーンAMRの所属だ。

 ヴァンテージ GTEの加速力、最高速、エンジンの排気量などは未公表。参考としてV8 ヴァンテージは、時速0-100kmが4.9秒、最高速が時速290km、排気量4735ccとなっている。

【ヴァンテージ GTEスペック】
全長×全幅×全高:4450×1956×1500mm
ホイールベース:2600mm
乾燥重量:1245kg
最高出力:357.9kW(回転数は未公表)
最大トルク:500N・m(回転数は未公表)

車両後部の下から後方に突き出ているのがリア・ディフューザー。真後ろから間近で見ると、まるで熊手でも取り付けてあるかのように見える。画像はアストン・マーチン・レーシング公式サイトより。

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アストン・マーチン・レーシングの3台!

アストン・マーチン・レーシング・95・97・98号車

 アストン・マーチン・レーシングの95号車はニッキー・ティーム、マルコ・ソーレンセン、リッチー・スタナウェイのトリオがドライブ。クラス優勝した97号車はダレン・ターナー、ジョニー・アダム、ダニエル・セラの3人が乗り込んだ。終盤、ジョーダン・テイラーの操るコルベット C7.Rの63号車を死闘の末に抜いてクラス優勝したのが、アダムだ。アマクラスの98号車は、ポール・ダラ・ラナ、ペドロ・ラミー、マティアス・ラウダの3人。

ナイトセッションを走行する95号車。ル・マンではカーナンバーが発光する。また、ひとつだけ点灯しているLEDランプはクラス順位で1位を表す。ふたつ点灯で2位、3つ点灯なら3位、ゼロなら4位以下。95号車は3分51秒276のベストラップを刻んだ。画像はル・マンが開催されるシリーズの世界耐久選手権(WEC)公式サイトより。

夕方の時間帯を走行する97号車。すでにカーナンバーが発光している。暗くて内側の整流板までは見えないが、リア・ディフューザーの大きさがわかる。97号車のベストラップは3分50秒950。画像はアストン・マーチン・レーシング公式サイトより。

比較として、V8 ヴァンテージのリアビューがわかるカットも掲載してみた。リア・ディフューザーがわかりやすい市販車もあるが、V8 ヴァンテージ は明確にディフューザーとして組み付けられているようなパーツはないようである。画像はアストン・マーチン公式サイトより。

アマクラスの8位、総合37位に入った98号車。ドライブした内のひとりであるマティアス・ラウダは、かつてのF1王者のニキ・ラウダの息子だ。98号車のベストラップは3分53秒684。画像はWEC公式サイトより。

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V8 ヴァンテージ GTEの90・95号車を紹介!

ビークディーンAMR・99号車

 ビークディーンAMRは英国のチームで、アマクラスで出走。ドライバーはアンドリュー・ハワード、ロス・ガン、オリバー・ブライアントの3人が組み、クラス4位(総合31位)を獲得した。

ヴァンテージ GTEは、フロントのカナード(左右の角にある小さなウィング状の空力パーツ)が2枚ずつになっており、99号車のカラーリングだとわかりやすい。第1弾で紹介したフェラーリ「488 GTE」はつけておらず、ボディだけで発生させるフロントのダウンフォース量がマシンによって差があるのがわかる。画像はビークディーンAMR公式サイトより。

99号車のベストラップは3分53秒797。ル・マンが開催されるサルト・サーキットは1周が約13kmもあるため、プロクラスとアマクラスではマシン性能の差(アマクラスは最新モデルのひとつ以上前の年式のマシンを使用する)と、ドライバーの腕前の差で、基本的には同じマシンであっても数秒の差がつく。画像はビークディーンAMR公式サイトより。

TFスポーツ・90号車

 TFスポーツは英国のチームで、アマクラスで出走。ドライバーはサリー・ヨルック、ユアン・ハンキー、ロブ・ベル。クラス7位(総合36位)を獲得した。

90号車を正面から。ヴァンテージ GTEに正面から日が当たっており、フロントの構造がわかりやすい。右タイヤ側の「DUNLOP」のロゴの下のめくれているように見えるものは何かが壊れたパーツなのか、そうではないのか不明。画像はTFスポーツ公式サイトより。

90号車を後方から。ベストラップは3分53秒320。夕方と朝方は場所によって直接コックピット内に日が差し込むので、それがドライブの敵になるという。画像はTFスポーツ公式サイトより。

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次はシボレー コルベット C7.R!

シボレー コルベット C7.Rは市販車「Z06」と同時開発された

ル・マンでは、1位と2位の間ですら何ラップも差がつくことも多い。しかし第85回のGTEプロクラスは、終盤「シボレー・コルベット C7.R」63号車とヴァンテージ GTEの97号車がテール・トゥ・ノーズの一騎打ちを何周にもわたって展開。大いに観客を沸かせた。画像はコルベットレーシング公式サイトより。

 続いては、GM「シボレー コルベット C7.R」。C7.Rは、市販車の「シボレー コルベット Z06」をベースに開発されたレース専用車というよりも、実は兄弟車といった方が近い。ボンネットとルーフがカーボン製であること、ハイドロフォームアルミフレームやチタン製吸気バルブなど、多くの技術とコンポーネントが共有化されており、同時に開発されたからだ。C7.Rの開発を手がけているのは、GMのワークスチームであるコルベット・レーシングだ。

 第85回ル・マンには、プロクラスに2台(63、64号車)に参戦した。なお、アマクラスにはラルブル・コンペティションにより、Z06をレース仕様にした「シボレー コルベット C7-Z06」が1台出走した。

 C7.Rのスペックは未公表のため、代わりにZ06のものを掲載する。ただしZ06も最高速は未公表だ。加速はZ06のクーペ8速AT仕様が時速0-60マイル(時速約96.5km)2.95秒。

【Z06クーペ3LZ(7MT)スペック】
全長×全幅×全高:4515×1970×1230mm
ホールベース:2710mm
車両重量:1610kg
エンジン:V型8気筒 OHVスーパーチャージャー
排気量:6153cc
最高出力:485kW/6400rpm
最大トルク:881N・m/3600rpm

手前が市販車のZ06(2018モデル)で、奥がC7.R。カラーリングが同じレーシングイエローティントコートなので似ているが、実際にはC7.Rの方がかなりボディが絞り込まれたデザインになっている。Z06の車両価格は、1468万円(税込)から。画像はシボレー公式サイトより。

左がZ06(現行モデル)で右がC7.R。両車の比較を正面から。ボディはC7.Rの方が絞りこまれているが、フロントスポイラーなど同じ形状をしている部分も多い。画像はシボレー公式サイトより。

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続いてはGMの威信を背負った63・64号車!

コルベット・レーシング・63・64号車

 コルベット・レーシングは2台を投入。63号車はヤン・マグヌッセン、アントニオ・ガルシア、ジョーダン・テイラーの3人。テイラーがヴァンテージ GTEの97号車のアダムと死闘を演じた。64号車は、オリバー・ギャビン、トミー・ミルナー、マルセル・ファスラーの3名。

ピットインする63号車。ピットも一瞬たりとも気の抜けない戦場で、油断が大幅なロスを招くこともある。また速度制限があるとはいえ、何台ものマシンが交錯するので、ピットクルーたちも命がけである。画像はコルベット・レーシング公式サイトより。

ナイトセクションを走行する63号車。63号車はファイナルラップで力を使い果たし、ブレーキは利かない、左フロントタイヤはパンクするなど、満身創痍となり、最終的にはフォード「GT」67号車にも抜かれ、クラス3位(総合20位)でフィニッシュ。何とか表彰台はキープした。ベストラップは3分51秒156。画像はコルベット・レーシング公式サイトより。

ナイトセクションを走行する64号車。ベストラップは3分51秒510。ベースとなったスーパーカーよりもさらに高性能化されているGTEクラスのレース専用車たちだが、トヨタ「TS050 HYBRID」のように、レースのためだけに開発されたLMP-1Hクラスの専用車とは性能が格段に異なる。LMP-1Hクラスのベストラップは3分18~19秒なので、その速度差は圧倒的で、抜く方も抜かれる方も夜間は特にリスキーである。画像はコルベット・レーシング公式サイトより。

64号車の後方は、ワークスの「ポルシェGTチーム」の「911 RSR」91号車。コルベット・レーシングがGMの看板を背負ったワークスチームであるように、GTEクラスに参戦したほかの4車種も、すべてワークスか準ワークスが参戦しており、メーカーの威信をかけた熾烈な戦いが各所で展開した。画像はコルベット・レーシング公式サイトより。

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最後はラルブル・コンペティションの50号車!

ラルブル・コンペティション・50号車

 アマクラスにZ06のレース仕様であるC7-Z06で参戦した仏ラルブル・コンペティションの50号車は、フェルナンド・リース、ロマン・ ブランデリ、クリスチャン・フィリッポンの3人がトリオを組んだ。

50号車はボンネットに大きく描かれているところから、「HUMAN」号とも。クラス15位、総合48位という結果となった。最後の完走車で、58周遅れの309周で24時間を走りきった。画像はラルブル・コンペティション公式サイトより。

50号車はどの角度から見ても派手。側面にはキャラクターが描かれており、いってみれば、フランス版「痛レーシングカー」といった雰囲気。ベストラップは3分53秒857を記録した。画像はラルブル・コンペティション公式サイトより。

すぐ後方のピットにいるコルベット・レーシングの63号車が、コルベットらしいレーシングイエローティントコートなのに対し、厳密には型式が異なるが、一見するとまったく別のクルマかと見間違えてしまうほど、派手なカラーリングが施されているのが50号車である。画像はラルブル・コンペティション公式サイトより。

後方はアストン・マーチン・レーシングのアマクラスに参戦した98号車。アマクラスの各所でもデッドヒートが展開した。画像はラルブル・コンペティション公式サイトより。

2017年6月29日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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