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クルマ最終更新日:2018.06.26 公開日:2018.06.26

フェラーリ「512BB」with「365GT4/BB」

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フェラーリ「512BB」。スーパーカーブームをけん引した1台。「ごーいちにーびーびー」という読み方のほか、当時は子ども向けの書籍などの影響で、小中学生を中心に「ごーいちにーべーべー」という読み方もされていた。2009年にMEGA WEBで開催された「70年代懐かしのスーパーカー展」で撮影。

 1970年代半ばから後半にかけて日本に訪れたスーパーカーブーム。それをけん引した1台が、今回紹介するフェラーリ「512BB」で、当時のフラッグシップモデルだ。闘志むき出しで噛みついてきた新興ライバルのランボルギーニが送り込んできた「カウンタック LP400」(記事はこちら)に対し、返り討ちにせんとぶつけた1台である。

 1974(昭和49)年にランボルギーニがV12エンジンを初めてミッドシップにレイアウトして「カウンタック LP400」を発売すると、フェラーリは豊富なレース経験からフィードバックした「ベルリネッタ・ボクサー(BB)」というコンセプトで対抗。その結果、「BB」シリーズは誕生した。

「ベルリネッタ・ボクサー」とはどんなコンセプト?

 BBの「ベルリネッタ」とはイタリア語で小型のスポーツクーペを意味し、「ボクサー」とは水平対向エンジンという意味だ。ただし実際に搭載されたのは水平対向エンジンではなく、バンク角180度のV型エンジンである(水平対向はピストンが左右で一直線に並ぶが、V型は左右で互い違いに並ぶ)。BBシリーズは、フェラーリのロードカーとして初めてV12エンジンをミッドシップにマウントするクルマとなった。

 「カウンタック LP400」から半年遅れでデビューとなったBBシリーズの第1号が、「365GT4/BB」だ(次ページで紹介)。その第2世代として1976(昭和51)年10月に登場したのが「512BB」である。

 「365GT4/BB」の名称の365は1気筒当たり365ccを意味しており(総排気量は4390cc)、12気筒であることと合わせて当時のフェラーリのレーシングカーから引き継がれた伝統だ。しかし「512BB」はネーミングのルールが変わり、「5」は総排気量4942ccをほぼ5Lとみなしての5、「12」は12気筒の12という意味となった。

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フェラーリ「365GT4/BB」。ほぼ「512BB」とデザインは一緒だが、大きく4か所ほど異なる。2009年にMEGA WEBで開催された「70年代懐かしのスーパーカー展」で撮影。

→ 次ページ:
「512BB」と「365GT4/BB」徹底比較!

「512BB」は「365GT4/BB」と外見的にどこが違う?

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フェラーリ「512BB」。フロントにリップスポイラーが追加され、リアタイヤ前にエアスクープが設けられた(厳密には、展示車両の場合、ドアミラーも形状が若干異なる)。フロントのダウンフォースが増し、リアブレーキの冷却性能が上がった。

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フェラーリ「365GT4/BB」。フロントのリップスポイラー(チンスポイラー)がなく、リアタイヤ前のエアスクープもない。

 「365GT4/BB」と「512BB」は名称こそ大きく異なるものの、デザインに関しては基本的に同じで、目立つ変更点は4か所ほどである。「365GT4/BB」のデザインは、日本では最も知名度のあるカロッツェリア(デザイン工房)のピニンファリーナが手がけており、同社が初めて自社の風洞実験施設を活用してデザインしたという。

 まずフロント部分では、リップスポイラーが追加された。そしてサイドには、リアブレーキの冷却用として、大きなエアスクープ(NACAダクト)がリアタイヤ前に設けられた。テール部分には確実に見分けられる大きな変更ポイントがふたつ。ひとつが左右の3連ランプが2連ランプとなったことと、エキゾースト・パイプが左右3本ずつから2本ずつになったことだ。

 そのほか並べないとわかりにくい変更点としては、「512BB」はリアタイヤのホイールアーチが拡大しており、リアのオーバーハングが40mm増した。

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テールランプが二連になり、エキゾーストパイプも左右2本出しとなった。また若干ながらエキゾーストパイプの周辺デザインも異なる。

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フェラーリ「365GT4/BB」をリアから。テールランプは三連(ただしひとつはリフレクター)で、エキゾーストパイプは左右3本出し。

→ 次ページ:
大きく変わったのがエンジンの性能!

エンジンは最高出力も最大トルクも変更

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BBシリーズはフェラーリ初のミッドシップV12。この下にエンジンがある。「512BB」のエンジンの形式名は「ティーポ102B」(「365GT4/BB」は「ティーポ102A」)。最高速度は時速302kmといわれる。スーパーカーブーム当時の小中学生たちにとっては夢が壊れる話ではあるが、「カウンタック LP400」の最高速度の時速300kmジャスト共々、現在では水増しした公称といわれている。

 エンジン性能に関しては、排気量が増やされた関係で「512BB」の最大トルクは4kg・mアップして46.0kg・mとなった。トルクがアップしたことに対応するため、クラッチに関しては、9.5インチの単板クラッチから8.5インチの複板クラッチに変更されている。

 一方で最高出力は20馬力ダウンの360馬力。若干ながらマイルドになって乗りやすくなったといえる。最高出力がディチューンされたので、最高速度も下がるはずだが、カタログ上では時速302kmが維持された。「カウンタック LP400」の公称の最高速度・時速300kmジャストを上回ることを死守したかったらしい。

 シャシーおよびボディの構造も「365GT4/BB」からそのまま引き継がれており、「512BB」はボックス・セクションのラダー・フレームに鋼板製フロアを重ねたダブル・スキン構造となっている。サスペンションは前後共ダブル・ウィッシュボーン、ブレーキは前後共にベンチレーテッド・ディスクという点も継承された。

ライバル対決・当時はどちらに軍配が上がった!?

 日本にスーパーカーブームが訪れたとき、すでに「512BB」にスイッチしていたため、「512BB」と「カウンタック LP400」こそがライバル関係、というイメージを持つ世代も多い。当時の小中学生がその世代で、デザイン的にはよりエキセントリックで子ども受けしやすい「カウンタック」に軍配が上がっていたが(「512BB」はより大人向けのデザインといえる)、最高速度は「512BB」が上回っており、甲乙つけがたい2台だった。

 「512BB」は929台が生産され、1981年からは排出ガス規制への対応として、キャブレターから燃料噴射(インジェクション)に変更した「512BBi」にスイッチする。「512BBi」はフロント・グリルのデザインがわずかに変更されたが、基本的なデザインは「512BB」から踏襲されている。「512BBi」は1984年まで1000台強が生産され、同年からV12フラッグシップモデルは名車(2代目)「テスタロッサ」に引き継がれ、「BB」の名を持つスーパーカーは生産を終了した。

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フェラーリ「512BB」を真後ろから。しゃがんで撮影したため、車高の低さがわかる。ライバルの「カウンタック LP400」の1070mmには及ばないが、「512BB」の全高も1120mmしかない。

→ 次ページ:
2台のスペックを掲載!

「512BB」および「365GT4/BB」のスペック

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「512BB」のコックピット。

 「512BB」と「365GT4/BB」のスペックを掲載する。なお、古い資料に当たったところ、スペックの一部は資料ごとに異なる数値であったため、基本的には撮影を行ったMEGA WEBの解説に従った。

【512BB・スペック】
全長×全幅×全高:4360×1830×1120mm
ホイールベース:2500mm
トレッド(前/後):1500/1565
車両重量:1515kg
乗車定員:2名
サスペンション
 前:ダブル・ウィッシュボーン/コイル
 後:ダブル・ウィッシュボーン/ダブル・コイル
ブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク
最高速度:時速302km

【エンジン】
形式名:ティーポ102B
種類:水冷バンク角180度V型12気筒DOHC
搭載位置:ミッドシップ縦置き
排気量:4942cc
最高出力:360ps/6800rpm
最大トルク:46kg・m/4600rpm
燃料噴射装置:ウェーバー製キャブレター×4
ミッション:5速MT

 

【365GT4/BB・スペック】
全長×全幅×全高:4360×1830×1120mm
ホイールベース:2500mm
トレッド(前/後):1500/1565
車両重量:1120kg
乗車定員:2+2名
サスペンション
 前:ダブル・ウィッシュボーン/コイル
 後:ダブル・ウィッシュボーン/ダブル・コイル
ブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク
最高速度:時速302km

【エンジン】
形式名:ティーポ102A
種類:水冷バンク角180度V型12気筒DOHC
搭載位置:ミッドシップ縦置き
排気量:4390cc
最高出力:380ps/7700rpm
最大トルク:42kg・m/4600rpm
燃料噴射装置:ウェーバー製キャブレター×4
ミッション:5速MT

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