新型ポルシェ・カイエン エレクトリックは速すぎる! エンジン車派の私の価値観を覆した、新しいポルシェの走り。
エンジンの鼓動とサウンドを愛するカナイメグが、新型ポルシェ・カイエン エレクトリックに初試乗。「ポルシェはやっぱりエンジン」という思い込みは、アクセルを踏んだ瞬間に覆された。エンジン車派の心を揺さぶった、新しいポルシェの走りとは。
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目次
私はモデル・タレントとして活動しながら、クルマとバイクを愛してやまないカナイメグだ。愛車はシビック タイプR(FL5)。エンジンの鼓動と音に惚れ込んだ、生粋のエンジン車派である。
ポルシェは、私にとってずっと遠い存在だった。速くて、美しくて、走ることに一切の妥協がない。そういうイメージだけを抱えて、実車のハンドルを握る機会のないままここまで来た。電気自動車も同じで、乗った経験は一度もない。静かで、力強くて、けれど鼓動がない乗り物。エンジンの音と振動に心を持っていかれた人間としては、あまり縁のない世界だと思っていた。
そんな私に届いたのが、新型「カイエン エレクトリック」の試乗の機会だった。第一印象を白状すると、「ついにカイエンも電気になったか」。エンジン音のないポルシェを想像して、少し寂しい気持ちになったのも事実である。
だが、結論から書く。実際に乗ったら、その考えは180度変わった。カイエン エレクトリックは、エンジン車の代替品ではなかった。もっと先の世界にいたのだ。
新型カイエン エレクトリックって、どんなクルマ?
新型カイエン エレクトリックは、カイエンとして初めてフル電動化されたモデルだ。日本では2025年11月に導入され、2026年9月2日から納車開始予定。グレードは「カイエン エレクトリック」(1335万円)、「カイエンS エレクトリック」(1676万円)、「カイエン ターボ エレクトリック」(2101万円)の3本立て。それぞれにSUVとクーペの2つのボディタイプが用意され、ここに挙げた価格はSUVのものになる。
全車が113kWhの大容量バッテリーと前後2つのモーターによる4WDで、800Vの高電圧システムを採用。最大400kWの急速充電器を使えば、バッテリー残量10%から80%までの充電が16分以内で済む。10分つないだだけで走れる距離は、約325km。そして満充電での航続距離は、WLTCモードで636kmに達する。
ポルシェ・カイエン エレクトリック|Porsche Cayenne Electric
今回私が試乗したのは、エントリーグレードの「カイエン エレクトリック」。エントリーといっても最高出力408PSで、後述するローンチコントロール使用時には442PS・最大トルク835Nmを発生し、0-100km/h加速は4.8秒でやってのける。
そして最上位のターボは、ローンチコントロール使用時に最高出力1156PS・最大トルク1500Nmという、ポルシェ市販車史上最強の数値を叩き出す。0-100km/h加速は、なんと2.5秒。一瞬「誤植か……?」と目を疑ったが、どうやら本当のことらしい。人類はついにここまで来たのかと、思わず宇宙猫のような顔になってしまった。
ボディサイズは全長4990×全幅1980×全高1675mm。私の愛車タイプR(4595×1890×1405mm)と並べると、全長で約40cm、全幅で9cm、全高にいたっては約27cmも大きい。実車を前にすると、数値を確認するまでもなく「でかい」とわかった。この存在感は圧倒的だ。
弾丸のような加速と、まさかの「タイプR超え」
0-100km/h加速は4.8秒。442PS・最大トルク835Nmを叩き出すカイエン エレクトリックの加速に、エンジン車派の私も思わずアドレナリン全開になった。
試乗の舞台は、千葉県木更津市のポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)。広大な舗装エリアが広がるダイナミックエリアではまず、アクセルをぐっと踏み込む急加速から試させてもらった。脳からアドレナリンが一気に噴き出して、「ひゃ〜!」と楽しく声が出る。速いクルマに乗ったときの、あの高揚感だ。
そして極めつけとして体験させてもらったのが、先ほど触れたローンチコントロールである。停止状態からクルマの持てる力を一気に解き放ち、0-100km/h加速を全力で味わうための機能だ。使い方は驚くほどあっけない。走行モードをスポーツプラスに切り替えたら、ブレーキを踏んだ状態のままアクセルを深く踏み込む。するとクルマが表示と光で「いつでもどうぞ」と教えてくれるので、あとはブレーキから足を離すだけ。あまりの手軽さに油断して、私は深く考えもせず、ぽんと足を離してしまった。
次の瞬間、カイエンは弾丸に変身した。体がシートに押し付けられ、脳みそだけ後ろに置き去りにされるような感覚。先ほどの急加速で感じた「ひゃ〜!」という楽しいアドレナリン状態を飛び越えて、体が反射的に「これはやばい」と危機感を覚え、制御をかけようとする。それほどの、凄まじい加速だった。自称スピード狂の私が、叫びながら飛んでいった。これで4.8秒。最高峰の2.5秒を叩き出すターボに乗っていたら、泣いていたかもしれない。
愛車のタイプRより大きいカイエンの方がグイグイ回るって、一体どういうこと!?
ところが、驚きはそれだけでは終わらない。パイロンが並んだ区間を左右に縫って走ると、この巨体が、なんと愛車のタイプRよりきびきび動くのだ。
理由はリアアクスルステアリングにあった。日本仕様には標準で備わる機構で、ハンドル操作に合わせて後輪も最大5度動くことで、低速では小回りが利き、高速では安定性が増す。おかげでカイエン エレクトリックの最小回転半径は、通常仕様の5.9mから5.4mまで縮まる。わたしの愛車のタイプRの5.9mより小さい。
全長で約40cm、小回りを大きく左右するホイールベースにいたっては、3023mm対2735mmで29cmも長いのに、小回りはカイエンの勝ちなのである。「大きいのに扱いやすい」どころか、「大きいのに、うちの子より曲がる」。これには唸るしかなかった。
SUVでサーキット走行?
続いてはハンドリングトラックへ。ニュルブルクリンクの「カルーセル」やラグナ・セカの「コークスクリュー」といった、世界の名門サーキットのコーナーをコースレイアウトに組み込んだ、全長2.1km・高低差約30mの周回コースである。この時点で「SUVでサーキット走行?」と疑問符が浮かんだのだが、その疑問は走り出してすぐに消えた。
このクルマ、ドライブモードを変えたときの違いがとてもわかりやすい。特にスポーツやスポーツプラスに切り替えると、全車標準のアダプティブエアサスペンションが姿勢を変え、車高が下がるのが身をもってわかる。座ったままクルマの構えが変わる感覚は、モードを切り替えても足まわりの硬さが変わるくらい、と思っていた私には新鮮だった。
新型カイエン エレクトリックで走る、全長約2.1 kmのハンドリングトラックはもう楽しいの一言。
ポルシェオーナーに限らず、誰でも利用可能なポルシェブランドの世界を体験できる施設が「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」だ。
そしてスポーツプラスでは、まるで別のクルマになる。コーナーでの安定感が際立ち、2トンを優に超える車重をまったく感じさせない。とにかく、走っていて気持ちがいいのだ。曲がって、止まって、また加速する。余計なことを考えず、走りだけを味わえる。
クルマがよき理解者となって、こちらの操作にぴたりと応えてくれるから、なんでもできるような全能感すら覚えた。それが顔に出ていたらしく、走行を終えてクルマを降りると、オフィシャルのカメラマンさんに「すごい笑顔で走ってましたね」と言われるほどだった。
それにしても、PEC東京のコース設計は本当によくできている。世界の名コーナーを一周に凝縮した構成は、クルマの実力を引き出すには申し分ない舞台だった。ここは予約をすればポルシェの車両で走ることができるので、気になった方はぜひ一度体験してみてほしい。
カイエン、こんな悪路も走れるの?
ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京には、最大約40度もの急な斜面を持つタフなオフロードコースが用意されている。
最後はオフロードコースへ。ここはインストラクターが運転するクルマの助手席に乗せてもらっての体験だ。目の前に現れたのは、急な坂——というより、もはや壁。深い凹凸に、斜めに傾いた路面。クルマのテーマパークとしか言いようのない、想像を超える悪路が続く。
先にほかの車両が走るのを外から見ていたのだが、思わず焦った。「あのクルマ、とんでもないことになってるよ!?」と。車体が大きく傾き、見ているこちらがハラハラする。大きなブロックが互い違いに連続するゾーンでは、4輪のうち2輪しか接地していない状態のまま、ぐいぐいと登っていく。ところが、いざ自分がその道を通る番になると、車内は安心感たっぷりで、淡々と進んでいく。本当にさっき見ていた道と同じなのか? と疑うレベルの落ち着きだった。
特に印象的だったのが下り坂だ。壁のような急坂を下る間、ドライバーがやることはハンドル操作と周囲の確認だけ。速度はクルマが自動でコントロールしてくれる。ヒルディセントコントロールと呼ばれる機能で、オフロードを走ることを前提としたSUVには、すでに当たり前に備わっている装備だという。
もっとも、名前すら知らないまま初めて体験した私にとっては、ただただ圧倒されるばかり。ほとんど垂直に見える坂を、クルマが自分で歩幅を決めながら降りていく。助手席で身を委ねながら、「最新技術が運転を助ける」ということを、頭ではなく体で理解した。
ロマンの塊。ターボだけの可変エアロ
カイエン ターボ エレクトリックのみに装備される可動式の空力デバイスが「リヤアクティブエアロブレード」。
速度が55km/hを超えると自動でブレードがせり出してくる。ブレードの下部には、開発の聖地であるドイツ・ヴァイザッハのGPS座標 48°51′05.7″N 8°53′50.2″E(北緯48度51分05.7秒、東経8度53分50.2秒)が刻印されている。
もうひとつ、ターボだけに備わる装備の話をさせてほしい。その名も「リヤアクティブエアロブレード」。リヤバンパーの左右に隠された縦長の可変エアロパーツで、速度が55km/hを超えると自動でせり出し、35km/hを下回るとまた収納される仕組みだ。
ルーツはモータースポーツにある。ル・マンを制した名車「917」のロングテールに代表される空力の知見を市販車に落とし込んだもので、高速走行時の安定性はもちろん、空気抵抗が減ることで航続距離の面でも効いてくるという。
あっさり書いたが、これ、すごすぎませんか? 必要なときに出てきて、不要なときはしまえて、止まっているときは表に出ないから見た目も損なわない、だと……!? 私はずっと、楳図かずお作品の登場人物のような顔になっていた。デザインを犠牲にすることなく技術の最先端を行く、そのあり方にロマンを感じる。
しかもこのエアロパーツには座標がデザインとして刻まれていて(停車時は奥に仕舞われているので、覗き込まないと見えない)、それはポルシェがヴァイザッハに構える風洞実験施設の場所を示しているのだとか。やることがおしゃれすぎる!
こうした可変エアロ自体は、いまやスーパースポーツや超高性能モデルではそう珍しいものではないらしい。実物を目の当たりにしたのが初めての私は、ただ「すごい」と口を開けるばかりだった。それでも、オフロードまで視野に入れたSUVにこの技術が載っているという事実は、あらためて考えると相当なことだと思う。
エンジン車が好きな人ほど、乗ってみてほしい
新型カイエン エレクトリックは、インテリアのデジタル体験にも抜かりがない。14.25インチのフルデジタルメーターパネルに加え、有機ELを採用した湾曲型センターディスプレイを備える。
サーキット走行でも体をしっかりとホールドしてくれる、カイエン エレクトリックのスポーツシート。
今回の試乗でいちばん心に残ったのは、驚きが最後まで途切れなかったことだ。平地では加速と小回り、ハンドリングトラックでは走りそのもの、オフロードでは安定感と技術。場面が変わるたびに、違う種類の感動が待っていた。
伝えたいのは、「カイエンがEVになった」という話ではない。カイエン エレクトリックは、エンジン車の代わりではなく、クルマそのものを次のステージへ進化させた存在だった。「ついにカイエンも電気になったか」と寂しがっていた試乗前の自分に、教えてあげたいくらいである。
エンジンの鼓動に惚れ込んだ私が、初めてのポルシェで、初めての電気自動車で、心を鷲掴みにされた。もっと乗りたい。この記事に収めきれないほど、伝えたいことがまだ残っている。エンジン車派の人ほど、一度乗れば価値観が変わるかもしれない。この「未来の運転体験」を積んだカイエン エレクトリックを、ぜひ一度体感してみてほしい。
SPECIFICATIONS
ポルシェ・カイエン エレクトリック|Porsche Cayenne Electric
ボディサイズ:全長4990×全幅1980×全高1675mm
ホイールベース:3023mm
最低地上高:190mm
最小回転半径:5.9(リアアクスルステリング装備車は5.4)m
乗車定員:5人
荷室容量:前90L/後781〜1588L
車両重量:2550kg[2650kg]
モーター最高出力:325kW(442ps)[850kW(1156ps)]
モーター最大トルク:835Nm(85.1kgf-m)[1500Nm(153kgf-m)]
駆動方式:4WD
バッテリー総容量:113kWh
一充電航続距離:636[629]km(WLTCモード)
0-100km/h加速:4.8[2.5]秒
最高速度:230[260]km/h
税込車両価格:1335[2101]万円
※[ ]内はカイエン・ターボ・エレクトリック




