今もって人気の初代S30系 ラリーでも大活躍した「フェアレディ240Z」!
1973年式日産「フェアレディ240ZG」。初代「S30型」のひとつで、1973年式のHS30H型。「AUTOMOBILE COUNCIL 2017」(新しいタブが開きます)のヴィンテージ宮田自動車ブースで撮影。
現在、日産には「GT-R」と「フェアレディZ」という、走りを追求した車種が存在しているが、この2台は初期の歴史が少し異なる。
「GT-R」は「スカイライン」の最上位グレードのスポーツモデルとして誕生したが、その「スカイライン」は元をたどれば日産に吸収合併されたプリンス自動車で開発された。
それに対し、「フェアレディZ」は日産で開発された車種。同社が1961(昭和38)年の第8回東京モーターショーで発表し、翌年10月から販売を開始したスポーツカー「ダットサン フェアレディ1500」にまで遡れるのだ
そんな「ダットサン フェアレディ」シリーズの後継車として、1969年10月に”Z”の名を末尾に加えられて発表されたのが、今回紹介する「フェアレディZ」である。
初代「フェアレディZ」はS30型と呼ばれ、スタイリングと性能のよさに対して低価格ということで、国内だけでなく、北米市場でも大ヒット。9年間、当時の日産の世界的な顔として売れ続け、販売台数は約52万台に達した。この数字は、単一型式のスポーツカーとして最高記録となっている。
「ダットサン フェアレディ1500 SP ローウィンドウ」。1964年式。フェアレディとは貴婦人のこと。クローズドボディで”ショートデッキ・ロングノーズ”の「フェアレディZ」とは大きく異なるスタイリングをしていた。
初代S30型の中の排気量アップ版「240Z」
「240Z」のイメージカラーはマルーン。往年の「240Z」ファンはこのマルーン、もしくはモンテカルロラリーなどに参戦した際の赤と黒のイメージが強い。
今回紹介するのは初代「フェアレディZ」S30型の1種で、「フェアレディ240Z」、通称「240Z」と呼ばれるシリーズの1台。「240Z」シリーズの中の最上位グレードである「240ZG」、型式はHS30H型だ。
S30型と「240Z」シリーズの違いは、エンジンの排気量にある。S30型は2Lだが、「240Z」シリーズは排気量をアップしており、150馬力を絞り出す2.4LのSOHC・直列6気筒「L24型」エンジンを搭載する。それが「240Z」の名前の由来である。
当初、「240Z」は国内では販売されておらず、北米仕様として輸出されていた。しかし、同車を望む声が高くなったのを受け、1971年11月から国内での販売もスタートした。
2.4Lの排気量のエンジン「L24型」。OHCの直列6気筒。240ZGは空力パーツなどの効力もあり、最高速度は時速210kmに達した。約45年も前のエンジンだが、展示車両はかなり入念に手を入れられており、非常にきれいなパーツやエンジンルームとなっている。
「240ZG」のリアビュー。「240Z」は国内では通称だが、北米では「DATSUN 240Z」という正式名称。そのため、エンブレムも入っている。「240Z」のエンブレムは左側面にも入っている。
→ 次ページ:
「240ZG」は「240Z」シリーズの最上位グレード
「240ZG」の特徴とは?
「240Z」は3グレードあり、ノーマルの「240Z」、「240Z-L」、そして今回の最上位グレードとなる「240ZG」だ。「240ZG」は、通称「G(グランド)ノーズ」と呼ばれるエアロパーツを装着し、さらにオーバーフェンダーとリアスポイラーも備える。
先端部分に装着されているのが、「グランド(G)ノーズ」と呼ばれるエアロパーツ。これにより、空力性能を示すCd値が0.390となり、時速210kmの最高速をマークするのに一役買った。また、「フェアレディZ」の外見的な特徴である”ロングノーズ”をより強調することにも貢献している。
「240ZG」の外見的な特徴のひとつである、オーバーフェンダー。オーバーフェンダーが装着されているだけでも迫力が増しているが、それがリベット止めされているところに往年のスポーツカーならではのすごみを感じる。
「240Z」の外見的な特徴のひとつであるリアスポイラー。「フェアレディZ」はFR車であることから、後輪のトラクションが重要。リアスポイラーは後輪にかかるダウンフォースが増すのでトラクションを稼ぐのに一役買っている。
「240Z」は世界のラリーシーンで大活躍
1950年代からラリーシーンで活躍してきた日産は、お家芸ともいえるラリーに「240Z」を投入。結果、1971年の第19回東アフリカサファリラリーで優勝し、翌年の第41回モンテカルロラリーでも3位に入賞。73年の第21回サファリラリーでも優勝を果たした。画像の「240Z」は、第41回モンテカルロラリーで3位に入賞した5号車で、型式はHLS30型。
第41回モンテカルロラリーで3位入賞した「フェアレディ240Z」5号車。5号車はドライバーがラウノ・アルトアーネン、コ・ドライバーが現FIA会長のジャン・トッドのコンビで参戦し、翌年の第42回でも入賞した。
「240Z」モンテカルロラリー5号車を撮影したのは2017年のオートサロンのダンロップブース。日産とダンロップは1950年代からコンビを組んでラリーに参戦し、第41回のときもダンロップタイヤを履いて3位入賞を果たした。
真横から見ると、”ロングノーズ”なのがよくわかる。ドライバーは後輪の上に座るのに近いほど。FR方式は雪道を走るのに最も苦手とされるが、それを覆してモンテカルロラリーで3位に入賞したことも、「フェアレディZ」の評価が上がった理由のひとつ。
リバティーウォークの強烈な1台!
楠木みちはるの人気コミック「湾岸ミッドナイト」で主人公が乗っていたことなどの影響もあって、初代のS30系は現在も非常に人気が高く、チューニングカー市場では程度のいい車両が減ってきていることもあって価格が高騰しているという。
画像は、フェラーリやランボルギーニなども独特の「改造」を施し、世界的な人気を誇る名古屋のショップ・リバティーウォークの「240ZG」ベースの改造車だ。なお、LB(リバティー)ワークスとは、ブランド名。
リバティーウォークが手がけた「240Z」の昭和の街道レーサーテイストの改造車。カラーリングは、1973年の「240ZG」のレース仕様テストカーをイメージしたもの。実際のレース仕様テストカーは、特別な2870ccの「LY28」というエンジンを搭載していた。
リアのデザインはかなり手を入れられている。ボンネットの裏側には、リバティーウォークCEOで、”シャコタンオヤジ”こと加藤渉氏の言葉が記されている。
同じ「240ZG」でも、2ページ目で紹介したエンジンとはヘッドカバーなどが異なり、手がけた人物の個性が見えてくるのがチューニングカーの世界。
1973年式「フェアレディ240ZG(HS30H型)」スペック
【スペック】
全長×全幅×全高:4305×1690×1285mm
ホイールベース:2305mm
トレッド(前/後):1355/1345mm
車重:1010kg
サスペンション(前/後):前後共にストラット方式
ブレーキ(前/後):ディスク/ドラム(アルミフィン付き)
タイヤ(前/後):175-HR14
【エンジン】
型式:L24型
レイアウト:直列6気筒・SOHC
排気量:2393cc
最高出力:150ps(110kW)/5600rpm
最大トルク:21.0kg・m(206N・m)/4800rpm
コックピット。スポーツカーらしく、メーター類が多いのが見て取れる。
2017年10月24日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
AUTOMOBILE COUNCIL系の記事一覧はこちらから!