中央環状線全線(C2)開通から10周年! 首都高の渋滞状況はどう変わった?【道路のニュース】
首都高・中央環状線(C2)は2025年3月7日で全線開通から10周年を迎える。いまや首都高で最も利用されている路線となった中央環状線の現状を首都高が発表。渋滞緩和、安全性向上など、多岐にわたる成果が明らかとなった。
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中央環状線(C2)は今年で全線開通10周年!

全線開通10周年を迎える中央環状線。 (c) moarave – stock.adobe.com
渋谷、新宿、池袋の東京副都心を経由し、起点の大井JCT(品川区)から終点の葛西JCT(江戸川区)までを結ぶ「中央環状線(C2)」が2025年3月7日、全線開通から10周年の節目を迎える。
中央環状線は1982~1987年の荒川線を皮切りに、2002年に王子線、2007~2010年に新宿線と順次開通。そして2015年3月、品川線の開通で葛西JCT~大井JCTの全線開通。
1982~1987年……荒川線(葛西JCT~江北JCT)開通
2002年……………王子線(江北JCT~熊野町JCT)開通
2007年……………新宿線(熊野町JCT~西新宿JCT)開通
2010年……………新宿線(西新宿JCT~大橋JCT)開通
2015年……………品川線(大橋JCT~大井JCT)開通
その歴史を振り返れば、構想から約50年、工事の開始から約40年。中央環状線の道路事業は、周辺の再開発事業、街路事業、河川事業などと連携し、環境にも配慮しながら最新の技術を駆使した大事業であった。

中央環状線のルート図。東京の東側から整備を開始。当初は東名高速や中央道と接続する西側から整備するはずだったが、紆余曲折あり東北道と常磐道と接続する東側から整備をしていくことになった。
そんな中央環状線だが、たんに副都心を連絡するだけではない。東名高速、中央道、東北道、常磐道など、主要な高速道路のアクセス支援を担う他、都心部を迂回する“ロータリー”として機能し、首都高の各路線の交通量を分散している。

中央環状線は1963年に首都圏の道路交通の骨格として計画された「3環状9放射」のネットワークに基づいている。画像は国土交通省の資料を元に編集部が作成。
ちなみに、中央環状線の1日あたりの平均利用台数は約33.1万台/日。都心環状線(約31.9万台/日)、湾岸線(東京・千葉区間:約30.1万台/日)を抜いて、首都高で最も利用台数の多い路線となっている。

中央線環状線の利用台数の推移。荒川線開通時の利用台数は22.6万台/日で、王子線の開通で26.2万台/日、新宿線の開通で31.0万台/日、品川線の開通で34.8万台/日と増加していった。
中央環状線開通から10年で何が変わった?

熊野町JCTは中央環状線と5号池袋線を接続する。写真は編集部が撮影。
首都高速道路は中央環状線の全線開通10周年を迎えるにあたり、全線開通の整備効果を発表した。中央環状線はこの10年間でどのような効果をもたらしたのだろう? 3つのポイントともに解説しよう。
1. 中央環状線内側の渋滞緩和に貢献
首都高速道路によれば、環状ネットワーク完成により中央環状線内側の首都高路線の渋滞緩和に貢献したという。中央環状線の王子線開通前(2000年)と全線開通後(2023年)で渋滞損失時間を比較してみると約56%も減少していることがわかった。
※渋滞損失時間:渋滞がない場合の所要時間と実際の所要時間の差を表すもの

中央環状線全線開通後の都心部の渋滞損失時間の変化。2000年から2023年の23年間で渋滞損失時間は半減。
では中央環状線開通による渋滞緩和によって、実際どのくらい所要時間を短縮できたのか、羽田空港行の空港リムジンバスの所要時間を用いて具体的に解説しよう。
サンプルとして、池袋から羽田までの空港リムジンバスの所要時間を開通前後で比較する。新宿線開通前(2005年)は池袋から平均50分(ばらつき32分)だったが、全線開通後(2023年)は平均34分とおよそ15分の所要時間短縮を実現。
※ばらつき:最短所要時間と最長所要時間の差
次に、新宿から羽田空港までの空港リムジンバスの所要時間を開通前後で比較する。品川線開通前(2013年)は新宿から平均32分(ばらつき27分)だったが、全線開通後(2023年)は平均20分(ばらつき10分)と、こちらもおよそ15分の所要時間短縮を果たした。
所要時間のばらつきも大幅に減少し、速達性だけでなく定時制も向上。羽田空港利用者の利便性を大きく向上させた。

羽田空港への所要時間短縮と時間信頼性の向上。中央線の全線開通で速達性と定時制が向上した。
また、中央環状線と並行する明治通り、山手通り、環七通りなどの幹線道路の交通量も減少し、渋滞緩和に貢献していることがわかった。
2. 沿線地域の経済に貢献
中央環状線(全線)の1都7県(茨城県・千葉県・埼玉県・東京都・神奈川県・山梨県・静岡県・愛知県)にもたらす経済効果(GRP変化額)は約8200億円/年となっており、大きな経済効果を生み出していることが明らかとなった。
※GRP(域内総生産):地域内の企業が1年間に生みだす利益(生産量から生産コストを除いたもの)、人々の所得や政府の税収の源泉のこと
その範囲は、中央環状線の沿線地域にとどまらず、川口線経由で接続する川口市、6号三郷線と常磐線経由で接続する野田市、アクアライン経由で接続する市原市などまで広がっている。

中央環状線沿線への経済波及効果。沿線だけでなく高速道路で接続する周辺の地域にも恩恵をもたらしている。
また、湾岸部に集積する石油化学工業や内陸部に集積する鉄鋼・非鉄金属などの経済に大きく貢献しており、重要な生産業を移動や輸送面から支えている。
3. 交通事故の減少とリダンダンシーの確保に貢献
中央環状線の開通効果は渋滞緩和だけではない。王子線開通前(2000年)から全線開通後(2023年)までの20年間で、追突・接触事故件数は約6割も減少。中央環状線の整備は首都高の安全性向上に大きく貢献したという。

中央環状線の交通安全への貢献。追突・接触事故件数が減少。
また、中央環状線内側の首都高路線で災害や工事の通行止めが発生した際も、中央環状線を利用して迂回するなど、リダンダンシー(代替路)として機能。
2023年7月1日の11号台場線の通行止め(事故のため)では、有明JCTから大橋JCTまで向かう多くの車両が中央環状線に迂回していた。
有明JCTから大橋JCTまでの交通量(11時~13時)を通常時と通行止時で比較してみると、都心環状線経由は412台から127台に減少、中央環状線経由は140台から307台に増加。リダンダンシー機能を十分に発揮することを証明した。

11号台場線通行止め時の有明JCTから大橋JCTまでの利用状況。通常時と比較すると都心環状線ではなく中央環状線を利用する車両が増えている。
このリダンダンシー機能は、首都高の補修工事を行う際にも発揮されている。今後、さらなる老朽化で補修工事が増えることになれば、中央環状線に迂回する動きが活発になると考えられる。
全線開通10周年を記念してイベントも実施

中央環状線のランドマーク「大橋ジャンクション」。ドーム内はループ状の道路で屋上は緑豊かな公園に整備されている。写真は編集部が撮影。
首都高速道路では、全線開通10周年にあたり、建設から現在までの歩みやその効果を広く知ってもらうとともに、これまでの感謝の気持ちを伝えるためのイベントを実施する。
【記念イベントなどの概要】
1.特設WEBサイトのオープン
(https://www.shutoko.jp/ss/c2-10th/)
期間:2025年1月24日(金)~2025年3月31日(月)
2.特設展示スペースの設置
期間:2025年3月1日(土)~3月4日(火)
会場:PickUpランキン渋谷ちかみち(入場料は無料)
3.大橋ジャンクション探検ツアー
日時:2025年3月8日(土)16時30分~18時 ・ 3月9日(日)16時30分~18時
会場:首都高速道路 大橋ジャンクション(参加費は無料)
応募:特設WEBサイトで受付
4.大橋ジャンクションにおける光の演出
期間:2025年3月8日(土)18時~19時 ・ 3月9日(日)18時~19時
場所:首都高速道路 大橋ジャンクション
イベントの詳細や注意事項は特設サイトにて確認してもらいたい。
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