和歌山~伊勢を結ぶ!? 紀伊半島の新東西ルート「東海南海連絡道」とは。将来は「大分~浜松」の広域道路に【いま気になる道路計画】
紀伊半島中央部で、東西をつなぐ高規格道路「東海南海連絡道」が構想されている。将来的には全国レベルの道路ネットワークにもつながるこの路線について、その概要や整備によるメリット、現在の検討状況を見ていこう。
この記事をシェア
「東海南海連絡道」で和歌山と伊勢を結ぶ
東海南海連絡道の概要
近畿地方南部に広がる紀伊半島は、大阪・和歌山・奈良・三重の4府県にまたがる広大な地域だ。大阪市から最南端の潮岬までは、直線距離で約140kmに達する。
一方、紀伊半島は広大な紀伊山地に阻まれ、広域的な道路ネットワークの整備が進んでいない。現在も紀伊半島中央部を東西に横断する高規格道路は存在していない。
そうしたなか、和歌山と伊勢を東西に結ぶ高規格道路として構想されているのが「東海南海連絡道」だ。
五條・吉野~伊勢方面には2本の国道があるが、いずれも長い山岳地帯を抜ける
「東海南海連絡道」は、2021年に策定された「新広域道路交通計画」において、構想路線として位置付けられた道路だ。
西側では、「京奈和自動車道」の和歌山市~五條市間が2017年に全線開通している。東海南海連絡道は、五條市からさらに東へ延び、奈良県の大淀町、吉野町、東吉野村、御杖村を経て三重県に入り、松阪市(飯高・飯南)、津市(美杉)、多気町などを経由して、「勢和多気IC」周辺で伊勢自動車道に接続する構想だ。
吉野神宮エリアにとっては、初めて高規格道路ネットワークを通じて全国と直結することになる。東海南海連絡道が整備されれば、生活交通と分離された直線的で信号のない高規格道路によって、国道169号などの渋滞区間を回避できる可能性があり、観光周遊や物流の定時性向上にも期待がかかる。
一方、吉野から三重県方面へは、国道369号と国道166号が通じている。国道369号では栂坂トンネル(1827m)、国道166号では高見トンネル(2470m)などが整備され、山岳区間をショートカットしているものの、大半は山岳道路であるため、物流ルートとしては課題が残る。
東海南海連絡道が実現すれば、関西国際空港~吉野~伊勢を結ぶインバウンド観光の周遊ルート形成にも寄与する。大阪湾沿岸から内陸部の工業地域を経て伊勢湾へ至る海陸物流の連携強化にもつながりそうだ。さらに、近年激甚化する自然災害に対して、紀伊半島を東西に結ぶ広域的な緊急輸送ルートとしても重要な役割を担うことが期待される。
九州~紀伊半島~東海を直結する「壮大な構想」とは
国が21世紀の長期目標に掲げた「太平洋新国土軸」(太平洋新国土軸構想推進協議会HPより)
東海南海連絡道は、単なる「紀伊半島横断ルート」にとどまらない。国が掲げる長期的な国土政策の一環として、九州~四国~紀伊半島~東海地方を結ぶ新たなネットワーク「太平洋新国土軸」を構成するルートの一つとしても期待されている。
太平洋新国土軸は、1998年に国が策定した全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」で打ち出された構想だ。
これまで日本では、「太平洋ベルト」に経済活動が集中し、それに伴ってインフラ整備も特定の地域に偏っていた。そのため、主要な交通網が分断された場合、日本全体に影響が波及するリスクも指摘されてきた。また、東京一極集中から、各地域が自立・分散して連携する都市構造への転換も求められてきた。こうした背景から、国土の均衡ある発展を目指して構想されたのが「新たな国土軸」だ。
具体的には、大分~愛媛を結ぶ「豊予海峡ルート」、淡路島~和歌山を結ぶ「紀淡海峡ルート」、伊勢市~渥美半島を結ぶ「伊勢湾口横断ルート」などのルートを道路や交通ネットワークでつなぎ、広域的な連携を図る構想だ。その基盤となる考え方が太平洋新国土軸である。
東海南海連絡道は、このネットワークの中で紀伊半島を東西に横断し、将来的に大分~浜松を高規格道路ネットワークで結ぶ、構想上の一翼になると考えられる。
太平洋新国土軸は、先述のとおり「21世紀の日本をどうしていくか」という長期的な国土政策のコンセプトとして打ち出されたものだ。構想策定から約30年が経過した現在も、その考え方は引き継がれている。2023年に策定された「国土形成計画(全国計画)」でも、広域圏相互の連結強化を図る「全国的な回廊ネットワーク」の整備について、「国土軸の構想とも重ねていくこととする」と明記されている。
現状は厳しい? 東海南海連絡道の「現実」
昭和時代に整備方針が決定された高規格道路計画網。
では現在、実現に向けてどのような動きがあるのだろうか。残念ながら、現時点で具体的な事業化に向けた動きは確認できず、機運醸成に向けた活動も停滞している。
かつては「東海南海連絡道建設推進期成同盟会」が国への要望活動の窓口となっていたが、2011年に実施された「三重県版事業仕分け」による予算廃止などを経て活動が停滞し、現在まで長期休止の状態が続いている。活動を再開するには構成員の過半数の賛成が必要とされており、まずは沿線自治体の機運を高めることが不可欠だ。
2025年の奈良県議会では、山下知事が「国の動向や沿線地域の機運に注視するとともに、活動再開について慎重に検討してまいりたい」と答弁している。現時点では実現に向けた具体的な動きは乏しいものの、構想そのものが完全に忘れ去られたわけではないことがうかがえる。
国の長期的な道路整備を考えても、昭和時代から続く高規格道路ネットワークの整備がいまだ完了していないなか、21世紀の長期目標として掲げられた「新たな国土軸」の整備に着手するのは、まだ先になるという見方もできるだろう。
日本海東北道や新東名・新名神、圏央道、山陰道、東九州道などの整備が進み、平成時代に構想された「新湾岸道路」なども具体化し始めている。こうした既存の高規格道路ネットワークの整備が一段落した先に、東海南海連絡道の計画が本格的に動き出す可能性もあるだろう。
まずは地元の機運が高まり、「東海南海連絡道建設推進期成同盟会」が活動を再開し、国への要望活動が再び始まることが第一歩となりそうだ。今後の動きを引き続き注視したい。
記事の画像ギャラリーを見る




