なぜポルシェ911は“最新こそ最良”と言われるのか?——河村康彦の「ポルシェは凄い!」♯13
いつの時代もスポーツカーファンから一目置かれているブランドと言っていいポルシェ。ではポルシェのいったい何が凄いのか。ポルシェ愛好家のモータージャーナリスト河村康彦の連載コラム、13回目は時代に合わせて重ねてきた911の進化ぶりにフォーカス!
この記事をシェア
911はポルシェブランドの“顔”
ポルシェというブランドを代表する“顔”が「911」であることに、異論を挟もうという人はまずいないはず。
現在では様々な種類のモデルをラインナップするポルシェ社。だが、そのなかにあっても、このブランドの初のモデルである「356」の流れを受け継いで1964年に初代モデルがデビューを果たして以来、途切れることなく現在へと続く2ドアスポーツカーである911のライフの長さはすでに60年以上と圧倒的。当然その知名度もすこぶる高く、“ポルシェ”と耳にした場合に、ほとんどの人々の脳裏にまず浮かぶ姿はおそらくこのモデルと言っても決して過言にはあたらないだろう。
カイエンやパナメーラ、そしてマカンといった2000年以降に投入された4ドアの新たなカテゴリーに属するモデルたちが、いずれもデビュー早々にしてたちまち成功を収めることができたのも、911が長年にわたって築き上げたブランド力があってこそなのだと考えられる。世の中には星の数ほどの自動車メーカーが存在するものの、単一のモデルがここまで大きな知名度をキープし続けている例は大変に珍しいできごとなのではないだろうか。
こうして、911というひとつのモデルがかくも長い間その名声を保ち続けられる理由。そこでは、ボディ最後端の低い位置に水平対向6気筒という特徴的なエンジンをマウントし、峰を立てたフロントフェンダーの前端にヘッドライトを配した“猫背型”2ドアボディを採用するといった、他に類を見ないパッケージング/デザイン上の特徴がまず挙げられるに違いない。
確かに911に採用されている技術的な特徴は、そのいずれもが強烈な独創性に満ちている。
けれども、そうした見どころとともに911が多くの人々から常に憧れの対象として崇められる存在に立ち続けているのは、今や911のキーアイテムへと昇華されたそうしたエレメントには世代が変わっても手をつけられることがなかった一方で、そこに秘められた絶対的な走りのポテンシャルそのものが、いつの時代のいつのモデルであっても常に超一級のスポーツカーに相応しい水準にあったということを見逃すわけにはいかないはずだ。
時代に合わせて常に新たな魅力を提案
ポルシェ911歴代モデル|Porsche 911 historical models
世の中の情勢が大きく変わり、各マーケットに課される規制や規格が絶え間なく見直されるなかにあっても、歴代の911はそれに即座に対応し、単にそうした事柄を乗り越えるだけでなくむしろそうしたハードルを糧として常に新たな魅力を世の中に提案し、新しい時代の911を提供し続けてきた。
例えば、世の中に先駆けてターボチャージャーをアドオンしたエンジンにトライした930世代(2代目)。4輪駆動のシャシーやシーケンシャルAT「ティプトロニック」を新たにリリースした964世代(3代目)。厳しさを増す一方の環境問題などに抜本的な対応を図るため伝統の空冷方式を水冷方式へと改めたエンジン搭載を敢行した996世代(5代目)。現在へと続くエンジンの直噴システムやデュアルクラッチ式トランスミッション「PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)」の搭載を実現させた997世代(6代目)。そして、ボディの多くの部分にアルミ素材を採用する軽量構造を決断した991世代(7代目)……等々と、技術的に主だったトピックだけを拾い上げても枚挙に暇がない。
さらに重要なのは、それらが単なるギミックとしてのトライに留まることなく実際の走りのブラッシュアップへと帰結し、その後の様々なメーカーのスポーツカーたちにまで影響を及ぼして、時にのちのち不可欠とされる新たなアイテムへと昇華されていくのも稀ではなかったことは、史実が証明するできごとにもなっている。
こうして時代の要請に先駆けた様々な新技術が絶え間なく開発され、それらを採用し続けてきたことで、長い歴史の持ち主でありながらも決して陳腐化することなく、むしろ一級スポーツカーの先頭を走り続けてきたのがポルシェ911というモデル。
そうした様々なヒストリーこそが、ポルシェというメーカーが“頭脳者集団”に例えられ、911には「最新こそ最良」という異名が与えられるに至っている大きな原動力であるに違いない。
記事の画像ギャラリーを見る



