2019年交通事故死者数は過去最少3215人。高齢者が5割以上。
警察庁は、2019年の交通事故死者数に関する統計資料を発表した。それによると、2019年の死者数は3215人。2018年の3532人と比較すると317人減少した。一方、高齢者の死者数は減少しているものの、全体の5割以上を占めている。
2019年の交通事故死者数は統計以来最少!
警察庁が発表した統計によると、2019年の全国の交通事故死者数は3215人。交通事故死者数の統計が残る1948~2019年の間で、最も死者数が少なくなった。2018年と比較すると317人減少で、2016年から4年連続で4000人を下回っている。
2019年の交通事故発生件数は38万1002件で前年より4万9599件減少。負傷者数は46万715人で、6万5131人減少している。
また、交通事故死者数を人口10万人当たりで見ると、2019年の死者数は2.54人で、0.25人減少しており、4年連続の減少である。
交通事故死者数の推移(1948~2019年)
ここで統計が残っている1948年から今日に至るまでの交通事故死者数の推移を振り返ってみよう。
交通事故死者数がピークに達したのは、1970年の1万6765人。この前後数年は「第一次交通戦争」といわれている。その後、1度減少した交通事故死者数が再び上昇し、1万人を超える1988年からの数年は「第二次交通戦争」と言われている。
警察庁(※1)によると、第一次交通戦争のころは、運転免許保有者数や自動車保有台数の増加、高速道路等の道路整備の進展等により自動車の走行キロ数が大幅に増加した時期である。一方で、信号機や歩道等の交通安全設備等の整備が不十分だったため、自動車の重大事故、歩行者衝突事故による死者が多かったという。
第二次交通戦争のころは、運転免許保有者数や自転車保有台数の増加等により、自動車の走行キロ数が引き続き増加。第二次ベビーブーム世代(昭和46年~49年生まれ)が運転免許取得年齢に達し、運転技能が十分ではない若者の運転者が急増したため、自動車乗車中の死者が多かったという。
その後、法整備や道路環境整備が進み、自動車技術の進歩(エアバッグ、ABS、車体構造の革新的進歩など)、救急救命技術の進歩などもあって死者数は4000人を下回るまで減少している。
しかし、内閣府発表の第10次交通安全基本計画では、2020年までに交通事故死者数を年間2500人以下にするとしている。この目標を達成するにはあと1年で交通事故死者数を約23%減少させる必要があり、このままでは達成が厳しい状況と言わざるを得ない。交通事故死者数を減少させるための課題はどこにあるのだろうか。
※1「平成29年における交通死亡事故の特徴等について 」警察庁交通局発行
交通事故死者数の半数は高齢者
交通事故死者数の推移を高齢者(65歳以上)と全年齢に分けて見てみよう。
2009~2019年において高齢者の交通事故死者数は減少し続けていて、2018年の1966人から184人減少し、2019年は1782人となっている。しかし、全年齢の推移と比較すると、その減少スピードは緩やかである。
また、全年齢に占める高齢者(65歳以上)の割合は55.4%。過去最多だった2018年の55.7%より0.3ポイント減少したものの、実に交通事故死者の5割以上は高齢者であることが分かる。
人口10万人当たりで見てみても、高齢者の死者数は5.01人。全年齢の2.54人と比較すると約2倍となっている。つまり、交通事故死者数を減少させるためには、高齢者の死者数を減少させることが必須なのだ。
高齢者の交通事故死者数を減少させるには
近年問題となっているペダル踏み間違いによる事故など、高齢者が死亡事故を起こしやすい背景もある。しかし実は、高齢者の状態別死者数は、自動車乗車中よりも歩行中の死亡事故の方が多い。
つまり、高齢者が交通事故で死亡することを防ぐためには、先進安全自動車などの技術面の進歩で運転者をサポートすることと同時に、バリアフリー化された道路環境の形成で歩行者保護を推進することが必要である。もちろん、ドライバーがより歩行者保護、特に高齢者保護を意識する必要もあるだろう。信号のない横断歩道で、歩行者がいても止まらないドライバーが大多数の現状を考えると、まだまだドライバーができることもありそうだ。
本年の交通事故死者数を2500人にとどめるためには、人、クルマ、道路のすべてで交通安全をさらに進化させる必要がある。