今年は自転車誕生 200周年。 その発祥を写真で 振り返る。
みなさんは今年が自転車の発明から200年目だとご存知だろうか?
ドイツ人発明家カール・ドライスが自転車の原点といわれる「ドライジーネ」という名の乗り物を発明したのが、1817年。
ドライスが初めてドライジーネを試乗してみせたドイツ・マンハイムでは、今年、自転車200周年を記念する特別展や様々なイベントが開催され、街中が自転車一色に染まっている。
エジソンが電球を発明した時のように、人類史の偉大な発明には様々なエピソードが隠されている。記録写真を通して、自転車の発明と現在ヨーロッパで人気の電気自転車について振り返りたい。
1896年のポスター。© picture alliance / Heritage-Images
発明のきっかけ
19世紀のヨーロッパは、産業革命による工業化とそれに伴う都市化など社会構造の変革が起こった時代である。
しかし、ナポレオンやマリーアントワネットの生家ハプスブルク帝国の興亡など歴史映画などで見られるように、当時のヨーロッパの主要交通・運輸手段は馬であった。
1812年、穀物の不作により馬の飼料が高騰したことをきっかけに、カール・ドライスは馬より費用の安い交通手段を模索しはじめた。
蒸気機関車は発明から40年間が経っていたが、まだまだ高価で、日常の移動手段としては適していなかった。そこで、考案されたのが人間の足を使った交通手段ドライジーネであった。
カール・ドライスが試運転するドライジーネ。©picture alliance / Quagga Illustrations
ドライジーネは、木製の乗り物で、前輪の向きを変えるハンドルと、同じ大きさの車輪2つを備えており、足で直接地面を蹴って走る乗り物だった。
当時のオリジナルを再現して作られたドライジーネのモデル。ドライジーネの重さは20kg。これは競技用自転車の重量に相当する。© Technoseum
馬車よりも早かった!
1817年、発明者ドライスは、観客の前で自らドライジーネにまたがって14kmを往復する試乗運転を行った。彼は時速15kmで疾走し、1時間以内に戻ってきたが、達成時間は郵便用馬車よりも早かったというから驚きだ。
また当時、馬一頭の値段が1,900プントだったのに比べ、ドライジーネは20プントと格安の価格だったという。
ドライスの画期的な発明は、瞬く間に世界に広がり、彼はドライジーネの発明に対して10年間の特許を与えられる。馬に変わる乗り物として、自転車が当時いかに将来の乗り物として期待されていたかが窺える。
自転車の誕生については、以下の動画を参照されたい。
改良の歴史
ドライスにはじまった自転車は、その後ヨーロッパ人の手により様々に改良されていく。
1861年フランス人ピエール・ミショーは、ペダルを直接前輪に取り付けた自転車を発売する。これは初めて工業製品として量産された自転車でもあった。
このミショー型をさらに進化させたのが、1870年頃に発売されたペニー・ファージング型自転車である。スピードを追求するために、前輪を巨大化させたこの自転車に多くのメーカーが追随し、中には直径が1.5mを超えるものまで出現したという。しかしこの自転車は重心位置が極端に高いため安定が悪く、転倒すれば高所より頭から落ちる危険な乗り物だった。
前輪が極端に大きいペニー・ファージング型の自転車と2人の紳士。1885年当時の写真。©picture-alliance/ ZB
1875年のペニー・ファージング型の自転車。前輪の上に装着されたサドルとハンドルが直結していてバランスを取るのが難しかったことが想像される。©dpa
1879年イギリス人ヘンリー・ジョン・ローソンによって後輪をチェーンで駆動する現在の自転車に近いものが製作された。これはビジクレットと呼ばれ、英語のBicycleの元となるのである。
珍しい3人乗りのチェーン駆動自転車。1895年のフランスの写真。©picture alliance / Lux-in-Fine/Leemage
当時の時代性を映す自転車の写真と、自転車製造メーカーの広告写真をご覧いただきたい。
©picture alliance / dpa-Zentralbild
ベルリンでキャビアの宅配サービスに使われていた1920年当時の写真。自転車に「Russ & Co」という宣伝が取り付けられ、カゴにはキャビアが山盛りに入れられている。
©picture alliance / Heritage Images
三輪自転車にカメラの装置を搭載した、1888年の写真家の様子を伝える貴重なイラスト。
©picture alliance/dpaZentralbild
自転車を修理する男性の元で、女性が灯りを手に持っているほのぼのとする様子。約1915年の写真。
自転車が量産され民衆に広がると、製造メーカーにより自転車の広告が出回るようになる。
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DELINというベルギーの自転車・自動車製造会社の1898年のポスター。自転車に跨るスポーティな女性の姿は、淑女の時代としては画期的だったという。
©picture alliance / Heritage-Images
イギリスのバーミングハムに拠点を置く会社による1898~1899年の広告。ロートレックのタッチのようなイラストでサイクリングの楽しさを表現している。
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南ドイツNeckarsuler社の1905年のポスター。モーターエンジン装備と風光明媚な場所を巡るサイクリングが当時の市民の憧れだったそうだ。
時代は一気に現代に戻るが、現在ヨーロッパで需要が伸びているのは、電気自転車(電動アシスト自転車)である。
これについては、またいつか紹介したいと思うが、その片鱗を伝えるユニークな写真で幕を閉じたい。
©picture alliance / dpa
オランダの王ウィレム=アレクサンダーも、自国の電気自転車メーカーの発表会に自ら試乗して製品をアピール。
©dpa
スペイン・マドリッド中央駅にずらりと並んだ充電中のレンタル電気自転車。ヨーロッパの主要都市では、電気自転車のレンタルサービス設備が整っている。観光に最適な交通手段だ。
©picture alliance / dpa
ドイツ郵政省では数年前から郵便物の配達を電気自転車で行っている。
©picture alliance / dpa
今年発表された最新の郵便配達用電気自動車。駆動力と走行距離、充電時間などが改良された。
2017年5月25日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)