熊本~大分を最短で結ぶ!「中九州横断道路」全線事業化まであとわずか。「滝室坂トンネル」約5kmもまもなく開通【いま気になる道路計画】
熊本と大分を結ぶ、九州の新たな東西軸「中九州横断道路」の整備が本格化している。最大の難所とされる、全長約5kmのトンネルも2026年度に開通予定だ。計画の概要や整備によるメリット、現在の進捗状況を見ていこう。
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「中九州横断道路」は熊本~大分の高速ルート
中九州横断道路の概要。
広大な九州地方は、中央部を南北に連なる山地によって東西に分断されており、熊本側と大分・宮崎側を結ぶ道路ネットワークは十分に発達しているとは言い難い。
そうしたなか、熊本市と大分市を直結する、延長約120kmの高規格道路「中九州横断道路」の整備が進められている。
各工区でルート決定や事業化・着工・開通が段階的に進展しており、現在では、ほぼ全区間で事業化のめどが立ちつつある。
中九州横断道路は大きく分けて2エリアで開通済み。
「中九州横断道路」は、熊本市から東へ延び、阿蘇・竹田・豊後大野を経て大分市へ至るルートで計画されている。
古くからこの地域は、江戸時代の「豊後街道」として熊本と大分を結び、さらに海路を通じて近畿方面へ向かう主要ルートとなっていた。現在もJR豊肥本線が熊本駅~大分駅を結んでおり、阿蘇の高原地帯へ向かう立野付近では「連続スイッチバック」で一気に標高を上げる区間が車窓の見どころとなっている。
一方で、物流需要の拡大などにより、従来の国道57号では渋滞や生活交通との混在、移動速度の低下、交通事故の多発、災害時の通行止めリスクといった課題が顕在化している。こうした背景から、全国的な高規格道路整備の流れのなかで、熊本~大分を結ぶ「中九州横断道路」は、地域高規格道路として位置づけられ、1994年には計画路線へ格上げされた。
全線が開通した場合~全国でも注目度の高い道路計画のひとつとなっている。この計画では全線が2車線で整備される予定で、現在は大きく分けて2エリアが開通済み。未事業化区間も残り2区間のみとなっている。
それでは現在の進捗状況を、工区ごとに見ていこう(未開通区間の施設名はいずれも仮称)。
熊本県側は大部分が事業化済み。空港アクセスに利便性向上も
熊本県側では3区間が事業中だ。
●熊本環状連絡道路【事業中】下硯川~熊本北JCT
2025年に事業化された区間で、九州道から西側へ回り込むルートとなる。「熊本西環状道路」へ直結し、熊本駅西側エリアまでの“信号ゼロ”移動を実現する計画だ。
熊本西環状道路は、全長約12kmのうち6割超がすでに開通済み。残る課題は、九州道と接続する本工区の整備だ。
●大津熊本道路【事業中】
2022年に全線が事業化された区間で、熊本北JCTから西合志IC・合志ICを経て、大津西ICまでを結ぶ延長13.8kmのルートだ。熊本空港アクセス道路とも接続し、熊本市中心部方面から空港までの移動時間短縮が期待されている。
周辺では、半導体受託製造でトップシェアを誇る台湾企業「TSMC」の進出に加え、「ホンダ」をはじめとした工場集積地が広がっている。このため本区間は、製品の国内輸送や海外輸出を支える重要な物流ルートとしても注目される。
2025年12月にはいよいよ着工を迎え、現地での工事が本格的に始動した。
●大津道路【事業中】
2024年に事業化された区間で、大津ICまでを結ぶ延長4.8kmのルートだ。次の開通済み区間へ接続する役割を担い、中九州横断道路の連続性向上に寄与する。
●北側復旧道路【開通済み】
2020年に開通した区間で、2016年の熊本地震により大きな被害を受けた国道57号の代替ルートとして、緊急的に整備された先行バイパスだ。
JR豊肥本線や国道57号現道とは異なり、北側を短絡する新ルートを採用しており、全長3659mの「二重峠トンネル」によって山岳地帯を一気に通過し、阿蘇市中心部方面へ到達する。
2016年4月の地震で国道57号が長期間不通となったことを受け、同年6月には北側復旧道路の新設が決定。避難坑を土砂搬出に活用しながら、異例となる5か所同時掘削を行うなど、徹底したスピード施工が進められ、わずか4年で完成した。
●阿蘇~滝室坂【未事業化】
中九州横断道路で残る2つの未事業化区間のひとつで、現時点では最初のステップである「計画段階評価」も始まっていない。全体のなかで最も進捗が遅れている区間だ。
阿蘇市中心部を抱えるカルデラ盆地を通過する区間で、延長は約13km。九州地方整備局の2026年度予算概要でも具体的な調査推進への言及はなく、計画段階評価の開始にはなお時間を要する可能性が高い。
大分県側でも「東九州道直結」に向けて事業化準備中
滝室坂道路の断面図。急勾配をトンネルで一気に通過する。
●滝室坂道路【2026年度開通予定】
2013年に事業化された区間で、未開通区間のなかでは最も古くから事業が続いている。
現道は、阿蘇市中心部から大分県境方面へ向かって連続カーブで一気に標高を上げる区間となっており、国道57号で最大の難所とされる。
これに対し新バイパスは、全長4834mの「滝室坂トンネル」で山岳地帯を一気に貫通する計画だ。無料道路のトンネルとしては熊本県内最長となる見込みで、ほぼ一直線のルートで標高差約200mを一気に上り、道の駅波野付近へ到達する。従来の連続カーブ区間を大幅に短絡するルートとして期待されている。
トンネルは2018年に着工し、2023年に貫通。現在は内部コンクリート施工などが進められており、事業の進展を受けて「2026年度開通予定」と公表された。中九州横断道路のなかでも、特に注目度の高い工区となっている。
●竹田阿蘇道路【事業中】
2019年に事業化された延長22.5kmの区間で、萩IC・竹田西IC・竹田久住ICを経て、竹田ICへ至る。
比較的平坦な高原地帯を通過するため、大規模トンネルは少なく、用地取得や文化財調査が進めば工事も比較的スムーズに進展するとみられている。
2022年に着工しており、現在は、竹田久住~竹田を中心に工事が進み、竹田IC周辺ではボックスカルバートなどの構造物も姿を見せ始めている。
●竹田IC~犬飼IC【開通済み】
大分県側では、東側から順に犬飼千歳道路が2007年、千歳大野道路が2008年、大野竹田道路が2019年に開通しており、現在は約25kmが連続して供用されている。
中九州横断道路のなかでは、最もまとまった開通区間となっている。
●犬飼~大分【まもなく事業化】
大分市内で東九州自動車道へ接続する、残る約18kmの区間だ。2023年に概略ルートが決定し、現在は都市計画決定や環境アセスメントの手続きが進められている。
環境アセスメントは一般的に「配慮書→方法書→準備書→評価書」というプロセスで進行する。本区間では2024年に方法書が公表されており、現在は本調査を経て準備書の取りまとめを待つ段階にある。早ければ2027年春にも事業化される可能性がある。
熊本と大分を最短ルートで結ぶ「中九州横断道路」は、長年“点”で整備されてきた各工区が、いよいよ“線”としてつながり始める段階へ入ってきた。残る未事業化区間がいつ事業化されるのか、引き続き動向に注目していきたい。
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