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最終更新日:2025.03.07 公開日:2025.03.07

スズキ「スイフトスポーツ」を買うなら今? 6割のユーザーが選ぶ“MT”人気の理由とは【試乗レビュー】

スイフトスポーツ最終モデル「ファイナルエディション」の発売を3月16日に控える中、モデル末期の現行スイフトスポーツが気になる! なぜこのクルマの購入者の6割はMT車を選び、今なお支持されているのか? 自動車ジャーナリストの山崎 明が試乗し、人気の理由を探る。購入を決断するなら今か!?

文と写真=山崎 明

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今回試乗したのはファイナルエディションではなく、現行のスイフトスポーツ(6MT)。ボディカラーはチャンピオンイエロー4。

驚異的なMT所有率のスイフトスポーツ

2024年夏、新型スズキ・スイフトを試乗してその乗り味に感銘を受け、KURU KURAでスイフトが日本の若者や海外市場で人気の理由を書いた。そのときの試乗車はマニュアル・トランスミッション(MT)で、日本の購入者のおよそ1割がMTということだった。

しかしスイフトの高性能版たるスイフトスポーツでは6割のユーザーがMTを選んでいるという。日本全体のMT比率は1~2%なので、この数字は驚異的である。しかも標準のスイフト以上に若年層のユーザーが多いそうだ。先日、知人の大学生の息子さんが中古のスイフトスポーツのMT車を購入したという知らせもあった。

スイフトスポーツはまだモデルチェンジは行われておらず、旧型スイフトベースのZC33S型が販売されている。最終モデルであるファイナルエディションが3月16日に発売され、2025年11月まで生産される予定だ。つまり現行スイフトスポーツはモデル末期も末期なのである。しかしながら、モデル末期でも人気のスイフトスポーツのMT、とても気になる存在でどうしても試乗してみたくなったのだ。

マフラーは左右2本出し。タイヤは195/45R17サイズのコンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5を装備している。

スイフトスポーツはもちろんスイフトをベースとしているが、いろいろなところに手が入っている。まず、エンジンは1400ccのターボエンジンである。新型スイフトは1200ccのNAで82馬力、最大トルクは108Nmである。それに対し、スイフトスポーツは140馬力、最大トルク230Nmである。馬力の違いも大きいが、最大トルクが倍以上あり、しかもその発生回転数が低い(新型スイフトは4500rpm、スイフトスポーツは2500~3500rpm)ので走行性能の差は相当大きいはずだ。230Nmというのは、トヨタGR86の250Nmにも迫る数字である。

これだけパワーが違うので、足回りも強化されている。ショックアブソーバーにはモンロー製が採用され、タイヤは17インチのコンチネンタルのスポーツコンタクト5を装備。モンローは100年以上の歴史のあるアメリカのブランドで、メルセデス・ベンツやアウディも純正採用している。スポーツコンタクト5はポルシェの他、トヨタ・スープラやBMW Z4といった高性能スポーツカーにも採用されているタイヤである。

シートもしっかりとした作りのスポーツシートが装備されている。スイフトスポーツはこのようなパーツが標準で使われていながら、216万4800円で買えてしまうのである。軽自動車のホットハッチと言えるホンダ N-ONEのMTモデルは216万400円で、なんとほぼ同額。素晴らしいコストパフォーマンスだ。スイフトスポーツが売れることは全く不思議ではない。

さらに、スイフトスポーツには他車にはない大きな魅力がある。なんと車両重量が970kgしかないのである。これはマツダ・ロードスターの最軽量グレードより40kgも軽いのだ。同じく1400ccのターボエンジンを積み、サイズはやや小さいアバルト F595は1120kgもある。スイフトスポーツより150kgも重いのだ。

インテリアでは黒に赤のグラデーションが入った装飾パネルがスポーティさを演出。本革巻きのステアリングホイールや、ヘッドレスト一体型のフロントシートが標準装備されている。

全域で頼れるトルクのおかげで走りが楽しい!

さて、実際に試乗してみてどうか。走り始めて最初に好感を持ったのは、クラッチが非常に扱いやすいことである。実は新型スイフトを試乗した時、クラッチのミートポイントがやや曖昧で、慣れるのに少々時間がかかった(特に坂道発進時)のだ。スイフトスポーツはミートポイントが明確で、最初からアイドリングスタートでスムーズに発進ができたのである。

また2000~3000rpmという普段多用する回転域でのトルクが豊富で、非常に運転しやすい。普通の流れに乗るだけなら、60km/h以上であれば6速に入れっぱなしで全く問題ない。箱根のワインディングロードでも、3速で十分以上の加速が得られる。これだけ走りに余裕があると、飛ばしていない時でもゆとりを持って運転することができ、乗り心地も悪くないので何だか1クラス上のクルマに乗っているようにも思えてしまう。

操縦性も良く、路面からのインフォメーションも十分あるし、ステアリングも正確だ。ブレーキもスポーツモデルとして文句のない出来である。またAピラーが他社より立ち気味のため視界も良好で、ワインディングロードを走りやすい。

スイフトスポーツのMT操作を楽しむ筆者の息子(20代)。

燃費もハイブリッドなしのガソリンターボエンジン車としては良好で、新橋から高速で箱根まで行き、ワインディングを楽しんでから藤沢の自宅までというルートで17.8km/Lだった。ハイオク指定なのでその分はお金がかかるが、山道を楽しんだうえでの燃費なので十分経済的といってよいと思う。

これだけ運転が楽かつ面白くて、リアシートや荷室にも実用上十分なスペースがあるにもかかわらず、全長は3890mmとコンパクト。取り回しも容易で燃費も良好。つまり1台でスポーツドライビングも含めたいろいろな用途に使うと考えた場合、スイフトスポーツは理想的な1台と言える。

特にMTの存在と価格も考慮した場合、これは唯一無二な選択肢で、運転を楽しみたい若者にウケるのは当然である。私の20代後半の息子もスイフトスポーツを運転して虜になったようで、購入の最有力候補になったようである。

新橋~箱根~藤沢というルートでの燃費データ。平均燃費は17.8km/Lと、ほぼ諸元値通りの結果に。

新型が値上がりなら現行モデル購入もあり!

問題は現行のZC33S型を選ぶか、新型を待つかということだ。

新型に関してはスズキからのアナウンスは今のところ全くないが、マイルドハイブリッドとなるのでは、という噂がある。現行モデルでも、ヨーロッパ仕様は既にマイルドハイブリッドとなっている。リチウムイオン電池と13馬力を発生するISG(インテグレート・スターター・ジェネレーター)を組み合わせた48Vシステムである。新型は日本仕様もこのシステムを搭載してくる可能性が高いだろう。

となると、走行性能も燃費も現行モデルを凌ぐことになるだろうが、重量はやや重くなることが懸念される(マイルドハイブリッドの欧州仕様はそれ以前のモデルより燃費を16%改善しているが、日本仕様より55kg重い)。

こちらは3月16日に発売され、2025年11月まで生産される予定の「スイフトスポーツ ZC33S ファイナルエディション」。6MTの価格は232万9800円。写真=スズキ

最大の問題は価格だ。新型スイフトは安全装備の充実などにより旧モデルより価格が上昇している。スイフトスポーツはそれに加えマイルドハイブリッド化されると仮定すると、価格は現行よりかなり高くならざるを得ないだろう。新車を買う場合、安価に購入でき軽量な現行型ファイナルエディションを選ぶか、高くなってもより良くなると思われる新型を待つか。これは悩ましい問題である。

ただし、ファイナルエディションの人気は凄まじく、発売前にもかかわらず既に完売しているディーラーもあるようだ。現行型を選ぶ場合は急いだ方が良いかもしれない。

ところで、スイフトスポーツのイギリスでの価格は2万4,270ポンド、日本円で約459万円である。これはMINIのベースモデルやルノー・ルーテシア E-TECHハイブリッドなどより高い価格設定だ。それでも現地では高く評価されている。日本人はとても恵まれているのである。

SPECIFICATIONS
スズキ スイフトスポーツ|Suzuki Swift Sport
ボディサイズ:全長3890×全幅1735×全高1500mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:970kg(※990kg)
総排気量:1371cc
エンジン:水冷4サイクル直列4気筒直噴ターボ
最高出力:103kW(140ps)/5500rpm
最大トルク:230Nm(23.4kgf-m)/2500-3500rpm
燃料消費率:17.6km/L(※16.6km/L)
駆動方式:FF
トランスミッション:6段MT(※6段AT)
価格:216万4800円(※223万6300円)
※はAT仕様車

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