あのバブルカー「イセッタ」がEVとして復活! 2018年より販売開始。
ヨーロッパでは、バブルカーとして熱烈な人気を誇る、かつてBMWが製造した「イセッタ」(1955~1962)。そのデザインを受け継いだEV(電気自動車)がヨーロッパのモーターショーで出展され話題になっている。
タマゴのような愛らしいデザイン「Microlino(マイクロリーノ)」は、イセッタのレトロデザインとEVの未来感の両方を兼ね備える。
マイクロリーノの原型となるイセッタは、元々はイタリアのイソ社が発売した「イソ・イセッタ」を、ドイツのBMW社がライセンスを取得し、市場に広め有名になった。2人乗りの小さいサイズに、丸みを帯びたユニークなデザインのイセッタは、ドイツでは毎年イセッタ・ファンが集うイベントが開かれるほど愛され続ける存在である。
イセッタは1955~1962年までしか製造されなかったが、約160,000台を販売する人気車となった。
冷蔵庫のように取っ手を回すとドアが開き、ハンドルはフロントに固定されているという斬新なデザイン、ベンチシートであること、背中にトランクを積めるリアキャリアがついていることなど、まるでおもちゃのような楽しい仕掛けもファンのハートを捉えて離さない。
映画の中では、ケーリー・グラントの乗用車としてイセッタが使われている(1959年)。ポップなデザインが当時の最新流行であったことが伺える。©BMW AG
1950年代の初めに大型車BMW501を15,000ドイツマルク(約1,020,000円)で販売したBMWは、販売不振により、経営が困窮した状況だった。イセッタのコンパクトさに目をつけた同社は、イソ社からライセンスを取得。1955年に1台2,580ドイツマルク(約176,000円)で販売され、1955~1962年の間に161,728台の販売を記録したという。庶民の足として親しまれたイセッタの成功は、BMWの苦しかった経営に大いに貢献した。
工場での生産風景。イセッタは、「オートバイと自動車の中間」という謳い文句で販売されていた。
当時の写真からは、イセッタが国民に愛されていた様子が伝わってくる。
©BMW AG
マイクロリーノは、イセッタのコンセプトやデザインをベースに現代のEVとして復活させたモデルである。まだ開発段階ではあるが、プロトタイプが今年のジュネーブ・モーターショーに出展されるやいなや、ビジターの間で話題になり、なんと一週間の内に500台の予約注文を取り付けた。製品化は2018年初めを予定しており、現在5月の段階で、すでに3,000人からの注文が殺到しているという。まるで、BMW時代のイセッタを彷彿させる盛況振りである。
見本市会場にて注目の的のマイクロリーノ
開発者のスイス人Wim Ouboter(左)とイタリア製造メーカーのErik Tazzari
ここでマイクロリーノ(プロトタイプ1)の性能を紹介しよう。
◆動力:15kW(20ps)の電気モーター
◆最高時速:90km/h
◆1回の充電で120kmの距離を走ることが可能
◆格納式10mケーブルを内蔵、家庭用コンセントで充電可能
◆充電時間:4時間
◆重量400kg(バッテリーを除く)
◆予定価格:12,000ユーロ(約1,479,000円、5月8日現在)
◆乗車人数:2人まで
◆分類:自動車ではなく、欧州のL7eという電動マイクロカーの規格に則した4輪車
マイクロリーノの人気の秘密は?
開発社であるスイスの「マイクロ・モビリティ・システム」は、現代の都市生活者の車の使われ方を徹底的に調査したという。
◆多くの人が車を1人で運転している
◆1日の平均走行距離は35Km
◆平均速度は40Km/h
以上の点に目をつけた同社は、実用性以外の機能を削ぎ落とした戦後のバブルカーに行き着く。レトロさを残したデザイン、クリーンなエネルギーであるエコロジカルさ、駐車スペースの見つけやすさ、バイクと車の中間にある価格など、都市で暮らす人が求めるこだわりを集結させた、手軽な雨の日の傘のような車。マイクロリーノの盛況は、こういった点にあるように思える。
2017年5月09日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)