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クルマ最終更新日:2018.01.14 公開日:2018.01.14

タイヤ交換のタイミング【菰田潔の、目から鱗のタイヤの話】

タイヤを新しいものに交換するタイミングはいつが良いのか。走行距離なのか、使用した年月なのか、どうなったら交換しなくてはいけないのか。今回は、誰もが気になるタイヤの寿命と交換時期について、自動車ジャーナリストの菰田潔氏が解説。

菰田潔

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タイヤを新しいものに交換するタイミングはいつが良いのか。走行距離なのか、使用した年月なのか、どうなったら交換しなくてはいけないのか。今回は、誰もが気になるタイヤの寿命と交換時期について、自動車ジャーナリストの菰田潔氏が解説。

タイヤの溝

 タイヤは走行すると徐々にすり減っていく。路面とタイヤがこすれながら走っているからだが、こすれないとグリップというタイヤの機能が発揮できないため、減っていくこと自体はしかたがない。走行距離は、ハイグリップのスポーツタイヤの場合は1万kmに達する前に摩耗してしまうケースもあるが、通常なら数万kmはもつはずだ。

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きれいに減っていてまだまだ使えそうだが、もう1・6mmのウエアインジケータ(スリップサイン)が出ているから車検も通らない。

 では溝がどこまで減ったら交換するのがよいのだろうか。多くのドライバーは車検が通らなくなる残溝1.6mmまでは安全に走れると思っているが、それは間違いだ。

 雨の日のハイドロプレーン現象は、タイヤが摩耗して溝が浅くなっていくほどに起こりやすくなる。だから走っている限り、昨日より今日、今日より明日の方が摩耗していくから、危険性は徐々に高くなるというわけだ。新品タイヤの溝深さは8mmから8.5mmくらいある(タイヤサイズにより異なる)が、五分山つまり残り4mmになったらもうそろそろ交換時期と考えておいた方がいい。

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実際、どれくらい減ったら危ない?

実際、どれくらい減ったら危ない?

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五分山以下に摩耗しているが、それ以前にゴムのヒビ割れがひどく継続使用は危険。

 そして少なくとも残3mmになったら雨の高速道路は走らない方がいい。何本かある溝のどれか一つでもそこに達したらアウトである。晴れていればまだ走れるのにタイヤ交換するのはお金がかかるからしたくないと考えるかもしれない。だが、雨はいつ降るかわからないし、ゲリラ豪雨のような激しい雨では、高速でなくてもハイドロプレーン現象が起こる可能性はある。安全というかけがえのないものをお金で買っていると考えれば、そう高いものでもない。

 ちなみに、摩耗の仕方は走り方によって変化する。急加速、急ブレーキ、急ンドルで走っていればタイヤの擦れが激しいので減りも早い。

 メンテナンスも重要だ。2週間に1度の空気圧チェックをして車両指定空気圧で走行すれば、タイヤは一番長持ちする。

 タイヤにかかる重量によっても摩耗の仕方は変わる。同じ大きさならタイヤにかかる荷重が大きいと減りも早くなる。前輪駆動の場合には通常、前輪に60%、後輪に40%という荷重がかかるから前輪の減りが早い。さらにハンドルを切る、アクセルペダルを踏んで加速する、ブレーキペダルを踏んで減速するというときにも、前輪が果たす役目が大きいからさらに減りが早くなる。前輪が2万kmもたなくても後輪は8万km以上もつケースもある。

 このため前輪駆動車の場合は5000kmとか1万kmごとに前後のタイヤ位置を入れ替える「ローテーション」をすると、4本を比較的均等に減らすことができる。

 およそ1万km程度の走行では見た目はほぼ新品タイヤと変わらないかもしれないが、これはトレッドパターンという溝の模様が、ある程度の深さまでは同じになるようにデザインされているからだ。大体2万kmに達すると見た目のトレッドパターンも変わってくる。自分のタイヤの顔(トレッドパターン)はときどきチェックしておこう。

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走っていなくても劣化する?

走っていなくてもタイヤは劣化するの?

製造年

 年間走行距離が極端に少ないクルマは、走っていないから当然溝深さも減らない。だが、いつまでも使えると考えてはいけない。しっかりと溝が残っていてもゴムが劣化してグリップが落ちているから危険なケースもある。

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タイヤが硬くなり表面に無数のひび割れが見られる。溝の底にもひび割れができていて、劣化が進んでいることが分かる。こうなった場合、溝があっても使用しないこと。

 特に雨の日は危険だ。硬くなったゴムのグリップが低下するので、いつもより少し強めのブレーキでも、あるいはいつもより少しだけ速いスピードでカーブを曲がろうとしただけでツルーと滑ってしまう。特にマンホールや白いペイントで書かれた路面標示などでは滑りやすくなる。

 ここで気になるのが、タイヤを製造してからどれくらいの年数まで使えるのか、ということだと思う。昔は3年といわれていたが、今はゴムの品質改良により劣化がだいぶ遅くなった。20年くらい前から寿命は6年に伸び、最新のものは10年ももつようになっている。

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 タイヤがいつ作られたかを知らないとチェックすることができないが、世界中のタイヤがほとんど同じ方法で製造年月を表示しているから覚えておくといい。
タイヤのセリアルナンバーというものがタイヤのサイドウォール(タイヤ側面)の楕円の枠内に表示されている。この4桁の数字が製造週と年を表している。上の写真のように、2716と書かれていたら、2016年の第27週(つまり7月)に製造されたという意味になる。いくら溝が深くても製造年から10年経ったら使わない方がいい。

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保管方法も寿命に影響?

保管の仕方でタイヤの寿命が変わる?

 常時炎天下にさらされる状態ではゴムの劣化は早くなるから、タイヤ単体での保管の仕方も注意しなくてはならない。特に冬タイヤを夏に保管する場合には要注意だ。

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 公園に遊具として置いてあるタイヤが炎天下では温度が上がっていることでも想像がつくだろう。55℃で2週間だと1年分劣化し、65℃では1週間で2年分劣化するというデータがある。さらに75℃では4日で1年分劣化する。だから本来10年の寿命があっても、保管条件によってはその寿命が大きく縮まってしまうのだ。

 逆に25℃以下の日が差さないところにおいておけば、最新のタイヤは何年経ってもほとんど劣化しないこともわかっている。野菜倉庫のように冷涼で温度が一定で、かつ直射日光があたらない環境がタイヤにとっては快適な場所なのだ。トレッド面を爪の先で押し込んでみて、ゴムが硬いようなら劣化している証拠。10年経っていなくても使わない方がいいだろう。

 タイヤに傷がある場合には、溝があっても、新しいタイヤでも使わない方がいい。走っているからある程度の細かい傷はつくが、深い傷は注意が必要だ。
サイドウォールを傷めるのは、縁石に乗り上げたときのスピードが高かったときだ。リムと縁石の間にゴムが挟まってサイドウォールを切ってしまうことがある。すぐに空気が抜けない程度の傷でも中のカーカスと呼ばれる繊維が切れていたら走行中にバーストする危険性もある。タイヤ内の圧力でコブのように膨らんできたら危険な状態だ。

偏摩耗

 偏摩耗とはトレッド面が均一に減らないことをいう。外側だけが減ったり、内側だけが減ったりする。最近のクルマは安定性を高めるためにアライメント(サスペンション調整によって変わるタイヤの微妙な向きや角度)がネガティブキャンバー(ハの字)になっているので内側が先に減る傾向がある。

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右側は溝がまだあるのに左側は金属のベルトが見えるほど減っている。一見偏摩耗のようだが、正常な範囲の減り方。もちろん摩耗限界は超えている。最近はネガティブキャンバーによりこんな減り方が増えている。

 4輪または2輪がこの状態になるのは大きな問題ではないが、1輪だけが、内側だけか外側だけの摩耗の場合にはアライメントが狂っている可能性がある。このケースではタイヤを交換するだけでなくアライメント調整も必要になる。

2018年1月14日(モータージャーナリスト 菰田潔)

菰田潔(こもだきよし):モータージャーナリスト。1950年生まれ。 自動車レース、タイヤテストドライバーを経て、1984年から現職。日本自動車ジャーナリスト協会会長 / 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員 / 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)交通安全・環境委員会 委員 / 警察庁 運転免許課懇談会委員 / 国土交通省 道路局環境安全課 検討会 委員 / 一般社団法人 全国道路標識・表示業協会 理事 / NPO法人 ジャパン スマート ドライバー機構 副理事長 / BMW Driving Experienceチーフインストラクター / 運送会社など企業向けの実践的なエコドライブ講習、安全運転講習、教習所の教官の教育なども行う。

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