GT500、王者の強さは「速さ」の先にあった
開幕戦・岡山を終えた時点で、2026年シーズンのGT500クラスは「トヨタが一歩リード」という印象を残した。しかし、ゴールデンウィークの富士スピードウェイで開催された第2戦ではその評価が確かなものへと変わったのだった。
富士は岡山ではコースの性格が異なる。長いストレートを生かした最高速だけでなく、高速コーナーでの空力バランス、タイヤへの負荷、そして3時間という長丁場を見据えた戦略が求められる。予選で速さを見せることと決勝における強さは必ずしも一致しないのである。そのなかで改めて存在感を示したのが、36号車 au TOM’S GR Supraだった。
予選では14号車 ENEOS X PRIME GR Supraがポールポジションを獲得し、GR Supraのスピードを印象づけた。一方で、開幕戦の勝利で40kgのサクセスウェイトを積んだ36号車は突出した速さを見せたわけではなかった。しかし決勝がはじまるとレースの流れを読む力は他車を一歩上回っていた。
序盤から無理にトップを奪いにいくことはなく、自らのペースを維持しながらタイヤの状態を丁寧に管理。そしてライバルのピットインやトラフィックを見極めながら最適なタイミングで勝負に出る。スーパーGTでは1周ごとの速さよりも、数十周を通して無駄なく走り切ることが重要になる。その積み重ねが首位奪取につながった。
スーパーGTではGT300車両との混走も、レース展開を左右する重要な要素となる。周回遅れとの遭遇は避けられず、どの場所で追い付き、どのタイミングで抜くかで数秒単位の差が生まれる。36号車はそうした局面でも慌てることなく周囲の状況を整理し、最小限のロスで周回を重ねた。決して派手なオーバーテイクを繰り返したわけではないが、結果的にはその冷静さがレース全体を優位に進める要因となったのである。
ライバルたちの存在感
一方で、ライバル勢も確かな存在感を示している。14号車は予選で速さを見せ、そのまま優勝争いに加わった。23号車 MOTUL Niterra Zも終始安定したペースを見せ、表彰台を獲得。日産陣営は決勝を通して大きく崩れることが少なく、マシーンの熟成が着実に進んでいることを印象づけた。
ホンダ勢にとっては、新型PRELUDE GTの2戦目。今回の富士では予選で全車が上位進出を果たすなど、開幕戦よりも一歩前進した姿を見せている。決勝では優勝争いに加わるまでには至らなかったが、高速域での安定性やロングラン性能には改善が見られ、開発が着実に進んでいることを感じさせた。シーズンが進み、セットアップやタイヤとのマッチングが深まれば、表彰台争いの常連となる可能性は十分にあるだろう。
また、今季のGT500では各メーカーが最後の“タイヤ戦争”を戦っている点も見逃せない。同じ車種であっても装着するタイヤ・ブランドの違いによってレースペースは大きく変わる。富士のようにロングラン性能が問われるレースでは、その差がより顕著に表れる。マシーン性能だけで勢力図を語れないのは、スーパーGTならではの面白さでもある。
2戦を終えた現時点で言えるのは、トヨタ勢が依然として強いということ。そして、主役というべき36号車のパフォーマンスは、単純な車両性能だけでは説明できないものであること。ドライバー、エンジニア、ピットクルーがそれぞれの役割を高い精度で果たし、レース全体をひとつの流れとして組み立てる総合力が、連勝につながっているのだろう。
岡山でレース巧者ぶりを見せた36号車だが、その印象は富士を終えたことでより確かなものになった。ただ速いから勝つのではない。状況を読み、戦略を瞬時に組み直し、最後に結果を手繰り寄せる。その総合力こそが、2026年シーズン序盤のGT500クラスで最も際立っている部分といえるだろう。
| SUPER GT 2026 Rd.2 FUJI | |||||||
| GT500 CLASS – FINAL RESULT | |||||||
| Pos | No. | Car | Drivers | Laps | Gap | Tire | SW* |
| 1 | 36 | au TOM’S GR Supra | 坪井翔 / 山下健太 | 115 | Bridgestone | 40 | |
| 2 | 14 | ENEOS X PRIME GR Supra | 福住仁嶺 / 大嶋和也 | 115 | 8.786 | Bridgestone | 16 |
| 3 | 23 | MOTUL Niterra Z | 千代勝正 / 高星明誠 | 115 | 41.398 | Bridgestone | 6 |
| 4 | 39 | DENSO KOBELCO SARD GR Supra | 関口雄飛 / サッシャ・フェネストラズ | 115 | 42.460 | Bridgestone | 12 |
| 5 | 16 | #16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT | 野尻智紀 / 佐藤蓮 | 115 | 54.657 | Bridgestone | 10 |
| 6 | 24 | リアライズコーポレーション Z | 名取鉄平 / 三宅淳詞 | 115 | 55.127 | Bridgestone | 4 |
| 7 | 12 | TRS IMPUL with SDG Z | 平峰一貴 / ベルトラン・バゲット | 115 | 1’23.351 | Bridgestone | 22 |
| 8 | 100 | STANLEY HRC PRELUDE-GT | 山本尚貴 / 牧野任祐 | 115 | 1’31.568 | Bridgestone | 8 |
| 9 | 17 | Astemo HRC PRELUDE-GT | 塚越広大 / 野村勇斗 | 114 | 1 Lap | Bridgestone | 2 |
| 10 | 19 | WedsSport BANDOH GR Supra | 国本雄資 / 阪口晴南 | 114 | 1 Lap | Yokohama | |
| 11 | 8 | #8 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT | 太田格之進 / 大津弘樹 | 114 | 1 Lap | Bridgestone | |
| 12 | 64 | Modulo HRC PRELUDE-GT | 大草りき / イゴール・オオムラ・フラガ | 112 | 3 Laps | Dunlop | |
| 13 | 38 | KeePer CERUMO GR Supra | 大湯都史樹 / 小林利徠斗 | 86 | 29 Laps | Bridgestone | 32 |
| 37 | Deloitte TOM’S GR Supra | 笹原右京 / ジュリアーノ・アレジ | 46 | 69 Laps | Bridgestone | ||
| *SW=サクセスウェイト(kg) | |||||||
| Weather: Sunny / Track: Dry | |||||||
| Fastest Lap: 1’29.456 (2/115) 183.630 km/h 14 Nirei Fukuzumi TGR TEAM ENEOS ROOKIE / ENEOS X PRIME GR Supra | |||||||
勝者が変わり、勢力図が揺れ動くGT300
開幕戦・岡山では、777号車 D’station Vantage GT3が予選から決勝まで主導権を握り、その強さを印象づけた。しかし、第2戦の舞台となった富士スピードウェイでは、レースの流れは大きく変わった。
3時間という長丁場に加え、GT500との混走がレースに与える影響が大きい富士では、一発の速さだけでは勝利に届かない。ロングランでのタイヤマネジメント、ピットストップのタイミング、そして周回遅れとなるGT300同士、さらにはGT500車両との位置関係まで、あらゆる要素を組み立てながらレースを進めることが求められる。そのなかで最後までレースをコントロールしたのが、56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rだった。
序盤から上位グループで安定したペースを維持し、大きくタイヤを消耗させることもなく周回を重ねる。3時間レースでは序盤に速さを見せるよりも、終盤まで競争力を維持できるかどうかが重要になる。その点で56号車はレース全体の組み立てが非常にスムーズだった。
特に印象的だったのは、GT500との混走時の落ち着いた対応である。富士はストレートエンドでGT500の車両が一気に迫る場面が多く、譲るタイミングを誤れば、自身のペースを崩すだけでなく接触のリスクも高まる。それでも56号車は必要以上にラインを外すことなく、状況を冷静に判断しながら周回を重ねた。その積み重ねが終盤の優位性を生み出したのだ。
一方、岡山で圧倒的な強さを見せた777号車 D’station Vantage GT3は、今回は主役とはならなかった。決して大きく崩れたわけではないが、岡山で見せたペースは影を潜めていた。サーキット特性の違いもあるだろうが、開幕戦と同じ結果にならなかったことは、GT300の勢力図が依然として流動的であることを示している。
上位争いでは、トヨタ勢も存在感を見せた。GR86 GTやLC500h GTなど、それぞれが異なる強みを生かしながら上位でレースを展開し、終盤まで順位は大きく入れ替わり続けた。ひとたびGT500と混走すれば数秒のタイムロスが順位を左右し、ピットアウトのタイミングひとつでもレースの流れが変わるのだ。
開幕戦を終えた時点では、D’station Racingの仕上がりが一歩抜け出しているようにも見えた。しかし富士では56号車が勝利を収め、上位争いにもさまざまな車種が顔をそろえたことで、GT300らしい混戦模様があらためて印象づけられた。
もちろん、2戦だけで年間の勢力図を語ることはできない。それでも岡山と富士で異なる勝者が生まれたことは、今年もGT300が一筋縄ではいかないシーズンになることを予感させる。サーキットが変われば主役も変わる。その変化こそが、様々な名マシーンが覇を競うこのカテゴリーの最大の魅力なのである。
| GT300 CLASS – FINAL RESULT | |||||||
| Pos | No. | Car | Drivers | Laps | Gap | Tire | SW |
| 1 | 56 | リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R | ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ / 木村偉織 | 107 | Yokohama | 4 | |
| 2 | 65 | LEON PYRAMID AMG | 蒲生尚弥 / 菅波冬悟 / 黒澤治樹 | 106 | 1 Lap | Bridgestone | 22 |
| 3 | 31 | apr LC500h GT | 小高一斗 / 小山美姫 / チャーリー・ブルツ | 106 | 1 Lap | Bridgestone | 32 |
| 4 | 666 | seven x seven PORSCHE GT3R EVO | スヴェン・ミューラー / 藤波清斗 | 106 | 1 Lap | Yokohama | 8 |
| 5 | 2 | HYPER WATER INGING GR86 GT | 堤優威 / 卜部和久 | 106 | 1 Lap | Bridgestone | 40 |
| 6 | 32 | ENEOS X PRIME AMG GT3 | 石浦宏明 / 小林可夢偉 | 106 | 1 Lap | Bridgestone | |
| 7 | 777 | D’station Vantage GT3 | 藤井誠暢 / チャーリー・ファグ | 106 | 1 Lap | Dunlop | 52 |
| 8 | 4 | グッドスマイル 初音ミク AMG | 谷口信輝 / 片岡龍也 | 106 | 1 Lap | Yokohama | 26 |
| 9 | 52 | Green Brave GR Supra GT | 吉田広樹 / 野中誠太 | 106 | 1 Lap | Bridgestone | 16 |
| 10 | 96 | K-tunes RC F GT3 | 新田守男 / 高木真一 | 105 | 2 Laps | Bridgestone | 18 |
| 11 | 7 | CARGUY Ferrari 296 GT3 EVO | ザック・オサリバン / 梅垣清 / 伊東黎明 | 105 | 2 Laps | Yokohama | 6 |
| 12 | 87 | OPEN HOUSE Lamborghini GT3 | 元嶋佑弥 / 松浦孝亮 / 川合孝汰 | 105 | 2 Laps | Yokohama | 2 |
| 13 | 62 | HELM MOTORSPORTS GT-R | 平木湧也 / 平木玲次 | 105 | 2 Laps | Yokohama | |
| 14 | 11 | GAINER TANAX Z | 富田竜一郎 / 大木一輝 | 105 | 2 Laps | Dunlop | |
| 15 | 48 | 健康ケーズフロンティアWMニルズGT-R | 井田太陽 / ジェームス・プル / 藤原大暉 | 105 | 2 Laps | Yokohama | |
| 16 | 60 | Syntium LMcorsa LC500 GT | 吉本大樹 / 河野駿佑 | 105 | 2 Laps | Dunlop | 12 |
| 17 | 25 | HOPPY Schatz GR Supra GT | 松井孝允 / 洞地遼大 | 105 | 2 Laps | Yokohama | |
| 18 | 20 | シェイドレーシング RC F GT3 | 平中克幸 / 清水英志郎 | 104 | 3 Laps | Michelin | |
| 19 | 360 | RUNUP × SOL GT-R | 荒川麟 / 金丸ユウ / 田中篤 | 104 | 3 Laps | Yokohama | |
| 20 | 22 | アールキューズ AMG GT3 | 加納政樹 / 城内政樹 / 庄司雄磨 | 104 | 3 Laps | Yokohama | |
| 21 | 30 | apr GR86 GT | 平良響 / 織戸学 | 104 | 3 Laps | Yokohama | |
| 22 | 9 | PACIFIC ウマ娘 NAC BMW | 冨林勇佑 / 藤原優汰 / 久保凜太郎 | 104 | 3 Laps | Michelin | |
| 23 | 6 | UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI | 片山義章 / ニクラス・クルッテン | 103 | 4 Laps | Yokohama | 14 |
| 24 | 88 | VENTENY Lamborghini GT3 | 小暮卓史 / ダニール・クビアト / 坂口夏月 | 102 | 5 Laps | Yokohama | 20 |
| 25 | 5 | マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 | 塩津佑介 / 荒尾創大 | 102 | 5 Laps | Yokohama | 10 |
| 26 | 26 | ANEST IWATA GAINER Z | 安田裕信 / リ・ジョンウ | 99 | 8 Laps | Yokohama | |
| 27 | 61 | SUBARU BRZ R&D SPORT | 井口卓人 / 山内英輝 | 93 | 14 Laps | Dunlop | |
| 28 | 18 | UPGARAGE AMG GT3 | 小林崇志 / 新原光太郎 | 80 | 27 Laps | Yokohama | |
| 29 | 45 | PONOS FERRARI 296 EVO | ケイ・コッツォリーノ / 篠原拓朗 | 65 | 42 Laps | Yokohama | |
| Weather: Sunny / Track: Dry | |||||||
| Fastest Lap: 1’37.245 (2/93) 168.922 km/h 61 Hideki Yamauchi R&D SPORT / SUBARU BRZ R&D SPORT | |||||||
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