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レース終盤に注目された日産同士の戦い。GR Supraの仕上がりが良いといわれる中で予選3番手に食い込み、決勝でも3位、表彰台の一角を獲得した日産のエースナンバーを背負う23号車、MOTUL Niterra Z。ストレートを通過する度に歓声が響いた。
Cars

公開日:2026.07.18

スーパーGT名物、GWの富士決戦——ストリートの、その先へ Vol.3 スーパーGT 2026 第2戦 富士スピードウェイ

SUPER GT 2026 Beyond the Street

富士スピードウェイを制する者は、シーズンを制するのか。ゴールデンウィーク恒例の富士3時間レースで見えてきた各陣営の実力と、2026年スーパーGTの勢力図を追う。

文=吉田拓生

写真=河野マルオ(maruo kono)

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GT500、王者の強さは「速さ」の先にあった

開幕戦・岡山を終えた時点で、2026年シーズンのGT500クラスは「トヨタが一歩リード」という印象を残した。しかし、ゴールデンウィークの富士スピードウェイで開催された第2戦ではその評価が確かなものへと変わったのだった。

富士は岡山ではコースの性格が異なる。長いストレートを生かした最高速だけでなく、高速コーナーでの空力バランス、タイヤへの負荷、そして3時間という長丁場を見据えた戦略が求められる。予選で速さを見せることと決勝における強さは必ずしも一致しないのである。そのなかで改めて存在感を示したのが、36号車 au TOM’S GR Supraだった。

予選では14号車 ENEOS X PRIME GR Supraがポールポジションを獲得し、GR Supraのスピードを印象づけた。一方で、開幕戦の勝利で40kgのサクセスウェイトを積んだ36号車は突出した速さを見せたわけではなかった。しかし決勝がはじまるとレースの流れを読む力は他車を一歩上回っていた。

ローリングスタートで1コーナーへと進入していくGT500クラス。レースが3時間と長いこともあり、各車とも十分にクリアランスをとったスタートとなったようだ。夜に暴風雨が吹き荒れ、決勝は蒸し暑い天気となったが、多くの観客が富士を訪れ、レースを見守った。
ローリングスタートで1コーナーへと進入していくGT500クラス。レースが3時間と長いこともあり、各車とも十分にクリアランスをとったスタートとなったようだ。夜に暴風雨が吹き荒れ、決勝は蒸し暑い天気となったが、多くの観客が富士を訪れ、レースを見守った。

序盤から無理にトップを奪いにいくことはなく、自らのペースを維持しながらタイヤの状態を丁寧に管理。そしてライバルのピットインやトラフィックを見極めながら最適なタイミングで勝負に出る。スーパーGTでは1周ごとの速さよりも、数十周を通して無駄なく走り切ることが重要になる。その積み重ねが首位奪取につながった。

スーパーGTではGT300車両との混走も、レース展開を左右する重要な要素となる。周回遅れとの遭遇は避けられず、どの場所で追い付き、どのタイミングで抜くかで数秒単位の差が生まれる。36号車はそうした局面でも慌てることなく周囲の状況を整理し、最小限のロスで周回を重ねた。決して派手なオーバーテイクを繰り返したわけではないが、結果的にはその冷静さがレース全体を優位に進める要因となったのである。

レース中盤、周回遅れとなったGT300の集団にGT500が追いつき、オーバーテイクを仕掛ける。もちろんすべてのドライバーにとってこれは厄介な状況ではあるが、速く走る以上に、混戦をうまく抜け出すことがドライバーに求められる技術でもある。
レース中盤、周回遅れとなったGT300の集団にGT500が追いつき、オーバーテイクを仕掛ける。もちろんすべてのドライバーにとってこれは厄介な状況ではあるが、速く走る以上に、混戦をうまく抜け出すことがドライバーに求められる技術でもある。

ライバルたちの存在感

一方で、ライバル勢も確かな存在感を示している。14号車は予選で速さを見せ、そのまま優勝争いに加わった。23号車 MOTUL Niterra Zも終始安定したペースを見せ、表彰台を獲得。日産陣営は決勝を通して大きく崩れることが少なく、マシーンの熟成が着実に進んでいることを印象づけた。

ホンダ勢にとっては、新型PRELUDE GTの2戦目。今回の富士では予選で全車が上位進出を果たすなど、開幕戦よりも一歩前進した姿を見せている。決勝では優勝争いに加わるまでには至らなかったが、高速域での安定性やロングラン性能には改善が見られ、開発が着実に進んでいることを感じさせた。シーズンが進み、セットアップやタイヤとのマッチングが深まれば、表彰台争いの常連となる可能性は十分にあるだろう。

富士山が見守る中でのGT500クラスの争い。新型車であるHRC Prelude-GTを投入したホンダとZ NISMO GT500を熟成させているニッサンがトヨタ勢の独走を止められるのか、という部分が今シーズンの重要なポイントといえるだろう。
富士山が見守る中でのGT500クラスの争い。新型車であるHRC Prelude-GTを投入したホンダとZ NISMO GT500を熟成させているニッサンがトヨタ勢の独走を止められるのか、という部分が今シーズンの重要なポイントといえるだろう。
予選8番手、ホンダ勢としては4番手からのスタートとなった16号車、ワコーズカラーのARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT。スタートドライバーは野尻智紀、レース後半は佐藤蓮選手がステアリングを握り、ホンダ勢として最上位の5位を獲得した。
予選8番手、ホンダ勢としては4番手からのスタートとなった16号車、ワコーズカラーのARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT。スタートドライバーは野尻智紀、レース後半は佐藤蓮選手がステアリングを握り、ホンダ勢として最上位の5位を獲得した。

また、今季のGT500では各メーカーが最後の“タイヤ戦争”を戦っている点も見逃せない。同じ車種であっても装着するタイヤ・ブランドの違いによってレースペースは大きく変わる。富士のようにロングラン性能が問われるレースでは、その差がより顕著に表れる。マシーン性能だけで勢力図を語れないのは、スーパーGTならではの面白さでもある。

2戦を終えた現時点で言えるのは、トヨタ勢が依然として強いということ。そして、主役というべき36号車のパフォーマンスは、単純な車両性能だけでは説明できないものであること。ドライバー、エンジニア、ピットクルーがそれぞれの役割を高い精度で果たし、レース全体をひとつの流れとして組み立てる総合力が、連勝につながっているのだろう。

岡山でレース巧者ぶりを見せた36号車だが、その印象は富士を終えたことでより確かなものになった。ただ速いから勝つのではない。状況を読み、戦略を瞬時に組み直し、最後に結果を手繰り寄せる。その総合力こそが、2026年シーズン序盤のGT500クラスで最も際立っている部分といえるだろう。

SUPER GT 2026 Rd.2 FUJI
GT500 CLASS – FINAL RESULT
Pos No. Car Drivers Laps Gap Tire SW*
1 36 au TOM’S GR Supra 坪井翔 / 山下健太 115 Bridgestone 40
2 14 ENEOS X PRIME GR Supra 福住仁嶺 / 大嶋和也 115 8.786 Bridgestone 16
3 23 MOTUL Niterra Z 千代勝正 / 高星明誠 115 41.398 Bridgestone 6
4 39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra 関口雄飛 / サッシャ・フェネストラズ 115 42.460 Bridgestone 12
5 16 #16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT 野尻智紀 / 佐藤蓮 115 54.657 Bridgestone 10
6 24 リアライズコーポレーション Z 名取鉄平 / 三宅淳詞 115 55.127 Bridgestone 4
7 12 TRS IMPUL with SDG Z 平峰一貴 / ベルトラン・バゲット 115 1’23.351 Bridgestone 22
8 100 STANLEY HRC PRELUDE-GT 山本尚貴 / 牧野任祐 115 1’31.568 Bridgestone 8
9 17 Astemo HRC PRELUDE-GT 塚越広大 / 野村勇斗 114 1 Lap Bridgestone 2
10 19 WedsSport BANDOH GR Supra 国本雄資 / 阪口晴南 114 1 Lap Yokohama
11 8 #8 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT 太田格之進 / 大津弘樹 114 1 Lap Bridgestone
12 64 Modulo HRC PRELUDE-GT 大草りき / イゴール・オオムラ・フラガ 112 3 Laps Dunlop
13 38 KeePer CERUMO GR Supra 大湯都史樹 / 小林利徠斗 86 29 Laps Bridgestone 32
37 Deloitte TOM’S GR Supra 笹原右京 / ジュリアーノ・アレジ 46 69 Laps Bridgestone
*SW=サクセスウェイト(kg)
Weather: Sunny / Track: Dry
Fastest Lap: 1’29.456 (2/115) 183.630 km/h 14 Nirei Fukuzumi TGR TEAM ENEOS ROOKIE / ENEOS X PRIME GR Supra
予選6番手から見事な逆転優勝を飾った56号車、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R。ベテランのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラと今年からチームに加入した木村偉織が2位以下を周回遅れにするほどのペースで圧勝してみせた。

勝者が変わり、勢力図が揺れ動くGT300

開幕戦・岡山では、777号車 D’station Vantage GT3が予選から決勝まで主導権を握り、その強さを印象づけた。しかし、第2戦の舞台となった富士スピードウェイでは、レースの流れは大きく変わった。

3時間という長丁場に加え、GT500との混走がレースに与える影響が大きい富士では、一発の速さだけでは勝利に届かない。ロングランでのタイヤマネジメント、ピットストップのタイミング、そして周回遅れとなるGT300同士、さらにはGT500車両との位置関係まで、あらゆる要素を組み立てながらレースを進めることが求められる。そのなかで最後までレースをコントロールしたのが、56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rだった。

序盤から上位グループで安定したペースを維持し、大きくタイヤを消耗させることもなく周回を重ねる。3時間レースでは序盤に速さを見せるよりも、終盤まで競争力を維持できるかどうかが重要になる。その点で56号車はレース全体の組み立てが非常にスムーズだった。

特に印象的だったのは、GT500との混走時の落ち着いた対応である。富士はストレートエンドでGT500の車両が一気に迫る場面が多く、譲るタイミングを誤れば、自身のペースを崩すだけでなく接触のリスクも高まる。それでも56号車は必要以上にラインを外すことなく、状況を冷静に判断しながら周回を重ねた。その積み重ねが終盤の優位性を生み出したのだ。

今年エンジンを4気筒から6気筒に替えた効果もあり、予選Q2でコースレコードを出しポールポジションをゲットした61号車、SUBARU BRZ R&D SPORT。だがレースでは25周目にタイヤバースト。94周目に駆動系トラブルでリタイアとなってしまった。
今年エンジンを4気筒から6気筒に替えた効果もあり、予選Q2でコースレコードを出しポールポジションをゲットした61号車、SUBARU BRZ R&D SPORT。だがレースでは25周目にタイヤバースト。94周目に駆動系トラブルでリタイアとなってしまった。

一方、岡山で圧倒的な強さを見せた777号車 D’station Vantage GT3は、今回は主役とはならなかった。決して大きく崩れたわけではないが、岡山で見せたペースは影を潜めていた。サーキット特性の違いもあるだろうが、開幕戦と同じ結果にならなかったことは、GT300の勢力図が依然として流動的であることを示している。

上位争いでは、トヨタ勢も存在感を見せた。GR86 GTやLC500h GTなど、それぞれが異なる強みを生かしながら上位でレースを展開し、終盤まで順位は大きく入れ替わり続けた。ひとたびGT500と混走すれば数秒のタイムロスが順位を左右し、ピットアウトのタイミングひとつでもレースの流れが変わるのだ。

ひときわ野太い排気音によってすぐにそれとわかるレクサスLC500。エンジンは5.4ℓのV8を搭載している。60号車、Syntium LMcorsa LC500 GTは予選で7位につけたが、決勝ではタイヤの空気圧低下で緊急ピットインを余儀なくされ16位に沈んだ。
ひときわ野太い排気音によってすぐにそれとわかるレクサスLC500。エンジンは5.4ℓのV8を搭載している。60号車、Syntium LMcorsa LC500 GTは予選で7位につけたが、決勝ではタイヤの空気圧低下で緊急ピットインを余儀なくされ16位に沈んだ。

開幕戦を終えた時点では、D’station Racingの仕上がりが一歩抜け出しているようにも見えた。しかし富士では56号車が勝利を収め、上位争いにもさまざまな車種が顔をそろえたことで、GT300らしい混戦模様があらためて印象づけられた。

もちろん、2戦だけで年間の勢力図を語ることはできない。それでも岡山と富士で異なる勝者が生まれたことは、今年もGT300が一筋縄ではいかないシーズンになることを予感させる。サーキットが変われば主役も変わる。その変化こそが、様々な名マシーンが覇を競うこのカテゴリーの最大の魅力なのである。

メルセデスAMG GTにランボルギーニ・ウラカン、そしてニッサンGT-RというGT3マシーンが競い合うレース中盤。マシーンによって直線が速かったり、コーナーが得意だったりパフォーマンスに差があるため抜きつ抜かれつの接戦になることもある。
メルセデスAMG GTにランボルギーニ・ウラカン、そしてニッサンGT-RというGT3マシーンが競い合うレース中盤。マシーンによって直線が速かったり、コーナーが得意だったりパフォーマンスに差があるため抜きつ抜かれつの接戦になることもある。
GT300 CLASS – FINAL RESULT
Pos No. Car Drivers Laps Gap Tire SW
1 56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ / 木村偉織 107 Yokohama 4
2 65 LEON PYRAMID AMG 蒲生尚弥 / 菅波冬悟 / 黒澤治樹 106 1 Lap Bridgestone 22
3 31 apr LC500h GT 小高一斗 / 小山美姫 / チャーリー・ブルツ 106 1 Lap Bridgestone 32
4 666 seven x seven PORSCHE GT3R EVO スヴェン・ミューラー / 藤波清斗 106 1 Lap Yokohama 8
5 2 HYPER WATER INGING GR86 GT 堤優威 / 卜部和久 106 1 Lap Bridgestone 40
6 32 ENEOS X PRIME AMG GT3 石浦宏明 / 小林可夢偉 106 1 Lap Bridgestone
7 777 D’station Vantage GT3 藤井誠暢 / チャーリー・ファグ 106 1 Lap Dunlop 52
8 4 グッドスマイル 初音ミク AMG 谷口信輝 / 片岡龍也 106 1 Lap Yokohama 26
9 52 Green Brave GR Supra GT 吉田広樹 / 野中誠太 106 1 Lap Bridgestone 16
10 96 K-tunes RC F GT3 新田守男 / 高木真一 105 2 Laps Bridgestone 18
11 7 CARGUY Ferrari 296 GT3 EVO ザック・オサリバン / 梅垣清 / 伊東黎明 105 2 Laps Yokohama 6
12 87 OPEN HOUSE Lamborghini GT3 元嶋佑弥 / 松浦孝亮 / 川合孝汰 105 2 Laps Yokohama 2
13 62 HELM MOTORSPORTS GT-R 平木湧也 / 平木玲次 105 2 Laps Yokohama
14 11 GAINER TANAX Z 富田竜一郎 / 大木一輝 105 2 Laps Dunlop
15 48 健康ケーズフロンティアWMニルズGT-R 井田太陽 / ジェームス・プル / 藤原大暉 105 2 Laps Yokohama
16 60 Syntium LMcorsa LC500 GT 吉本大樹 / 河野駿佑 105 2 Laps Dunlop 12
17 25 HOPPY Schatz GR Supra GT 松井孝允 / 洞地遼大 105 2 Laps Yokohama
18 20 シェイドレーシング RC F GT3 平中克幸 / 清水英志郎 104 3 Laps Michelin
19 360 RUNUP × SOL GT-R 荒川麟 / 金丸ユウ / 田中篤 104 3 Laps Yokohama
20 22 アールキューズ AMG GT3 加納政樹 / 城内政樹 / 庄司雄磨 104 3 Laps Yokohama
21 30 apr GR86 GT 平良響 / 織戸学 104 3 Laps Yokohama
22 9 PACIFIC ウマ娘 NAC BMW 冨林勇佑 / 藤原優汰 / 久保凜太郎 104 3 Laps Michelin
23 6 UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI 片山義章 / ニクラス・クルッテン 103 4 Laps Yokohama 14
24 88 VENTENY Lamborghini GT3 小暮卓史 / ダニール・クビアト / 坂口夏月 102 5 Laps Yokohama 20
25 5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 塩津佑介 / 荒尾創大 102 5 Laps Yokohama 10
26 26 ANEST IWATA GAINER Z 安田裕信 / リ・ジョンウ 99 8 Laps Yokohama
27 61 SUBARU BRZ R&D SPORT 井口卓人 / 山内英輝 93 14 Laps Dunlop
28 18 UPGARAGE AMG GT3 小林崇志 / 新原光太郎 80 27 Laps Yokohama
29 45 PONOS FERRARI 296 EVO ケイ・コッツォリーノ / 篠原拓朗 65 42 Laps Yokohama
Weather: Sunny / Track: Dry
Fastest Lap: 1’37.245 (2/93) 168.922 km/h 61 Hideki Yamauchi R&D SPORT / SUBARU BRZ R&D SPORT
ゴールデンウィーク真っ只中の5月3日〜4日に開催されたスーパーGT第2戦。観客動員数は予選が行われた3日が3万3300人、4日が5万300人と大盛況だった。ピットウォークもこの人だかり。
ゴールデンウィーク真っ只中の5月3日〜4日に開催されたスーパーGT第2戦。観客動員数は予選が行われた3日が3万3300人、4日が5万300人と大盛況だった。ピットウォークもこの人だかり。
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