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最終更新日:2022.03.18 公開日:2022.03.18

【再掲記事】震災で傷ついた笠間焼のシンボル・登り窯|東日本大震災、震災後の記事を振り返る

東日本大震災から11年。次の大震災に備えて、この経験をしっかり覚えておくために、「くるくら」では震災3年後の被災地の状況を伝えた記事を再掲することにしました。2回目は「震災で傷ついた笠間焼のシンボル・登り窯」です。

文・野地 貴範

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本記事は2014年2月に「メイトパーク」(「くるくら」の元サイト)に掲載した内容の再掲です。現状を伝える記事ではありませんのでご注意ください。


復興イベントで、ボランティアがレンガを再利用するための作業にあたる。(写真=笠間焼協同組合)

ボランティアの手によって復活

 笠間焼は、水戸市の西部にある笠間市で江戸時代から200年続く陶業だ。かつては階段状に窯を並べた登り窯を用いて、すり鉢など台所で使われる陶器を大量に製造していた。プラスチックの器が普及した現在では、作家の個性を生かした、より芸術性を高めた工芸作品の創出にも力を注いでいる。

 東日本大震災は、そんな陶芸の里も揺さぶった。笠間市は震度6強の揺れを観測。レンガを組み、粘土で固めた登り窯は元来揺れに強い構造ではなく、市内に残っていた6基の登り窯は、すべてが損壊した。

 「登り窯以外の窯にも、7割にトラブルが発生しました。さらに、陶芸の作品の7割が、棚から落ちて割れるといった被害を受けました」(深町明・笠間焼協同組合事務局長 以下同)

 笠間では毎年、ゴールデンウイークに笠間焼の祭典「笠間の陶炎祭(ひまつり)」が行われる。本来ならば、3月はそれに向けて作品づくりの山場を迎える時期だ。しかし、東日本大震災は、出品するはずの作品や、それを焼成する窯も奪った。当時は余震も続き、行楽やイベントの自粛ムードもあった。果たして陶炎祭を開催すべきなのか。それを問う会合が、大震災から1週間後に開かれた。

 「当時はガソリン不足のため、会場に来られない窯主もいましたが、開催をやめたいという人はひとりもいなかったですね」

 その年の陶炎祭には、過去最高の38万人が訪れたという。

 「陶炎祭の会場で登り窯の復興サポーターの募集をしたところ、100人近く集まってくれました。平成23年7月から復興イベントを開催して、サポーターの方には損壊した登り窯のレンガを取り除いたり、使えるレンガを再利用するためにセメントを剥がしたり、といった作業をお願いしました」

 それから週末を中心にイベントが開かれ、昨年9月に最後の登り窯の修復が終わった。しかし、登り窯復興プロジェクトは、これで終わりというわけではない。

 「笠間が好き、陶器が好きで集まってくれた人たちですので、今後は内外で笠間焼をPRしてもらったりという活動を続けていこうと思っています」

 大震災で落ち込んだ笠間焼の生産量は、いまでは元通りに回復した。笠間を訪れる観光客も、最近になって震災前と同程度まで回復したとみられる。

レンガが組みあがったら、表面を粘土で覆う。復興作業もいよいよ大詰めだ。(写真=同)

 「ようやく平常通りになってきた気がします」深町事務局長は3年間を振り返った。

 今年2月24日から、震災以来中止していた「登り窯まつり」が復活する。2月28日にはいよいよ登り窯に火が入り、3日間火を絶やさずに焼成する。煙突から火が噴き出るほどの強い火力は圧巻。震災から3年を迎える3月11日に、作品を窯から出す予定だ。

 登り窯まつりが開かれる、市内の奥田製陶所の登り窯を訪ねた。修復を終えた登り窯は、積み上げられたレンガや屋根の部分を囲う粘土がまだ初々しい。だが、登り窯まつりの焼成が終わると、窯の内外にススが付いて風格が出るという。

 登り窯のススが濃くなるに連れて、陶器の里の復興も進んでいく。

ボランティアらの手によって復活した奥田製陶所の登り窯。間もなく行われる登り窯まつりで、初めて火が入る。


●震災から11年、取材当時を振り返って

 2013年末に笠間市を取材した際、街中の通りを運転している限りでは表立った被害は見えませんでした。しかし、震度6強という大きな揺れは、商品である陶器をことごとく壊し、陶器を焼く窯に大きな被害を与えました。震災の被害で落ち込んだ生産量が、震災以前まで回復したのがこの頃で、陶業が受けた被害の回復には長い期間がかかるものだと感じたものです。

 ボランティアが修復を手伝った登り窯が完成したばかりの登り窯も取材しました。当時の登り窯は、外壁に塗られた粘土が初々しい印象でした。それから数年が経ち、何度も登り窯に火が入って、たくさんの陶器を焼いてきたことでしょう。テレビなどで登り窯が映ると、取材当時のことを思い出します。

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