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道路・交通最終更新日:2023.06.14 公開日:2023.06.07

大雨の頻発化で冠水路も増える! 知っておくべき運転のリスク

大雨による水害を意識させられる季節になった。大雨は発生頻度が増加傾向にあり、水害による車のトラブルは決して他人事ではなくなってきている。やむを得ず大雨の中を走行する場合の注意点や、冠水路の走行リスクについて解説する。

文=くるくら編集部

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大雨が頻発化している!

1976~2022年までの、1時間降水量50mm以上の年間発生回数。画像は気象庁資料をもとに国土交通省が作成したもの

 ここ数年、線状降水帯や集中豪雨の報道が増えているように感じないだろうか。実際、1時間で50mm以上の大雨の発生回数は増加傾向にあり、1976~1985年と2013~2022年の平均値を比較すると、約1.5倍も増えていることがわかっている。

1時間の雨量が50mm以上というのは「滝のように降る」と表現され、傘は役に立たず、視界は水しぶきで白くなり、道路は水に浸かり、車での走行にも危険が伴うような状態だ。そのようなレベルの大雨が全国で頻発しているのだ。

画像=気象庁「雨の強さと降り方」

 大雨が頻発化している原因は気温の上昇だ。国土交通省が気候変動による将来の降雨量の変化を試算したところ、気温が2℃上昇すると降雨量は約1.1倍に、4℃上昇すると約1.3倍になり、それと比例するように洪水の発生頻度も増えると考えられている。

大雨の際には移動しないに越したことはないが、それでも車を運転しなければならない場面はあると思うので、どのようなリスクがあるのかをしっかり把握しておこう。

国土交通省が降雨量変化倍率をもとに算出した、流量変化倍率と洪水発生頻度の変化の一級水系における全国平均値

大雨の走行で気を付けること

(c)fotojanis – stock.adobe.com

■視界が悪く、車も歩行者もお互いに気付かない
 ドライバーの視界が悪くなるのはもちろんのこと、歩行者や自転車などの道路利用者も、雨風のために車の存在に気づきにくくなる。気づかないと、予測できない行動を取ることもあるので要注意だ。

■路面に水が張っている状態
ある程度スピードが出ている場合、車輪と路面の間に水膜が発生し、ハンドルやブレーキが効かなくなることがある(ハイドロプレーニング現象)。特に高速道路で発生しやすく、車が浮いたような感覚や、実際の速度と速度計の表示に違和感を感じたら要注意。ハイドロプレーニング現象が起きた場合は、ブレーキ、アクセル、ハンドルの操作をやめ、速度が充分下がって制御できるようになるまで待つこと。溝がすり減ったタイヤほど発生しやすいので、タイヤの定期的なチェックも欠かせない。

■道中をイメージする
目的地までの間に、冠水しやすい道路や川沿い、アンダーパスがないかを確認する。これらの道路は大雨の際に通行止めや渋滞が発生する可能性があるので、迂回ルートの利用を検討すべきだ。もし走行できたとしても、冠水路は非常に危険(後述)。

河川の増水や冠水の可能性がある道路にはさまざまな標識・案内が設置されているので、常日頃から意識しておくことが大切だ。

全国の道路冠水推定箇所
https://www.mlit.go.jp/road/bosai/doro_bosaijoho_webmap/index.html

アンダーパスなどの手前には冠水注意の標識が設置されていることがある。(c)sunftaka77 – stock.adobe.com

冠水したらどの深さまで大丈夫?

冠水路をどうしても走行せざるを得ない場合、水深、速度、走行時、冠水走行後について、どのようなリスクが潜んでいるのかを知っておくと役に立つ。

JAFが行った冠水路の走行テストによると、水深30cmならセダンタイプでもSUVでも時速30kmで走行することができている。しかし、水深が60cmでは時速10kmでもセダンタイプは途中でエンジンが停止し、SUVでは時速30kmで走行した際にエンジン全体が水をかぶってしまい、わずか10mの走行でエンジンが停止している。また、水深が60cmになると、止まった際に自力でドアを開けることが困難になる。

ここでは「エンジン内部に水が入るとエンジンが壊れる」ことと、「走行速度を落とせば巻き上げる水量が減り、エンジンに水が入るリスクを下げられる。」ということを認識しておこう。

水深30cmの冠水路をセダンタイプで時速10km・30kmでテスト走行している様子。同じ30cmの水深でも、時速30kmではエンジンルームに大量の水が入ることがわかった。写真=JAF

水深60cmの冠水路をSUVで時速10km・30kmでテスト走行している様子。時速30kmではエンジン下部からも大量の水が入り込み、わずか10mでエンジンが止まったという。写真=JAF

 では、水深30cm以下なら大丈夫かといえば、そうではない。冠水路は泥や下水などが混じることで水が濁り、道路そのものが見えなくなる。2020年7月の福岡県での豪雨では、1か月で603件、2022年の静岡県を襲った台風15号では3日間で2062件もの冠水に関するJAFへの救援要請があり、中には道路と側溝の境目が見えずに落輪したという相談もあったそうだ。

冠水中・冠水後の車の注意点

車の下回り

車のボディ下まで自分で点検するのはハードルが高い。(C)edojob – stock.adobe.com

 停車中でも走行後でも、冠水した車両は漏電している可能性があるため注意が必要だ。水が引いた後も、自分でエンジンをかけようとせず、ロードサービスや自動車販売店、整備工場などに連絡しよう。また、ボンネットを開けて浸水があるなら、火災防止にバッテリーのマイナス側のターミナルを外し、テープなどで絶縁処理をしておくことも大切だ。EV・ハイブリッド車においては高電圧のバッテリーを搭載しているので、そもそも車に接触すべきではない。

また、冠水後に問題なく走行できても、車内が臭う場合は浸水が発生している可能性がある。そうなった場合はその臭いを完全に取り除くことが困難であるうえ、中古車で売買する際にも水没車扱いされる可能性もあり、買取価格にも影響が出てしまう。

もし冠水路を走行する際には、このようなリスクがあるということを思い出し、安全な場所で天候が回復するまで待つ選択肢も用意して欲しい。そして、やむを得ず走行した際は必ず早めに点検を依頼しよう。

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