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クルマ最終更新日:2023.06.16 公開日:2017.07.22

ヨーロッパ各国で拡大する電気自動車(EV)化

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ポルシェ初のEV「ミッションE」。 © Porsche AG

 ダイムラー(独)、VW(独)、アウディ(独)、BMW(独)などヨーロッパの主要メーカーが電気自動車(EV)化のロードマップを示す中、さらにフランス政府、ボルボ(スウェーデン)、ロンドン・タクシー(英)、ポルシェ(独)などからも、次々とEV化を推し進めるニュースが届いている。

フランスは2040年までに電気自動車のみを販売

仏ニコラ・ユロ環境相は7月6日、2040年までに純粋なディーゼル自動車とガソリン自動車の生産・販売を禁止する声明を発表した。これにより将来フランスは、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッドカーなど、すべてのクルマが走行用の電動モーターを備える国となる。環境大国といわれるドイツでは、アンゲラ・メルケル首相が、2020年までに国内にEV100万台を広めるプロジェクトの失敗を発表したばかりだが、そのドイツを尻目に、さらに先を行く方針であるといってもいいだろう。

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© picture alliance / Westend61 / Paul Seheult

 仏フィガロ誌によれば、ユロ環境相はフランスのEV化について「わが国の自動車メーカーは、この公約を果たす力を備えています。これは気候変動や国民の健康という観点から必ず果たさなければならない約束です」と言明した。そのためにフランス政府は、古いクルマからクリーンエネルギー車への買い替えを促す助成金の新制度を設けることを計画しており、これまで新車購入にしか当てられなかったこの手当が、今後は中古車にも適用されることになる。

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5月の選挙戦でスピーチをするマクロン大領領。© picture alliance / Michael Kappeler / dpa

 エコカーのプロジェクトは、5月に就任したエマニュエル・マクロン大統領の選挙公約でもある。フランスの昨年の自動車販売台数は約200万台で、EVやハイブリッド⾞、代替燃料⾞が占めるシェアは約4%にとどまる。しかしそうした⾞の売り上げは2017年1~3⽉期だけで前年同期比25%伸びていることを米CNNは伝えている。

ボルボは2019年から全てのクルマをEVとハイブリッド車に

また、スウェーデンのボルボ社は7月5日、ガソリンなどを燃料にした内燃機関だけで走るクルマの製造を停止し、2019年以降に製造する自動車にはすべて電気モーターを搭載すると発表した。

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ボルボは2019年に初のEV発表を予定している。 © Volvo Car Japan

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EV化の鍵をにぎる中国

ボルボのホーカン・サムエルソンCEOは、「EVの需要は高まりつつあり、今日の発表は、内燃機関だけに頼る自動車の終焉を意味する」とコメントしたことが同じく米CNNによって伝えられている。
このボルボの声明に対して欧州のメディアは、ボルボが2010年以降、中国の自動車メーカー吉利汽車(ジーリー)社の傘下にあり、その影響が今回の決断と無縁ではないと報道している。

EV製造の半数以上は中国

ドイツ・デュースブルク=エッセン⼤学の⾃動⾞研究センターによれば、世界で製造されるEVのうち、半数以上は中国で販売されており、2016年に世界で販売されたEVおよびPHVは約87万3000台。このうち中国で販売されたのは約50万7000台に上るという。中国は圧倒的にEV生産を牽引する国なのであるが、背景として中国における深刻な大気汚染と、中国がアメリカと並ぶ世界でも最大の石油消費大国であることが挙げられる。

EV化にリーチがかかったロンドン・タクシー

ヨーロッパ企業の中で今最もEV化を急いでいるのは、ロンドン・タクシーである。現イギリス外務大臣であり当時ロンドン市長だったボリス・ジョンソンが2014年、市内を走るタクシーの新規登録を来年2018年からEVなどエコカーに限定すると表明しているからである。

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EV生産に拍車がかかるロンドン・タクシー・カンパニー。© London Taxi Comapny

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ロンドン・タクシーのEVプロトタイプ「TX5」。© London Taxi Comapny

 「ブラックキャプ」と呼ばれるロンドンのタクシーは、長年にわたりイギリス最大手のブリティッシュ・モーター・コーポレーションとその後身であるオースチンによって製造されていた。

電気タクシーの開発は、中国の吉利汽車(ジーリー)社傘下のロンドン・タクシー・カンパニーや日産など5社が競っており、ロンドン・タクシー・カンパニーは7月4日、プロトタイプ「TX5」を、「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」というイベントにて発表した。TX5が緩やかに走行する様子がYouTube上の動画で見ることができる。

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ドイツのポルシェもついに

ロンドン・タクシー・カンパニーCEOのピーター・ヨハンセンは、昨年の時点で「タクシーの1日あたりの走行距離は240~320kmで、この距離を1回の充電で走れるかが課題だ」と語っていた。同社によれば、TX5はフル充電で約113km走行でき、吉利汽車(ジーリー)社傘下ボルボの3気筒エンジンと電気モーターを組み合わせたレンジ・エクステンダーが搭載されるという。
吉利汽車(ジーリー)社は、ロンドン・タクシー・カンパニーを買収した時点からEVをリリースすることが目標だったと明らかにしている。

ロンドンのタクシーは、1958年にオースチンによって開発された対面シートの「FX4」が40年以上もの間、市民や観光客に親しまれている。いわば、ロンドンのシンボルともいえるクルマである。それだけに、EVとして生まれ変わったTX5のインテリアや装備がどのような仕上がりになるのか、また他社からどんな車種が発表されるのか、来年の実施に向けて話題を集めそうだ。

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写真は国民に親しまれてきた従来のロンドン・タクシー。新生EVがどうなるかは英国民の注目の的だ。© picture alliance / Photoshot

ポルシェもとうとうEV化に参戦

ドイツ・ポルシェ社CEOオリバー・ブルームは、2015年フランクフルトのモーターショーで「ミッションE」と呼ばれる電気自動車を発表すると同時に、2023年までに同社の生産台数の半分をEV化することを発表した。
このニュースは、パフォーマンスがポルシェ愛好者の期待水準に満たないとEVを軽視していたポルシェでも、電気化の波は避けられない事実を示すものである。

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2020年発売予定のミッションE。© Porsche AG

 ポルシェ初のEV「ミッションE」は、充電時間は約15分で80%が充電され、500kmを超える航続距離を有するという。7月18日のプレスリリースによると、2023年の目標に向けて本社シュトゥットガルト・ツッフェンハウゼン工場を、地元バーデン=ヴュルテンベルク州首相が視察に訪れ、ポルシェは1000人以上の更なる労働者の雇用と、新しいエンジン工場の建設など約904億円の大規模な投資を行っていることが表明された。

温室効果ガスの削減を目指すヨーロッパとその自動車メーカーのEV 推進は、顧客のニーズを満たすだけでなく、厳しい排気ガス規制など環境、政治、経済面で様々な背景を抱えながらも、EV化の流れは確かに現実のものとなりつつあるようだ。

2017年7月22日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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