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クルマ2018.06.28

ホンダN360は、欠点も魅力のうちの痛快車。

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「ホンダN360」1967〜1972年 全長×全幅×全高:2995×1295×1345mm 軸距:2000mm 車両重量:475kg 駆動方式:FWD エンジン:4サイクル強制空冷2気筒354cc 出力:31ps/8500rpm トルク:3.0kgm/5500rpm 変速機:4速MT&3速AT 最高速:115km/h サスペンションF:ストラット/R:半楕円板バネ 価格:310,000円

常識にとらわれずに作った軽、N360

 ホンダというと、モータースポーツに力点を置いたユニークなメーカーというイメージが強い。いや、その昔はさらにエキサイティングなメーカーだったのだ。2輪のレース界では他社のエンジンがまだ単気筒だった時代に、ショートストロークの4気筒マシンを開発し、世界の最高峰であるマン島TTレースを連覇したのは有名な話。市販車も同様に他社の2倍の回転数で高出力を発揮。そんなこともあってホンダの名は、短期間で世界に轟くこととなる。

 このN360は、そういった2輪の技術がベースになっている。エンジンはバイク用のCB450を360㏄に縮小し、62.5×57.8mmのショートストロークとした。当時、4サイクルは出力的に不利で、2サイクルの半分しか出ないと言われていたが、31ps/8500rpmを叩き出した。ちなみに他社は20psにも満たない2サイクルエンジンが主流だったのだ。トランスミッションも2輪と同方式のドグミッションを採用。ガツンガツンと入るが、荒削りなフィールはぬぐえなかった。

 ホンダが最初に作ったクルマは、T360というトラックだが、エンジンはなんと360ccDOHC直列4気筒にタコ足を付けた、レーシングエンジンのようなものだった。街中で甲高いレーシングサウンドを響かせ、遠くからもすぐにホンダだということがわかった。そのエンジンを改良して、かの高性能スポーツカーS500/600/800へと発展する。

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異例ずくめのN360

高性能、かっとび軽のN360

 N360の開発ではオースチン・ミニの影響を大きく受けたようで、当時の社長・本田宗一郎氏は、ミニマム・トランスポーテーションとして、世界へ普及させようと考えていた。タイヤを四隅に配置し、エンジンを前に追いやり、キャビンを最大限まで広げた。トランクリッドを付けたところもミニの影響を感じる。違うのはキャビンとトランクを繋げたトランクスルー構造へ進化させたことだ。

 宗一郎氏はデザインに対しても自分の意見を通し、既にプレス型が完成していたにもかかわらず、自らの手でデザイン修正を行った。そのため高額な金型を捨てる羽目になったという逸話が残っている。

 これら一連の設計は、当時F-1の開発責任者であった中村良夫氏が携わったという。しかし、その彼の力を持ってしても、幾つかの欠点があった。そのひとつは、ヒーターを入れるとオイルの焦げたような臭いがすることだった。原因はエンジン冷却風の一部を室内に導いていたからだ。そのためヒーターからは温風だけでなく、エンジン音も一緒に入ってくる。ヒーターを使わなくても空冷エンジンの音は大きく、また遮音材が少なかったためか、けたたましい音がしていた。

 最大の問題は、トルクステアが大きく、アクセルを開けるとまっすぐに走らなかったことだ。ドライブシャフトの長さが左右違うため、シャフトの剛性差によって駆動力が違っていた。フルパワーをかけると、どこへ行くかわからないじゃじゃ馬で、ドライバーにとっては逆に、それを乗りこなすのも楽しみのひとつだった。ハンドルを抱え込むような姿勢で、ハイスピードでかっとばすのだ。

 種々の問題もあったが、ガンガン回るエンジンと31万円という低価格によってN360は売れに売れ、大ヒット商品になった。その結果、スバル360が打ち立てた最多販売記録をいとも簡単に塗り替えてしまった。スペシャリティカーの「Z」や欧米にも輸出したN400/600などを含め、Nシリーズは経営面に大きく貢献した。そして72年のシビックへと繋がり、ホンダは4輪路線を強固なものとした。

 N360には幾つかの欠点もあったが、それ以上の魅力が詰まったクルマで、財布の軽い若者でもクルマの楽しさを十分享受できた。

文=立花啓毅
1942年生まれ。ブリヂストンサイクル工業を経て、68年東洋工業(現マツダ)入社。在籍時は初代FFファミリアや初代FFカペラ、2代目RXー7やユーノス・ロードスターといった幾多の名車を開発。

(この記事はJAFMateNeo2014年4月号掲載「哲学車」を再構成したものです。記事内容は公開当時のものです)

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