クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2018.05.10 公開日:2018.05.10

スバルのラリーカーを集めてみた!

 スバルは熱狂的なファンが多いことで知られるメーカーだ。独創的なクルマであることも人気の理由だが、ラリーに長く参戦してきたイメージもとても強いはずだ。

 1972年にオーストラリアのサザンクロスラリーに「レオーネ」で参戦したのを皮切りに、1990年からはWRC世界ラリー選手権にも本格参戦。1995~97年には、日本メーカーとしてマニファクチャラーズタイトル3連覇を達成するなど、大いに活躍した。

 ここでは、新旧のスバルのラリーカーを集めてみた。あのスバルブルーのマシンも複数台紹介する。

故コリン・マクレーが乗った「インプレッサWRC98」

「インプレッサWRC98」。全長4340×全幅1770×全高1405mm、ホイールベース2520mm。車重1230kg。エンジンは排気量1994cc、水平対向4気筒DOHC空冷インタークーラーターボ「EJ20」。最高出力は220kW(300ps)/5500rpm、最大トルク470N・m(480.0kg-m)、センターデフ方式フルタイム4WD、6速セミAT。モータースポーツジャパン2018にて撮影。

 WRCは1997年に大幅なルールの改正があり、それまでは市販車に近い「グループA」マシンしか参戦できなかったが、大幅な改造が可能な「WRカー」も走れるようになった。スバルは素早い対応で同シーズンの第1戦、伝統のモンテカルロ・ラリーからWRカー仕様の「インプレッサ」を導入。その年はドライバーズタイトルの獲得は叶わなかったものの、1995年から続く3年連続となるマニファクチャラーズタイトルを獲得した。

 画像の「インプレッサWRC98」は、その1997年仕様のWRカーを踏襲した1998年仕様マシン。英国人初のWRC世界王者で、豪快な走りから人気だった故コリン・マクレーが搭乗した最後の「インプレッサ」である。マクレーは、イタリアで行われた第11戦ラリー・サンレモにおいて、このマシンで3位に入賞した。

 なお、スバルのラリーカーは、1993年からこのスバルブルー(濃紺)にイエローというカラーリングをまとって、WRC世界ラリー選手権を戦った。スバルはこのカラーリングで、マニファクチャラーズタイトル3連覇を達成。そして、世界王者も3人誕生した。そのため、今でもこのカラーリングは人気が高い。

「インプレッサWRC98」のリアクォーターウィンドウに記されている、「McRae(マクレー)」の名。Mcとはスコットランド人および先祖にスコットランド人を持つ人の姓によく見られ、ゲール語で「息子」を意味する(英語でいうところの「son」と同じで、レーさんの息子という意味の姓)。本来、ラリーカーに記されている名前は非常時に備えたもので、コ・ドライバーと並べて表記される。出血があるような事故のときにすぐに輸血できるよう、名前の後ろにはそれぞれの血液型も記される。モータースポーツジャパン2018にて撮影。

→ 次ページ:
スバル初のクルマにして軽のあのクルマがラリーに!

グレートレース2017に参戦「スバル360 ヤングSS」(1968年)

「スバル360 ヤングSS グレートレース2017参戦車」。全長2995×全幅1300×全高1335mm、ホイールベース1800mm、車重425kg。エンジンは排気量356cc、空冷2サイクル・並列2気筒「EK32」。最高出力は26kW(36ps)/7000rpm、最大トルクは37.24N・m(3.8kg-m)/6400rpm。駆動方式はリアエンジン・リアドライブ。その奥に見える「スバル360」は、発売初年度の1958年に60台だけ作られた初期型である「増加試作型」。モータースポーツジャパン2018にて撮影。

 グレートレースとは米国最大のクラシックカーラリーで、約4000kmを9日間で走り抜けるというもの。単に速さを競うのではなく、地図を頼りに複数のチェックポイントを通過し、どれだけ規定タイムに近い時間でゴールできるかを競うというものだ。2017年の第27回大会は6月24日にフロリダ州ジャクソンビルからスタートし、7月2日にミシガン州トラバースシティにゴールするというルートで開催された。

 モータージャーナリストの国沢光宏氏がドライバー、同じく小島なつき氏がコ・ドライバーとして、同ラリーに参加した時のクルマがこの「スバル360 ヤングSS」だ。トラブルに見舞われながらも無事にゴールし、エントリー122台中で最もパワーが小さかったことから、特別賞「Lowest Horsepower Vehicle Ever To Finish(これまでゴールしたクルマで最もパワーの少ないクルマ)」を授与された。

 「スバル360」は、スバル(当時・富士重工業)初の市販4輪車兼軽自動車ということで、1958年3月から販売がスタートした。当時の軽自動車の規格は、全長3m以下・全幅1.3m以下・全高2.0m以下・排気量360cc以下というものである(現在の軽自動車規格は全長3.4m以下・全幅1.48m以下・全高2.0m以下・排気量660cc以下)。なお、「ヤングSS」が1968年に追加されたモデルだった。

サファリを目指した「レオーネ 4WD RX ターボ」(1988年)

「レオーネ 4WD RX ターボ(1998年第36回サファリ・ラリー用テストカー)」。全長4370×全幅1660×全高1425mm、ホイールベース2465mm、車重1355kg。エンジンは排気量1782cc、水平対向4気筒OHCターボ「EA82」。最高出力は88kW(120ps)/5200rpm、最大トルクは178N・m(18.2kg-m)/2400rpm。トランスミッションは5速MT、駆動方式はセレクティブ4WD。モータースポーツジャパン2018にて撮影。

 WRCに乗用車タイプのAWD(全輪駆動車)が初めて登場したのは1980年のサファリ・ラリーで、それがスバル「レオーネ スイングバック」だった。WRCで4WDというと80年代初頭のアウディが元祖のように語られることも多いが、アウディの4WD車による初参加は1981年から。実はスバルの方が1年早かったのである。

 ”カーブレイカー・ラリー”の異名を持つサファリ・ラリーは、現在ではWRCには組み込まれなくなったが、かつては世界一過酷といわれたラリー。ここで優勝することは、そのドライバーとマシンの知名度を一気に上げられることから、複数の国内メーカーが古くは1950年代からその技術力を証明すべく挑戦してきた。そんなサファリ・ラリーに対し、スバルは一貫して市販車に近いカテゴリーで参戦し、ハイパワーマシンと対等に渡り合ったことで注目されるようになったのである。

 1985年には、2代目レオーネにあたる「レオーネ スイングバック」から、3代目「レオーネ 4WD RX ターボ」へとバトンタッチし、ラリーで活躍を続けた。写真のクルマは、1988年の第36回サファリ・ラリーに向けて開発された「レオーネ 4WD RX ターボ」のテストカー。ただし、残念ながらこのテストカーは実戦投入されることはなく幻となった。その後、スバルはWRCを「レガシィ」や「インプレッサ」で戦うが、その基礎を築いたのが「レオーネ」だったのである。

→ 次ページ:
スバルのWRCへの挑戦!

スバルブルーをまとった最初の「レガシィ RS」(1993年)

「レガシィ RS」(1993年WRC第8戦ニュージーランド・ラリー優勝車)。全長4510×全幅1705×全高1420mm、ホイールベース2580mm、車重1200kg。エンジンは排気量1994cc、水平対向4気筒DOHC水冷インタークーラーターボ「EJ20」。最高出力は220kW(300ps)/6500rpm、最大トルクは441N・m(45kg-m)/4000rpm。トランスミッションは6速MT、駆動方式はフルタイム4WD。モータースポーツジャパン2018にて撮影。

 スバルは、1989年に「レガシィ」をデビューさせると、翌1990年シーズンから同車をベースとした「グループA」マシンでWRCに参戦する。グループAとは、「連続した12ヶ月の間に5000台以上を生産する4座席車」を満たした車両のこと。要は、ラリー専用のハイパワーカーや、年間に多くても数百台程度のスーパーカーベースの超高性能ラリーカーを参戦させないためのルールである(ハイパワー化のために死亡事故などが多発したため)。

 「レガシィ」はWRCデビューイヤーの1990年第3戦の第38回サファリ・ラリーにおいて、同ラリー史上初となる、「グループN(市販車無改造クラス)」で完走し、クラス優勝を果たすという快挙を達成した。その後スバルは、英国のレーシングカー・ラリーカーコンストラクターでレース・ラリーチームでもある「プロドライブ」とコンビを組み、WRCに本格的に参戦するのである。

 なお1993年は、タバコ会社のスポンサードを得て、スバルブルー(WRブルーマイカ)を地に、ブランド「555」のロゴなどがイエローという有名なデザインが採用された初めての年度だ。この年の第8戦ニュージーランド・ラリーで、スバルはマクレーのドライブによりWRCで初めて総合優勝を達成するのである。またマクレー自身も初優勝であった。そのウィナーマシンが画像の「レガシィ RS」である。

ラリー・サンレモ優勝車「インプレッサ 555」(1996年)

「インプレッサ 555」(WRC1996年第8戦ラリー・サンレモ優勝車)。全長4340×全幅1690×全高1405mm、ホイールベース2320mm、車重1200kg。エンジンは排気量1944cc、水平対向4気筒DOHCインタークーラーターボ「EJ20」。最高出力は217kW(295ps)/6400rpm、最大トルクは441N・m(45.0kg-m)/4000rpm。トランスミッションは6速セミAT、駆動方式はセンターデフ式フルタイム4WD。モータースポーツジャパン2018にて撮影。

 「インプレッサ」は「レガシィ」に続いてスバルのブランニューモデルとして投入された車種で、1992年10月に誕生した。そしてWRCでは、1993年シーズンから投入された。同シーズンは第8戦までは「レガシィ RS」が戦い、第9戦の1000湖ラリーからいよいよ「インプレッサ」にスイッチ。初戦で早くも2位を獲得した。

 フル参戦した1994年シーズンは、第5戦アクロポリス・ラリーで初の総合優勝を果たすと、同シーズンは全10戦中3勝でシリーズ2位を獲得。

 さらに1995年は全8戦中5勝を挙げて、マクレーが世界王者になると同時に、スバルもマニファクチャラーズタイトルを遂に獲得。ダブルタイトルに輝いたのである。「インプレッサ」にスイッチして2年目のことであった。

 1996年、スバル陣営はマクレーをエースとし、「インプレッサ 555」でシーズンを戦った。しかしこのシーズンは中盤までに1勝しかできず、タイトル連覇に黄色信号が灯ってしまう。しかし、第8戦ラリー・サンレモでマクレーが総合優勝を果たすと、そこから息を吹き返し、2年連続マニファクチャラーズを獲得。翌年もマニファクチャラーズを獲得し、日本メーカー初の3連覇を達成したのである。

 画像の「インプレッサ 555」は、1996年第8戦のラリー・サンレモでマクレーが総合優勝したときのマシンだ。

→ 次ページ:
スバルのWRC活動終盤のマシン!

WRC活動終盤の「インプレッサ WRC 2007」

「インプレッサ WRC 2006」。全長4425×全幅1800×全高1390mm、ホイールベース2545mm、車重1230kg。エンジンは排気量1944cc、水平対向4気筒DOHCインタークーラーターボ「EJ20」。最高出力は261kW(355ps)/5500rpm、最大トルクは588.4N・m(60.0kg-m)/4000rpm。トランスミッションは6速MT、駆動方式はフルタイム4WD。約10年前のモータースポーツジャパン2007にて撮影。

 スバルがWRCを撤退するのは2008年。この「インプレッサ WRC 2006」は、2006シーズンから2007シーズンの第3戦までを戦った終盤のマシンだ。ドライバーは2003年の世界王者ペター・ソルベルグと若手のクリス・アトキンソンの2台体制だった。

 このラリーカーは、当時は「インプレッサ」のハイパフォーマンスグレードだった「WRX STI」の内、「GDB型Fタイプ」がベースだ(2018年現在、「WRX STI」は「インプレッサ」から独立している)。

 「インプレッサ WRC 2006」の特徴は、前年の「インプレッサ WRC 2005」から引き続き、スバルの市販車部門とWRカー部門のSWRTのコラボレーションによって開発されたこと。通常、市販車とWRカーの外見は似て非なるものになってしまうことが多いのだが、このコラボレーションにより市販車とWRカーが非常に似たデザインとなっていたのである。

 そして外見的な特徴は、Cピラー上部の空力パーツ「ターニングベーン」。ルーフを流れてきた空気がここで整流され、リアウィングの効果を高めるようになっていた。しかし、残念ながらこの時期、スバルのマシンはライバルに遅れを取ってしまっており、この年も苦戦してしまう。エースのソルベルグが5位、ナンバー2のアトキンソンは7位に終わっている。

新井敏弘の世界王者マシン「インプレッサ WRX STI」(2007年)

「インプレッサ WRX STI specC」の新井敏弘選手がPCWRC王者となった2007年の31号車スペックは未確認。モータースポーツジャパン2007にて撮影。

 現在のWRC3というクラスに相当し、2012年まで開催されていた「プロダクションカー世界ラリー選手権」(PCWRC)。最高峰の改造車であるWRカーで戦うWRCに対し、PCWRCは改造できる範囲が少ない市販車に近い部門である。

 そこで、2005年と2007年に世界王者となったのが、2018年現在も最速日本人ラリーストである新井敏弘だ。画像のマシンは、2007年に王者を取ったときの31号車。約10年前のモータースポーツジャパン2007のデモランの際に撮影した画像である。

 このマシンは、2005年6月に発売された「インプレッサ WRX STI」の競技用として改良し、改造範囲の狭い「グループN」のホモロゲーション(参加資格)取得車両とした「インプレッサ WRX STI spec C」。通常の「WRX STI」に対し、軽量ガラス、ルーフの薄板化、アルミ製トランクリッドなどを採用し、約70kgの軽量を達成している。

 そのほかシャシー剛性の向上、レスポンスに優れるボールベアリングを軸受けにしたターボの採用、インタークーラーのウォータースプレイ大型ウォータータンクおよび空冷式エンジンオイルクーラーなどを装備してエンジン(ターボ)の性能を上げている。

→ 次ページ:
最後はスバルの最新ラリーマシン!

「WRX STI」ベースのラリーカーを並べてみた!

 最後は、2016~2018年のスバルの最新ラリーマシンを紹介しよう。現在、スバルはWRCには参戦していないが、全日本ラリー選手権(JRC)ではPCWRC王座獲得経験を持つ新井敏広選手らが「WRX STI」を使用している。

 「WRX」はスポーツモデルである「インプレッサ」から派生し、「WRX STI」はその中でもSTI(スバルテクニカインターナショナル)が手がける、走行性能を高めた最上級グレード。現在、JRCのトップドライバーのスバル勢の多くがこのマシンで参戦中だ。

 ここでは代表して、新井選手の「WRX STI」の2016~2018年仕様を紹介しよう。

「WRX STI」2016年仕様。全長4595×全幅1795×全高1475mm、ホイールベース2650mm。車重未公表。排気量1944cc。最高出力は200kW/5500rpm、最大トルクは490N・m/3000rpm。東京オートサロン2017・スバルブースにて撮影。

「WRX STI」2017年仕様。エントリー時の車名は「富士スバルアライモータースポーツWRX」。スペックは確認できなかったが、2016年仕様とほぼ同等と思われる。モータースポーツジャパン2017にて撮影。

「WRX STI」18年仕様の新井選手のマシン「富士スバル ARAI WRX STI」。エンジン型式「EJ20」。排気量1994cc。最高出力227kW/6400rpm、最大トルク422N・m/4400rpm。2016年仕様と比べて、出力・トルク共にアップしている。

2018年5月10日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(12月1日まで)
応募はこちら!(12月1日まで)