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クルマ2017.12.26

菰田潔のタイヤの「空気圧」。正しくないとクルマはまともに走らない。

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タイヤ使用画像.jpg知っているようで知らないタイヤの話。「タイヤは空気圧のチェックが大事」とはよく聞く言葉だけど、でもそれってどうして? 自動車ジャーナリストの菰田潔氏が徹底解説。

空気圧って何だっけ?

 通常のタイヤは正しく空気が入っていないとその機能を発揮できない。クルマごとに車両指定空気圧が決まっていて、多くの日本車は運転席のドアを開けたところにラベルが貼ってある。輸入車もドアを開けると見えるところに貼ってある車種が多いが、給油口の蓋の裏に貼ってあるクルマもあるから自分のクルマのラベルの位置は取説で確認しておこう。タイヤが冷えているときにこの数字に合うように空気を入れれば正しい空気圧となる。

 しかし、空気圧は一度合わせればそれで良いわけではない。ゴムの分子の隙間を空気が通って漏れてしまうのだ。ゴム風船を膨らませておいても、一晩たつとしぼんでしまうのと同じ原理だ。だから定期的に空気を補充しなくてはならない。

 空気の漏れの他に季節によっても空気圧は変化する。夏から秋、冬に向かっては気温が下がるので、空気も体積が小さくなる。結果としてタイヤの空気圧も下がってしまう。気温が10℃変化すると、空気圧は10kPa(0.1kgf/cm2=1bar)くらい変わってしまう。

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空気圧が低いと何が問題?

空気圧低下の悪影響

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 空気圧の指定は車種によって異なり、同じ車種でも上写真のようにタイヤサイズや乗車人数によって細かく分けられている場合もある。では、空気圧が低いと何がいけないのか。実はクルマにとって悪いことだらけなのだ。ひとつひとつ具体的に説明しよう。

燃費

 空気圧が低くなるとタイヤの転がり抵抗が増えて燃費が悪くなる。自転車に乗れば体験できるが、空気圧が低いタイヤより高いタイヤの方が楽に走れるのと同じことだ。空気圧が低いとタイヤが回転したときにゴムの変形が大きいからそこでエネルギーを消耗してしまうのだ。

摩耗

 空気圧が低いとゴムの摩耗も早くなる。路面との接触面でゴムが動いてしまい、そこが擦れるとゴムが減るからだ。溝が早くなくなればタイヤ交換を早くしなくてはならない。つまり出費が増えるわけだ。損をしないためには正しい空気圧に合わせておくことだ。

ブレーキ

 空気圧が低いと急ブレーキのときに制動距離が伸びてしまうこともある。タイヤのグリップが弱くなるからだ。全体の接地面積が増えるのは良いのだが、ブロックが変形しやすくなり、結果として強いグリップを発揮できなくなるからだ。

安定性

 空気圧が低いと、クルマの重さを支えているタイヤのサイドウォール(側面)がたわみやすくなるから、カーブを曲がっているときに、車が不安定になりやすくなる。

乗り心地

 タイヤが車重を支えることや路面の凹凸を吸収して快適性を高めることも重要な役目だ。空気圧が低いとタイヤがソフトになって乗り心地がよくなると思うかもしれないが、実は車体が無駄に動く量が増えて快適性が低下することもある。タイヤは上下方向にはたわみやすいが、その動きを抑える機能はタイヤにないので、揺れが大きく、かつ多くなることもある。大きな段差ではタイヤが全部つぶれて強い衝撃が伝わるだけでなく、縁石などでタイヤのサイドウォールが切れてしまうこともある。

 以上、空気圧が低いとこれだけ悪いことがたくさんあることが分かったと思う。

逆に空気圧が高すぎるとどうなる?

 それなら空気を余計に入れておけばいいと考えるドライバーもいる。しかし空気圧が高いことによるデメリットも生まれることを知っておかなくてはならない。摩耗に関しても路面と接するトレッド面の全体がうまく接地できなくなり、タイヤの真ん中あたりから局所的に減る、いわゆるセンター摩耗になる。ブレーキ性能も必要以上に空気圧が高いと接地面積が減ってしまうことでグリップ低下により制動距離が長くなることもある。グリップ低下はカーブでも影響が出て、不安定になりやすくなることもある。空気圧が高いとタイヤが調度いい具合にたわみにくくなって、ポンポン跳ねるような感じになり乗り心地が悪くなる。

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空気圧はどれくらいの頻度でチェック?

空気圧は定期的にチェック!

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 定期的な空気圧チェックは欠かせない。ではどれくらいの頻度でチェックするのが良いのか。

 冬から春、春から夏にかけては気温が上がるから空気圧も上がる可能性があるが、空気の漏れとキャンセルされてあまり変化がないこともある。それでも定期的な空気圧チェックは必要なのだ。

 それはパンクを事前にチェックするためだ。パンクの約80%はスローパンクチャーと言われている。つまり釘が刺さってもすぐには空気が抜けずに、1週間、2週間経ってからプシューッと空気が抜けてパンクしたと気がつく事例が多いのだ。プシューッと抜けるまではその穴から徐々に空気が漏れているが、その量は少ないのでドライバーが運転感覚で気がつくのは難しい。

 プシューッと全部空気が抜けた日がパンクした日ではなく、もっと前に釘は刺さっていた、ということが多い。完全にパンクする前に、知る方法は2週間に一度程度の空気圧チェックである。どこか1輪だけ空気圧が他より少し低いときにはパンクを疑った方がいい。

 もし雨が降る夜に高速道路で完全にパンクしたら、と想像して欲しい。路肩にクルマを止めてタイヤ交換するなんていうことは極めて危険な行為だ。そうならないようにするためには2週間に1回のチェックが大事なのだ。

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パンクが怖くないタイヤがある

空気圧チェックをしてもパンクが怖いときは?

タイヤ03使用.jpg

 最近ランフラットタイヤを採用するクルマが増えてきた。ランフラットタイヤは空気圧がゼロになっても、80km/h以下で80kmの距離(車種によってはそれ以上)を走れるというものだ。

 ランフラットタイヤを装着すると環境性と安全性をより高めることができる。

 環境性という意味では、スペアタイヤの搭載をしないことで、クルマの中のスペースを広くすることとスペアタイヤを運ぶ無駄をなくすことができる。

 ドライバーがパンクを経験するのは、俗に8万kmに1回とか8年に1回といわれている。5〜6万kmでクルマを買い換えるという人は、一度もスペアタイヤを使わずにクルマを売る可能性も高いわけだから、その使用期間はスペアタイヤに無駄なスペースを取られ、無駄な重量を運んでいたことになる。またスペースセーバータイヤやテンパータイヤと呼ばれるスペア専用のタイヤを搭載しているケースもあるが、これらのタイヤのほとんどが1mも走らずに廃棄されているという事実もある。

 パンク時の応急処置のためにスペアタイヤを搭載するというのは、環境性という意味では好ましいことではないことが、これらの事例からお分かりいただけるだろう。

 では、ランフラットタイヤがどう安全性に貢献するのかを説明しよう。雨が降る夜に高速道路でパンクしたとすると、通常は暗い路肩にクルマを止めてタイヤ交換しなくてはならない。これは非常に危険な行為ということは上述したが、そんなときでもランフラットタイヤなら次のICかSA・PAまで行くことができる。つまり、危険な路上でのタイヤ交換作業をしなくても済むというのが大きく安全性に貢献しているといえる。

 ただ、いかにランフラットタイヤが良いといっても、どんなクルマにでも装着できるわけではない。クルマ側の装備も必要だ。それは空気圧低下を検知するシステムだ。 その多くはABSの回転センサーを使って空気圧の低下をドライバーに知らせる。空気圧が低くなると実際に回転するときのタイヤ径が小さくなるから、他の3輪よりも回転数が多くなることで差をセンシングするものだ。30kPa(0.3kgf/cm2=0.3bar)くらい低下するとアラームで知らせてくれる。これは4輪全部が同じように減っていくケースでは対応できない。

 最新の車はそれも対応できるようになった。ホイールに空気圧センサーが付いているタイプで、走行中でも1輪ずつそれぞれの空気圧を運転席にいながらにしてチェックできる。ちなみにこの仕組みは、ランフラットタイヤを履いているわけではないが、たくさんタイヤが付いている大型トラックなどでもすでに採用されている。

2017年12月26日(モータージャーナリスト 菰田潔)

菰田潔(こもだきよし):モータージャーナリスト。1950年生まれ。 自動車レース、タイヤテストドライバーを経て、1984年から現職。日本自動車ジャーナリスト協会会長 / 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員 / 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)交通安全・環境委員会 委員 / 警察庁 運転免許課懇談会委員 / 国土交通省 道路局環境安全課 検討会 委員 / 一般社団法人 全国道路標識・表示業協会 理事 / NPO法人 ジャパン スマート ドライバー機構 副理事長 / BMW Driving Experienceチーフインストラクター / 運送会社など企業向けの実践的なエコドライブ講習、安全運転講習、教習所の教官の教育なども行う。

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