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クルマ最終更新日:2017.08.18 公開日:2017.08.18

動画で見る2016年度JNCAPチャイルドシート評価ランキング:乳児用編

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幼児用後ろ向き型の試験の様子。実際と同様、座席に対して後ろ向きに取り付けて試験が行われる。座席やCRSを取り付けた台車を後方(画像の場合は左側)に向かって時速55kmで急激に打ち出すことで(国の安全基準速度の1割増し)、前面衝突した場合と同様の衝撃を発生させる。

 国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が毎年試験結果を発表している、「自動車アセスメント(JNCAP)」。

 JNCAPではクルマだけでなく、チャイルドシート(CRS)の安全性能評価試験も実施し、その結果を公開している。平成28年度の結果は2017年5月に発表された。

 最新の平成28年度の試験を受けたのは7製品。そこで、乳児用、幼児用の2回に分けてランキング形式で紹介したい。各製品の試験の様子も動画で掲載しているので、その安全性をご自分の目で確かめていただきたい。

試験するチャイルドシートは「乳児用」と「幼児用」

 JNCAPで試験するCRSは、新生児~1才ぐらいための「乳児用」(体重13kg未満、身長70cm以下)の後ろ向き型およびベッド型、そして1~4才ぐらいのためのシート型ともいわれる「幼児用」(体重9~18kg、身長65~100cmまで)だ。ちなみに、年齢を基準に使い分けている人も多いと思うが、本来は体重と身長で選ぶのがより正確である。

 また、チャイルドシートには、この他に小学1~6年生ぐらいの児童が使用する学童用(ジュニアシート)もあるが、JNCAPでは試験は行っていない。今回の記事では、乳児用を紹介する。

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3種類それぞれの取り付け方のイメージ。左が乳児用後ろ向き型で、中央が乳児用ベッド型、右は幼児用。取り付け方が異なるため、評価項目が同じところもあれば、異なるところもある。イラストは、NASVA発行のパンフレット「チャイルドシート安全比較BOOK2017.3」より抜粋。

 なお、現在の製品は乳児用と幼児用を兼ねていたり、さらにはジュニアシートまでも兼ねていたりするものが多い。今回の7製品も、1製品除いて乳児用と幼児用を兼ねている(残りの1製品も幼児用とジュニアシートを兼ねている)。

 そして試験は大別して「前面衝突試験」と「使用性評価試験」の2種類がある。前面衝突試験が、そのCRSの安全性能を評価し、使用性評価試験は簡単・確実に正しく使いやすいかどうかを評価する。

乳児用の前面衝突試験の項目は?

 前面衝突試験は台車に固定された試験用シートに子どもダミーを乗せたCRSを取り付けて行う(ダミーは乳児用後ろ向き型用が身長70.8cm、体重9.0kgの「TNO P3/4」、同ベッド型用が身長67.1cm・体重7.9kgの「CRABI 6MO」を使用)。試験の様子は、各製品ごとに動画も掲載したので、ぜひご覧いただきたい。評価項目はそれぞれ4項目あり、詳細は以下の通りだ。

乳児用後ろ向き型

破損の状況:衝突によって本体の取り付け部などに破損が生じるか否か
胸部に受ける力:衝突によってダミーの胸部に生じる衝撃(合成加速度)の大きさ
シート背もたれの傾き:衝突時の本体の背もたれの角度がどう変化するか
頭部のはみ出し:衝突時に本体背面の上端部から、ダミーの頭部のはみ出しがあるか否か

乳児用ベッド型

破損の状況:衝突によって本体の取り付け部などに破損が生じるか否か
胸部に受ける力:衝突によってダミー胸部に生じる衝撃(合成加速度)の大きさ
シート底面の傾き:衝突時の本体底面がどの程度傾くか
頭部の移動量:衝突時にダミー頭部が前方に移動する量

 そして各項目は◎、○、×の3段階で評価される。4項目すべてが◎だと「優」、4項目中3項目が◎で1項目が○なら「良」、1項目でも×があったら「推奨せず」、そしてその3段階に当てはまらない場合(例えば◎と○が2項目ずつなど)は「普(普通)」と評価される。

使用性評価試験は5項目を評価

 使用性評価試験は専門家が評価を行い、5項目それぞれ5点満点(パンフレット上ではレーダーチャートとして記載されている)。平成26(2014)年度までは5項目の平均点が発表されていたが、平成27年度からは25点満点の合計得点が発表される新方式となった。

取扱説明書など:説明文のわかりやすさや問い合わせ先などの記載に関して
着座のさせやすさ:ハーネスやバックルなどの扱いやすさなど
クルマへの装着性:座席への固定の確実性やCRSの回転防止機構の有無など
本体の構造:リクライニングなど可動機構などの操作性やシートカバーの取り付けの確実性など
本体表示:取扱説明書を見なくても、本体だけで確実に座席への装着などの操作を行えるよう配慮されているかなど

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まずは乳児用1位と2位から!

乳児用後ろ向き型1位&2位!

 平成28年度に試験を受けた、乳児用の後ろ向き型は6製品だ。前面衝突試験の評価結果の高い順から1位とし、評価が同じ場合は使用性評価結果の得点の高い順でランキングを決定した。

 注意点として、このランキングの決定方法だと使用性評価結果は「よければそれに越したことはない」的に見えてしまうかも知れないが、そうではないということ。いくら評価結果が高くても、座席への装着が難しいなどの使用性評価結果が低い場合は、その製品の安全性能を100%発揮できない使い方をしてしまう可能性が高くなるといえるからだ。よって、使用性評価結果の得点にも注目していただきたい。

 なお使用性評価結果に関しては、感覚的にわかりやすいように100点満点換算で表記してみた。カッコ内は本来の25点満点の点数。

1位:キュピオ(ピジョン)
前面衝突試験: 使用性評価試験:64点(16点)
重量:5.4kg

前面衝突試験詳細
破損の状況(破損):◎ シート背もたれの傾き(背もたれ):◎ 頭部のはみ出し(はみ出し):◎ 胸部に受ける力(胸):◎

使用性評価詳細
取扱説明書など(説明書):4 着座のさせやすさ(着座):2 クルマへの装着性(装着):3 本体の構造(構造):4 本体表示(表示):3

対象:新生児~4才(体重18kgまで)

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乳児用で唯一の「優」を獲得した「キュピオ」は5.4kgと、CRSとしては比較的軽量な点が特徴。お母さんが取り付けることも考慮すれば、軽量である点は大きなメリットだ。価格は1万9799円(税込)。なお、画像中のイラストは取り付け方が後ろ向きであることを示している。

「キュピオ」の試験の様子。

2位:チャイルドガード1.0(タカタ)
前面衝突試験: 使用性評価試験:68点(17点)
重量:14.6kg

前面衝突試験詳細
破損:◎ 背もたれ:◎ はみ出し:◎ 胸:○

使用性評価詳細
説明書:4 着座:3 装着:5 構造:2 表示:3

対象:新生児~4才頃(体重18kgまで)

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「チャイルドガード1.0」は今回唯一となる、専用金具を用いて座席の固定する「ISO-FIX(アイソフィックス)」タイプ。子どもの乗せ降ろしがしやすいよう着座部が90度回転する機能を備え、かつ低重心設計。側面衝突も考慮し、衝突時に頭部を守るエアパッドを二重に備える。価格は8万4000円(税込)。

「チャイルドガード1.0」の試験の様子。

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続いては乳児用ランキング3・4位!

乳児用後ろ向き型3位&4位

3位:マイルストーン(グレコ)
前面衝突試験:良 使用性評価試験:52点(13点)
重量:8.2kg

前面衝突試験詳細
破損の状況(破損):◎ シート背もたれの傾き(背もたれ):○ 頭部のはみ出し(はみ出し):◎ 胸部に受ける力(胸):◎

使用性評価詳細
取扱説明書など(説明書):1 着座のさせやすさ(着座):3 クルマへの装着性(装着):3 本体の構造(構造):4 本体表示(表示):2 ※使い方動画あり

対象:0か月~11才頃

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「マイルストーン」は新生児~1才半頃用の後ろ向き型乳児用、1才頃~4才頃用の幼児用、3~11才頃までのジュニアシートとして長期間にわたって利用できるのが大きな特徴。ただし、使用性評価結果の点数が高いとはいえない。価格は3万2400円(税込)。

「マイルストーン」の評価試験の様子。

4位:クルット4s(エールベベ)
前面衝突試験:普 使用性評価試験:84点(21点)
重量:15.3kg 対象:新生児~4才頃(体重18kgまで)

破損:○ 背もたれ:◎ はみ出し:◎ 胸:○

使用性評価詳細
説明書:5 着座:4 装着:4 構造:4 表示:4 ※使い方動画あり

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「クルット4」シリーズのシートベルト仕様で、試験を受けたのはその中の「プレミアム」。独自のパワーアシストシステムにより、ボタンを押すだけでしっかりと固定可能。使用性評価試験は高得点の21点で、今回のトップ。価格はオープン。実売価格は6万円前後。

「クルット4s」の評価試験の様子。

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続いては乳児用ランキング5・6位!

乳児用後ろ向き型5位&6位

5位:フラディアグロウ(アップリカ)
前面衝突試験:普 使用性評価試験:68点(17点)
重量:13.8kg

前面衝突試験詳細
破損の状況(破損):○ シートの背もたれの傾き(背もたれ):◎ 頭部のはみ出し(はみ出し):◎ 胸部に受ける力(胸):○

使用性評価詳細
取扱説明書など(説明書):5 着座のさせやすさ(着座):4 クルマへの装着性(装着):2 本体の構造(構造):4 本体表示(表示):2 ※使い方動画あり

対象:新生児~4才頃(体重18kgまで)

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「フラディアグロウ」は、まだ首や腰がすわっていない時期用のベッド型、首がすわった頃から1才半位までの後ろ向き型、そして1才頃から4才頃までの前向き型と、3段階に変化させられるのが特徴。価格は5万9400円(税込)。

「フラディアグロウ」の評価試験の様子。

6位:マムズキャリーレジェ(シーエー産商)
前面衝突試験:推奨せず 使用性評価試験:52点(13点)
重量:4.9kg

前面衝突試験詳細
破損:× 背もたれ:× はみ出し:◎ 胸:◎

使用性評価詳細
説明書:1 着座:2 装着:3 構造:4 表示:3

対象:新生児~4才頃(体重18kgまで)

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「マムズキャリーレジェ」は軽量である点が特徴。ただし、動画をご覧いただければわかるが、試験で破損してしまった。使用性評価試験の結果もあまりいい点数とはいえない。価格は同社楽天市場店で9800円(税込)と1万円を切っている。

「マムズキャリーレジェ」の評価試験の様子。シートベルトの取り付け部が破損してしまう、少々驚かされる映像。

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最後は幼児用ベッド型

乳児用ベッド型

 乳児用ベッド型は今回、1製品のみなので、ランキングはなし。

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ベッド型の試験の様子。今回は、アップリカの「フラディアグロウ」のみが試験を受けた。フラディアグロウはベッド型、後ろ向き型、幼児用の前向きと3段階に変更して使用できる。

フラディアグロウ(アップリカ)
前面衝突試験:普 使用性評価試験:68点(17点)
重量:13.8kg

前面衝突試験詳細
破損の状況:○ シート底面の傾き:◎ 頭部の移動量:◎ 胸部に受ける力:○

使用性評価詳細
取扱説明書など:5 着座のさせやすさ:4 クルマへの装着性:2 本体の構造:4 本体表示:2 ※使い方動画あり

対象:新生児~4才頃(体重18kgまで)

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「フラディアグロウ」は、今回は唯一の乳児用ベッド型に変形させられる製品だ。首や腰のすわっていない乳児を水平に寝かせるのは、気道を圧迫しないことから呼吸を妨げず、のびのびとした理想の姿勢を維持できる利点があるとメーカーは述べている。価格は5万9400円(税込)。

「フラディアグロウ」の評価試験の様子。

2017年8月18日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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