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最終更新日:2024.12.02 公開日:2024.11.29

エンジンオイルを交換するタイミングはいつ? 簡単なセルフチェックの方法とコツを紹介。【カーマニア本田浩隆の愛車日常メンテナンス】

愛車のエンジンオイルを正しく交換できているだろうか? オイルの劣化はどうやって見極めればよいのだろう。“35歳以下のクルマ好き”が参加条件のカーミーティング「YOKOHAMA Car Session(YCS)」運営メンバーで、テクニカルライターとしても活躍中の本田浩隆さんに、オイル交換の基本を教えてもらった。

文=本田浩隆(YOKOHAMA Car Session)

写真=内藤敬仁

本田さんは知人が5年近く眠らせていた「シトロエン BX(最終型)」を自ら修理して路上復帰させたり、お世話になっている整備工場に足を運んでは、クルマの整備を手伝ったりするほどクルマいじりが好きだという。

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エンジンオイルの交換、放っておくとどうなる?

クルマにとって、エンジンは心臓、オイルは血液という文言は、誰しも一度は聞いたことがあるかと思います。エンジンには欠かすことのできないエンジンオイルですが、その役割については詳しく知らない方もそれなりに多いハズ。

エンジンオイルには、エンジンの冷却作用や金属パーツ同士の摩擦を軽減させたり、ピストンとシリンダーの隙間に入ることで密封させたり、油膜により錆を防ぐ役割があります。ガソリンさえ入れていればクルマは走り続ける、という考え方は半分正解ではありますが、一方でエンジンオイルは高温に晒され続け、清浄作用によりエンジン内のスラッジ(エンジン内に溜まった燃えカスや埃などの汚れ)を包み込んでしまうことから、確実に劣化していきます。

劣化したエンジンオイルをそのまま使用していると、エンジン内へのスラッジ堆積やオイル粘度の低下を引き起こします。最悪の場合、走行中に突然エンジンが焼き付いて大事故につながることもあります。焼き付いてしまったエンジンは載せ替えるしか方法がないため、高額かつ長期の修理に頭を抱えることになるでしょう。

オイル交換の重要性を確認したところで、クルマにとっての心臓をいたわるために、日常点検として覚えておきたいエンジンオイルのメンテナンス方法をご紹介します。

今回のエンジンオイル交換作業前/後のオイル比較。左の黒ずんでいる方が交換後の廃油で、右が新しいオイルです。

誰でも簡単、セルフチェック!

それでは、ボンネットを開けてオイルの量と汚れをチェックしてみましょう。

大抵のクルマには、エンジンオイル注入口の近くに「オイルレベルゲージ」が備わっています。レベルゲージの位置がわからない場合は、取扱説明書を参照してください。

エンジンオイルの量を正確にチェックするために、まずはクルマを水平な場所に停め、エンジンを停止してから10分程度放置します。

次にウエス(メンテナンス用の雑巾)を準備して、レベルゲージを引き抜き、レベルゲージの先端についたオイルをウエスで拭います。これは走行中に付着した余分なエンジンオイルを一度取り除く必要があるためです。この時に、ウエスについたオイルの色が黒く変色しているようなら、オイルが劣化していることになります。

オイル交換を実施したルノー カングー(KCK4M)の場合、ボンネットを開けたこの場所にオイルレベルゲージがあります。車種によって仕様は異なりますが、多くの場合、丸いピンを引き抜くタイプになっているハズです。

オイルの色を確認したら、次にオイルの残量を確認するために、もう一度レベルゲージを元の位置に差し込み、すぐに引き上げます。レベルゲージの先端に振られた目盛の上限から下限の間にオイルがついていれば、オイル量は適正であると判断できます。

もしエンジンオイルの量が下限を下回っている場合は、すぐにエンジンオイルを適量になるまで補充してください。短期間の走行でオイルが減少する場合は、オイル漏れや異常燃焼等が原因として考えられますので、整備工場で適切な処置を受けてください。

オイル量のチェックが完了したら、先端についたオイルをウエスで拭い、元の位置に差し込んでオイルの状態確認は終了です。

オイルレベルゲージの先端部分です。オイルレベルが上限と下限の間にあれば、エンジンオイルの残量が適量であると言えます。

オイルの変色は、フィラーキャップを外した蓋の裏側を見ても確認できます。色味だけならこちらの方がレベルゲージより見やすいです。

実際にオイル交換してみよう!

オイル交換の頻度は、一般的な交換周期は“半年”もしくは“5000km”が目安です。また、オイル交換2回に1回の頻度で、オイルの汚れを取る「オイルフィルター」の交換をおすすめします。使用するエンジンオイルの種類(粘度・グレード等)やオイル容量、交換サイクルは車種によって異なりますので、取扱説明書やメンテナンスノートを確認しましょう。

今回は“下抜き”にてエンジンオイルとオイルフィルターを交換します。下抜きは、車体をリフトアップして、オイルパン(エンジン下部にある、エンジンオイルをためておくパーツ)のドレンボルトからオイルを抜く方法です。一方で“上抜き”は、オイルレベルゲージの挿入部からチューブを差し込み、ポンプでオイルを吸い上げる方法です。ポンプさえ用意すれば、上抜きの方が楽にオイル交換ができます。

エンジンオイルを抜く前に、フィラーキャップ(エンジンオイル注入口のフタ)を開けておきます。オイルを抜いた後にフィラーキャップが緩まず、エンジンオイルが入れられない! という状況は、クルマが動かせなくなる大惨事を意味しますので、先にフィラーキャップを開けることだけは徹底してください。

次に車体をジャッキアップし、ドレンボルト(オイルパンに付いているボルト)を開けます。この時、廃油受けを用意しておきましょう。なお、車体底部にはエンジンだけでなく、トランスミッションのドレンボルトもついているため、誤ってトランスミッションのドレンボルトを抜かないよう、エンジン側についているドレンボルトであることを確かめてから緩めてください。

今回はオイル交換の様子を見やすくするために整備用リフトを使用しています。オイルを下抜きするだけであれば、ジャッキアップで充分です。この写真ではドレンボルトを緩めています。

流れ出るエンジンオイルを廃油受けに溜めているシーンです。廃油が完全に流れ出るまで時間がかかるので、焦らず待ちましょう。

工具は、最初の締め付けを緩める時だけ使用し、少し緩んできたら、手でドレンボルトを緩めます。

ドレンボルトが完全に緩んだら、勢いよくオイルが流出しますので、廃油受けにドレンボルトを落とさぬよう注意しつつ、素早くドレンボルトを引き抜きます。ドレンボルトはパーツクリーナーでよく清掃しておき、新品のワッシャーを組付けます。

流れ出るエンジンオイルの勢いが滴下する程度になったら、ワッシャーを組付けたドレンボルトをオイルパンに組付け、規定トルクで締め付けておきます。規定以下のトルクはオイル漏れの原因となり、オーバートルクはオイルパンのネジ山を壊してしまいますので、慎重に作業してください。

なお、廃油の処理については、各自治体によって方法が異なります。たとえば廃油を布や紙にしみこませたり、エンジンオイル専用の凝固剤で固めたりすることで、処理を受け付けてくれるケースが多いです。オイル交換をする際は、事前に各自治体のルールを確認しておきましょう。

パーツクリーナーがあれば金属部品、金型、精密機器等の油汚れを素早く除去できるので、1本持っておくと便利です。

パーツクリーナーは「パーツ&ブレーキクリーナー(またはブレーキ&パーツクリーナー)」という名称でさまざまなメーカーから商品化されています。大容量の840mlが使いやすく、逆さにしても噴射できるタイプがおすすめです。

エンジンオイルフィルター交換のポイントは?

作業用に用意したルノー カングー(型式KCK4M)の場合、エンジンオイルフィルターを交換するにはエンジン前部のインジェクターカバーを取り外します。フィルターの取り外しには、狭い場所でも巻きつけることで力をかけやすいベルトタイプのオイルフィルターレンチがおすすめです。

オイルフィルターを取り外して、周囲を清掃してから、新品を取り付けます。この時、新品のオイルフィルターのゴムパッキン部に薄くエンジンオイルを塗っておきましょう。密封効果を発揮し、パッキンの密着を補助します。

輸入車の場合、各パーツの取り付けが整備しづらい設計になっていることがあります。その点、国産車は整備のこともよく考えて設計されている場合が多いです。

オイルフィルターを交換する際は、忘れずにゴムパッキン部にエンジンオイルを塗っておきましょう。

オイルフィルターを取り付けたら、こちらも規定トルクで締め付けます。

最後に、エンジンオイルを規定量より500~1000cc程度少なめに入れて、フィラーキャップとレベルゲージを戻します。

ここでようやくエンジンを始動し、10秒程度アイドリングをしてエンジンオイルを各部になじませます。その後エンジンを停止し、漏れがないことを確認してください。

レベルゲージでエンジンオイル量が上限まで入っている場合は、ここで作業終了です。上限まで入っていない場合は、フィラーキャップを開けて油量を調整してください。これでオイル交換完了です。

いかがでしたか? エンジンオイルのメンテナンスはクルマにとって非常に重要です。

お出かけ前のオイルチェックは、特に長距離走行時のトラブルを未然に回避するには欠かせません。紹介した点検方法を、ぜひとも習慣にしていただきたいものです。

エンジンオイル注入口に漏斗(ろうと)を挿し、オイルを注入します。溢れると大変なので、タンクの容量と用意したオイルの量を意識しながら、ゆっくりと注ぎましょう。

今回は欧州車向けACEA A3/B4規格に適合したSUNOCOの「SVELT 5W-40」を使用しました。このオイルはエンジン保護性能と耐蒸発性に優れており、エンジンオイルの減りがはやいと言われる欧州車と相性が良いのでおすすめです。

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次回は12月5日からスタートです!
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