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最終更新日:2021.12.31 公開日:2021.12.31

30年振りの栄冠!第4期ホンダF1活動の7年間の戦い。その3:2019-2021年レッドブル編

2015年シーズンから始まったホンダの第4期F1活動も今シーズン2021年で幕引きとなる。この7年間のホンダの戦いにおいて、最も輝いたとも言える第3シーズン、2019年から2021年までのレッドブルとの活動をモータースポーツライターの大串信が解説。

文・大串信(モータースポーツライター)

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レッドブルにとって初めてのメーカーワークスPU

2019年5月のバルセロナテストでのレッドブルRB15 写真=ホンダ

 2015年から第4期F1活動を開始したホンダは、短時間で開発したパワーユニット(以下PU)のパフォーマンスと信頼性の確保に手間取って成績不振に陥り、最初のPU供給先であったマクラーレンとの関係が悪化、提携は2017年限りで打ち切られることになってしまった。

 ホンダは慌てて2018年以降の提携相手を探すことになったが、2017年シーズンは始まっており、すでにどのチームも2018年のPUに見当をつけて新型車の開発に着手する時期だったので容易に話は進まなかった。そんなときホンダと接触したのがレッドブルグループだった。

 オーストリアの世界的エナジー飲料メーカーである「レッドブル」は、1990年代からスポンサーとしてF1に関わってきたが2004年末にはジャガー・レーシングを買収して独自のF1チーム「レッドブル・レーシング(以下レッドブル)」を設立、2005年シーズンから参戦した。さらに2006年にはミナルディを買収して兄弟チーム「スクーデリア・トロロッソ(以下トロロッソ)」を設立。グループ内でレッドブルを1軍、トロロッソ(現アルファタウリ)を2軍と位置づけてF1へ参加している。

 本家レッドブルは、プライベートチームとして当初コスワースのカスタマーエンジンを使用して闘い始めた。その後フェラーリのカスタマーエンジンを経て、2007年にはルノーのカスタマーエンジンを入手。そのルノー製PUに、エイドリアン・ニューウェイが開発したシャシーと組み合わせた。ドライバーとして、トロロッソで好成績を挙げたセバスチャン・ベッテルが2009年に昇格すると成績が急上昇。それにより2010年から2013年にかけてドライバーズ・コンストラクターズ両部門で4連覇を達成した。

 だが2014年にF1車両規定が改定され、2.4リッターV8気筒エンジンから1.6リッターV6気筒エンジン+ハイブリッドシステムによるPU時代となった。このPU時代になるとルノー製PUはメルセデス製PUに対して劣勢となり、それとともにレッドブルとルノーの関係も徐々に悪化していった。こうしてレッドブルは、メルセデス製ワークスPUに対抗できるPUを水面下で探し始めた。

 2018年、急遽トロロッソがホンダ製PU採用を決めたのは、こうした状況の中でのことだった。レッドブルの思惑は、まずは兄弟チームであるトロロッソを使ってホンダ製PUの実力を試し、ルノー製PUと天秤にかけたのである。

 そのトロロッソ・ホンダの2018年は、必ずしも好成績を納めたわけではなかった。しかし、その将来性を認めたレッドブルは、2019年からルノー製PUをホンダ製へ換えると決断。これはレッドブルにとって初めてのメーカーワークスPUだった。

4F1活動での初優勝

2019年オーストリアGP表彰台でのマックス・フェルスタッペンと、ホンダの田辺豊治テクニカルディレクター 写真=ホンダ

 ホンダは2018年以降、開発体制と実戦体制を分離して効率化を進める一方、MGU-Hのタービン周りに大規模な設計変更を加えてPUのパフォーマンスを引き上げていた。この改良には、ホンダジェット開発を通して蓄積した航空機技術が流用されたという。

 2019年、ホンダ製PUを手に入れたレッドブルはドライバーにマックス・フェルスタッペンとピエール・ガスリーを起用して闘い始めた。フェルスタッペンは2016年、ガスリーは2019年にそれぞれトロロッソから昇格したドライバーである。

 フェルスタッペンはこの年のオーストリアGPで、ホンダの第4F1活動にとっては初めての優勝を記録した。ホンダ製PUF1参戦後5年をかけてようやく本来のパフォーマンスを発揮し、F1の頂点に到達したのである。この年フェルスタッペンは3勝を記録、ドライバー部門で3位、レッドブル・ホンダはコンストラクター部門で3位となった。これも第4F1活動での提携相手としては最上位の成績であった。

 2020年は、依然としてメルセデスPUが圧倒的に速かったがホンダPUの成績はさらに安定して上向きとなった。シーズンは新型コロナ禍により開幕が遅れたうえレース数も縮小されたが、フェルスタッペンは開幕から6戦連続で表彰台に上がり、シーズン通算2勝を記録してシリーズチャンピオン争いに加わり、ドライバー部門でシリーズ3位となった。レッドブル・ホンダは、コンストラクターズ部門で前年を上回る2位となった。

 しかし事態は急転した。ホンダが10月、突如としてカーボンニュートラル実現に向け経営資源を集中させるため翌2021年シーズン限りでF1事業から撤退することを発表したのである。

2020年のF1、70周年GP(イギリス)で優勝したフェルスタッペン 写真=ホンダ

ラストイヤーで30年ぶりにチャンピオン獲得

2021年シュタイアーマルクGPの優勝を喜ぶレッドブルとホンダのスタッフ 写真=ホンダ

 いよいよ王者メルセデスに迫りながら第4F1活動最後のシーズンである2021年を迎えたレッドブル・ホンダは、皮肉なことに開幕からメルセデスを圧倒する速さで突進を開始した。

 その速さはホンダPUも大きな要因の1つだった。ホンダは撤退決定後に燃焼室を新設計としたPUの開発を決め、2021年シーズンに投入していた。改良は燃焼室だけにとどまらず、PUの重心位置や全高を下げるなどの寸法を変更するほどの大掛かりなもので、新設計と呼べるものだった。

 開幕戦を2位で終えたフェルスタッペンは、第2戦で優勝、2回の2位を挟んで第5戦で2勝目を挙げた。これ以降、レッドブル・ホンダは、フェルスタッペンのパートナーとなったセルジオ・ペレスの1勝を含む5連勝、うち3戦はフェルスタッペンのポールトゥウインという勢いで勝ち進み、フェルスタッペンは王者メルセデスのルイス・ハミルトンを抑えてポイントリーダーとなり、シリーズの主導権を握った。

 しかしシリーズ終盤、ハミルトンが反撃、チャンピオン争いは同点となってシリーズ第22戦最終戦で決戦を迎えることになる。最終的には、決勝レースの最終周に劇的な決着を迎え、フェルスタッペンが優勝しシリーズチャンピオンとなった。ホンダユーザーとしては、1991年にアイルトン・セナがチャンピオンとなって以来で、実に30年ぶりの栄冠であった。

 こうしてホンダは、2015年以来7シーズンにわたる第4F1活動を締めくくった。ただし2022年以降、ホンダとしてはPU供給を行わないが、ホンダの持つ知的財産等の利用権をレッドブルが設立したPU製造会社「レッドブル・パワートレインズ」に譲り渡し、レッドブルがそれに基づいて独自のPUを製造するという新たな協力体制が築かれた。さらに2022年シーズンいっぱいは、そのPUの組み立てを含む支援をホンダが行う予定となっている。

2020年アブダビGPでのホンダとレッドブルスタッフの記念撮影 写真=ホンダ

2019年~2021年ホンダ×レッドブル リザルト

2019年 マシン/PU RB15/RA619H
コンストラクター年間ランキング3位(417ポイント)
ドライバー年間ランキング
マックス・フェルスタッペン 年間ランキング3位(278ポイント) 決勝ベストリザルト優勝
ピエール・ガスリー 年間ランキング7位(95ポイント) 決勝ベストリザルト4
アレクサンダー・アルボン 年間ランキング8位(92ポイント) 決勝ベストリザルト4

※アルボンは第13戦ベルギーGPからレッドブルに移籍。ガスリーは第13戦ベルギーGPからトロロッソに加入

2020年 マシン/PU RB16/RA620H
コンストラクター年間ランキング2位(319ポイント)
ドライバー年間ランキング
マックス・フェルスタッペン 年間ランキング2位(223ポイント) 決勝ベストリザルト優勝
アレクサンダー・アルボン 年間ランキング7位(105ポイント) 決勝ベストリザルト3

2021年 マシン/PU RB16B/RA621H
コンストラクター年間ランキング2位(585.5ポイント)
ドライバー年間ランキング
マックス・フェルスタッペン 年間ランキング1位(395.5ポイント) 決勝ベストリザルト優勝
セルジオ・ぺレス 年間ランキング4位(190ポイント) 決勝ベストリザルト1

2019年シーズンを戦ったホンダのPU、RA619H 写真=ホンダ


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