マツダ「RX-7」の25年間を描いたドキュメンタリーがカンヌとIAFFで受賞! 80歳の女性オーナーと愛車をつないだ、一通の手紙——吉田由美の「君はクルマで何をする?」#04 | KURU KURA(くるくら)

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公開日:2026.10.01

マツダ「RX-7」の25年間を描いたドキュメンタリーがカンヌとIAFFで受賞! 80歳の女性オーナーと愛車をつないだ、一通の手紙——吉田由美の「君はクルマで何をする?」#04

「International Auto Film Festa 2026」でグランプリに輝いた、マツダのドキュメンタリー「RX-7と過ごした25年間、最後の3日間〜クルマが残してくれたもの」。

25年間、愛車のRX-7と過ごしてきた80歳の女性。その最後の3日間を追ったマツダのドキュメンタリーが「International Auto Film Festa 2026」でグランプリを受賞。さらに「カンヌライオンズ2026」でも評価された話題作の舞台裏を、IAFFアンバサダーの吉田由美が紹介します。

「International Auto Film Festa 2026」でグランプリに輝いた、マツダのドキュメンタリー「RX-7と過ごした25年間、最後の3日間〜クルマが残してくれたもの」。

文と写真=吉田由美

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RX-7と過ごした25年間の物語

「クルマは人生と共に駆け抜ける友達」——。そんな言葉がぴったりの作品が、今年の「International Auto Film Festa 2026(IAFF)」でグランプリに輝きました。

その作品とは、マツダのドキュメンタリー映像「RX-7と過ごした25年間、最後の3日間〜クルマが残してくれたもの」。25年間、大切に乗り続けたRX-7を手放すことになった80歳の女性オーナーと、愛車との最後の日々を描いた作品です。

しかも、この作品が賞に輝いたのはIAFFだけではありません。世界の広告・コミュニケーション業界で権威ある「カンヌライオンズ2026」でもブロンズアワードを受賞。国内外で高く評価された話題の作品です。

IAFFのアンバサダーを務める私、カーライフエッセイストの吉田由美は今回、埼玉県大宮のミニシアター「OTTO」で行われた受賞作品の上映会とトークショーに参加。作品を手掛けたLUCK株式会社の映像監督・小川凛一さんから、制作の裏側にある知られざるエピソードを聞いてきました。

80歳の女性オーナーと奇跡の出会

そもそも、この作品はマツダからの「マツダ車のおかげで前向きに生きている人を探してほしい」という依頼から始まりました。

リサーチを進めるなかで小川監督が出会ったのが、長崎県に暮らす西本尚子さん。25年間、大切に乗り続けてきた愛車のスポーツカー「RX-7(FD3S)」を手放そうとしている女性でした。

80歳を前に免許を返納することを決めた西本さんが、長年連れ添ったRX-7の譲渡先を探している——。その話を知った小川監督は、

「これだ!」

と直感したといいます。

そこで企画をマツダに提案したところ、なんとそのタイミングで、マツダ社内でも「そのRX-7を会社で引き取ろう」というプロジェクトが動き始めていました。まさに、クルマが人と人をつないだ運命的なタイミングでした。

ドキュメンタリーの撮影現場で、小川監督が何より大切にしたのは、「西本さんという人を、見る人に好きになってもらうこと」でした。

ところが、西本さんはとても几帳面で、しっかりとした方。カメラを向けて質問すると、きちんと整理された答えが返ってきます。そのため、なかなか本当の気持ちが見えてこなかったそうです。

そこで小川監督は、あえてインタビューをやめることにしました。

「日常の会話を重ねることで、自然な言葉を引き出そうと思ったんです」

撮影2日目には、西本さんを「お母さん」と呼べるほど距離が縮まり、撮影した映像は約50時間にも及びました。

25年間、愛車のRX-7を大切に乗り続けてきた西本尚子さん。愛車との最後の日々が、一本の映像作品になった。

25年間、愛車のRX-7を大切に乗り続けてきた西本尚子さん。愛車との最後の日々が、一本の映像作品になった。

そして迎えた3日目の夜。

「はい、撮影終了です!」

そう告げたあとも、実はカメラだけをひっそり回し続けていました。撮影が終わったと思い、ほっと胸をなで下ろした西本さん。そのとき、ふと口からこぼれたのが、

「友達だった。友達がいなくなっちゃうね……」

という言葉でした。それまで西本さんは、RX-7を「前向きに手放す」と話していました。でも、本当は寂しかった。

25年間ともに過ごした愛車への深い愛情が、何気ないひと言になってあふれ出た瞬間でした。そしてこの言葉こそが、この作品の核になったのです。

編集作業もまた、極めてアナログで熱量の高いものでした。50時間分の素材を全て見返し、発言を一言ずつ付箋に書き出し、並べ替える作業を行なったとか。若いクリエイターであれば、AIの文字起こし作業に頼りがちなこの時代に、あえて映像の声の温度感や息遣いを体感しながら紡ぎ出された10分間。音楽にはドビュッシーの「月の光」をイメージしながら、1曲の中で感情の起伏が完結するよう、繊細に作られています。

トヨタの豊田章男名誉会長の「工業製品の中で「愛」がつくのはクルマだけ」という有名な言葉がありますが、小川監督の映像はまさにそれを証明してみせました。

25年間をともに過ごしたRX-7は、現在もマツダの広報車として活躍中。一台のクルマが、人から人へ物語を受け渡している。

25年間をともに過ごしたRX-7は、現在もマツダの広報車として活躍中。一台のクルマが、人から人へ物語を受け渡している。

クルマを愛でる全ての人へ

最後に小川凛一監督は、

「これから自動運転が進み、クルマは効率的な移動ツールとしての存在と、愛すべき趣味の存在へと二極化していくはず。だからこそ、『クルマは人生を豊かにしてくれる楽しい存在だ』という側面を、映像を通して伝えていきたい」

と語っていました。

小川監督は、企業コミュニケーションやドキュメンタリーの分野で独自のアプローチを貫き、近年、高い評価を得ている注目の映像監督です。

「商品の宣伝を過度にするのではなく、見る人がその企業や人を好きになる映像を作る」

という美学が、今回の世界的な賞の獲得へと結びついたのではないでしょうか。

私たちが普段、何気なくハンドルを握り、風を切る瞬間。その足元には、たくさんの思い出とドラマが詰まっています。

皆さんもぜひ、マツダの公式YouTubeやIAFFの公式ホームページで、この心温まるドキュメンタリーを観て、ご自身と愛車との日々を振り返ってみてはいかがでしょうか?

ちなみにIAFFは、プロ・アマ問わず誰でも作品に応募可能です。クルマやカーライフにまつわるショート動画なら、すべて大歓迎! ちなみに私も手作りの作品を応募しています!(笑)

【MAZDAドキュメンタリー】RX-7と過ごした25年間、最後の3日間 〜クルマが残してくれたもの〜

そして、もうひとつの「グランプリ」

当日、会場は満席。トークショー終了後、マツダの元広報・田中秀昭氏と雑談をしていたとき、私は以前から気になっていたことを聞いてみました。

「西本さんが、数ある譲渡先のなかからマツダ広報にRX-7を譲る決め手となった、あの手紙は誰が書いたんですか?」

すると田中氏は、さらりと、

「あれ、私が書いたんです」

と。

撮影終了を告げたあとも、実はカメラを回し続けていたという小川監督(写真右)。そこで語られた「友達がいなくなっちゃうね……」という言葉が、作品の核となった。

撮影終了を告げたあとも、実はカメラを回し続けていたという小川監督(写真右)。そこで語られた「友達がいなくなっちゃうね……」という言葉が、作品の核となった。

なんと、あの手紙を書いたのは田中氏だったのです。西本さんの心を動かした、あの一通の手紙。もしあの手紙がなければ、RX-7とマツダの出会いも、この感動的な作品も生まれていなかったかもしれません。

そう考えると、私は田中氏にも、もうひとつのグランプリを差し上げたい!そして、25年間西本さんが大切に乗ってきたRX-7は、現在もマツダの広報車として活躍しています。もちろん、きちんとメンテナンスされながら。

一台のクルマが人と人をつなぎ、25年分の思い出を次の物語へと受け渡していく。これもまた、クルマだからこそ生まれた、素敵な物語なのだと思います。

INFORMATION
日本発の自動車映画祭
「International Auto Film Festa powered by DUNLOP(IAFF)」
https://autofilmfesta.net/

自動車映画祭「International Auto Film Festa」が、2026年9月3日に埼玉県さいたま市のミニシアター「OttO」で開催された。

自動車映画祭「International Auto Film Festa」が、2026年9月3日に埼玉県さいたま市のミニシアター「OttO」で開催された。

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