外環道トンネル工事による陥没事故、来春の地盤補修工事へ向けNEXCO東日本がオープンハウスを開設
東京都調布市の東京外郭環状道路(外環道)トンネル工事のルート上で発生した陥没事故について、東日本高速道路(NEXCO東日本)など事業者3者は9月11日~12日、調布市内の小学校に「オープンハウス」を開設。今後予定する地盤補修工事についての住民説明会を開催した。
東京外かく環状道路事業の現状
外環道は、都心から約15kmの圏域で東関道、京葉道路、常磐道、東北道などを環状に連絡する延長約85kmの自動車専用道路で、このうち首都高湾岸線と接続する高谷ジャンクションまでの約49kmが開通済み。今後の計画では関越道から東名高速へ接続し、その先の湾岸道路まで接続する予定となっている。
現在、工事が進められているのは関越道から東名高速までの16km区間。この区間は住宅地が多いことなどの理由により、2007年(平成19年)4月に地下40mの大深度地下を使う方法に都市計画が変更され、2009年(平成21年)に整備計画が決定して事業化されている。
今回実施される予定の補修工事は、このうちの関越道から東名高速までの工事区間で、調布市内で発生した陥没および空洞に対するもの。対象はシールドマシンによるトンネル工事で地盤が緩んだルート上の幅16メートル、長さ220メートル、深さ47メートルの区間。
来春から補修工事に入り、工期は2年を見込んでいるという。その一方でトンネル工事再開時期の見通しは示されていない。
地盤補修工事は実績ある工法で
説明会で示されたもっとも有力な工法は、深さ40m超えの穴を掘削し、そこへ円柱状にセメント系固化材料を高圧で噴射して流し込む「高圧噴射攪拌工法」というもの。これによって出来上がった改良体は、直径約3m、長さ30m~40mほどあり、これを必要な箇所に複数施工していく。NEXCO東日本によれば、この工法は他の多くの高速道路工事で採用された実績のあるもので信頼性は高いと話す。
ただ、この工事にあたっては、対象範囲の家屋約30軒を解体する必要がある。すでに半数で同意を得られているとのことで、NEXCO東日本では今秋には解体工事に着手する計画で交渉を進めているとした。
補修材料・泥土の運搬はどこから行う?
この工事で課題となるのは、その準備作業についてだ。工事をするためにはヤードの設営や地下の泥土を搬出する作業、さらには地中に流し込む固化剤を運ぶための管を設置する必要がある。この日はこれを実現するためのプランも複数用意されたが、現時点ではどの方法で進めるかは決まっていない。
NEXCO東日本によれば、この補修工事に対して地元住民からは、「植物が育たなくなるのではないか」と言った声や、提案された工法に対して「地下水が遮断されるのではないか」との声が上がっていたという。
それに対して同社は「植物が育つだけの深さを確保して対応していく」とし、地下水の遮断に対しては「220mの壁を造ったときの影響を予測すると、浅い層、深い層いずれも水位の低下が10cm程度でとどまり、本来の地下水の変動幅よりも小さい」とした。
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外環道開通後のメリットを紹介
一日でも早い開通を願って
外環道は渋滞の激しい都心部を通過することなく、接続する道路と連結することで交通の円滑化が図れることが期待されている。すでに開通している高谷JCT~大泉JCTに至る区間だけを見てもその効果は明らかだ。実際、インターチェンジ付近では工場や物流施設の進出がケースが増え、一般道ドライバーにとっても利便性は大きく向上した。これは東京一極集中を避ける意味でも大きな効果があったと言っていいだろう。
さらに言えば、道路のネットワークが拡大することで様々な事象に対して回避行動が取りやすくなり、これは首都直下型地震や大規模水害といった災害リスクを緩和する観点からもきわめて有効だ。工事によって陥没や空洞が発生したことは、多くの住民に不安を招くことになったのは事実で、まずはこの問題を一日でも早く解決するべきであることは言うまでもない。
その一方で、外環道の整備が社会インフラとして大きな意味を持つこともまた事実だ。地域住民の方との合意がスムーズに進み、一日も早く開通にこぎつけることを期待したいと思う。