クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2023.06.16 公開日:2022.06.25

ラゲッジスペース容量の測定方式でJISではなくVDAと表記されるのはナゼ?

車のカタログなどでは、ラゲッジスペースの容量をリットルで表記している。その表記には「容量数値はVDA方式による」などという注釈が付いている。測定方式にはJISもあるのだが、VDAが多くのメーカーで採用されている理由と、その測定条件を紹介。また実際にVDA方式による測定に挑戦した動画を掲載。

VDA=ドイツ自動車工業会

ラゲッジスペースの容量はどうやって測っている? 写真=メルセデス・ベンツ ※写真はイメージです

 日本国内向けの車のカタログなどでは、ラゲッジ(荷室)スペースの容量をリットルで表記していることが多い。容量を表記した後には「VDA方式による」などという注釈が付いていることが多い。このVDA方式とはどのようなものなのだろうか?

このラゲッジスペース容量をリットルで示すVDA方式のVDAとは、Verband der Automobilindustrie=ドイツ自動車工業会のこと。ドイツの自動車メーカーや関連部品メーカーなどといった自動車関連製造業者が会員となっている団体で、ドイツにおけるクルマに関するさまざまな規格を定めたり、車に関する法整備を働きかけたりする団体だ。日本で言えば一般社団法人の自動車工業会のようなものとなる。このVDAが定めた規格は、ドイツだけでなくヨーロッパ・世界基準とされるものが多く、日本メーカーでも、その規格に準じた部品を製造するケースがある。VDA以外の測定方式としては、DIN(ドイツ標準規格)、JIS(日本工業規格)、ISO(国際規格)などがある。ちなみにDINは、カーオーディオやナビゲーションの筐体の大きさである「1DIN(ワンディン)」のDINを規格した団体だ。

このようにラゲッジスペース容量の測定方式はさまざまあるのだが、幅×奥行き×高さで算出すれば、大差ないのでは?という気もする。しかしラゲッジスペースは側壁が傾斜していたり、タイヤハウスなどの凹凸があり、床面も台形もしくは不定形なので、三辺のみの計算で実像に近づけるのは難しい。ではVDA方式は、どのような測り方なのだろうか?

容量1リットルの箱型の測定具

手前がVDA測定具と同サイズである200×100×50mmの箱。後ろは550mlのペットボトル 写真=小林祐史

 その測定方式は、ラゲッジスペースに200×100×50mmの立方体が何個入るかで測定している。この箱の容量は1リットルで、箱の数がそのままラゲッジスペース容量となる。これが、測定具(物差し)になっているわけだ。一方で箱が収まらないスペースは勘定に入らないため、実容積というより実用範囲を示しているという考え方のようだ。

ところで海外の雑誌などで同一車種をVDAとDINで測定すると数リットルから数十リットルの差が出ることがある。なぜ、そのような差が生じるのだろうか? それは、それぞれの測定具の大きさが異なるからだ。

DINのサイズは、400×200×100mmで容量8リットル。これが収まった数×8リットルでラゲッジスペース容量を表示している。

つまりVDAは、測定に用いる立方体のサイズが小さく、狭い隙間にも詰め詰め込むことができるため、DINよりも容量が大きい結果となるのだろう。

ちなみにISOとJISの測定具は、VDAとDINの両方が採用されている。ISOは1990年代に定められた規格で、当時、世界で主流となっている国の規格を参考に定めたものが多い。ラゲッジスペースの容量測定方法は、VDAとDINが主流だったため、両方の測定具を用いた規格となったのだろう。JISはISOを翻訳したものとなっている。

測定条件には積み方を工夫する余地あり

JIS測定方法の規格名称は「D 303 : 1988 乗用車-荷室-標準容積の測定方法」というもので、測定条件が明記されており、代表的なものは下記になる。

  • 荷室には、製造業者によってあらかじめ設定されたすべての備品(スペアタイヤ、ジャッキなど)が収められていること。他の備品、例えば救急箱、消火器などは、備え付けのものか単なるオプションかを問わず、特に考慮しない
  • 測定具のタイプA(DINサイズのもの)又はタイプB(VDAサイズのもの)を適宜用いて、容積が最大となるよう測定具を積み込む。測定具を積んだ状態で、荷室のトランクリッドは正規に閉じなければならない

このように条件は「最大」や「正規に閉じなければならない」のみで、測定具同士やラゲッジスペース壁面との間隔や、測定具の材質などの条件は明記されていない。それらの点を踏まえて、ユーザー側もラゲッジスペース容量の数値は「目安」ということを頭の隅に入れておいたほうが良いだろう。

このような測定方法や写真などの情報だけで、ラゲッジスペース容量の実像を掴むには、ユーザー側でさまざまな想像力を働かせることが必要となる。厳しい表現をすると、詳しい知識や経験が少ない人には、ピンとこない情報とも見えてしまうかも。

アパレルや通販では実物の試着をしなくても服のサイズを判断できるサービスが登場している時代なのでそろそろ、車も従来の読む側に努力が必要な情報を、補完する新しいサービスが登場してほしい気もする。カタログも紙媒体からウェブへと移行している今だからこそ、新しいカタチがあるはずだ。

トヨタ ヤリスクロスのラゲッジスペースにゴルフバックを積んだところ。写真左側のゴルフバックの頂部に注目。側壁の凹みに差し込むかたちで収められている。ラゲッジスペースの実態をつかむには、1枚の写真からさまざまな情報を読み取る力が必要 写真=トヨタ

トヨタ ヤリスクロスのラゲッジスペースのサイズを長さで示したもの。これだけだと荷物がどうのように収まるかは、写真を見る側に想像力が必要となる 写真=トヨタ

VDAの代用品で測定してみた

実際にVDA方式で測定するには何に工夫が必要なのかを実体験してみようということで、代用品の発泡スチレン製ブロックでコンパクトカーのラゲッジスペース容量を測定してみることに挑戦してみた。

VDA測定具に近いサイズの代用品として、左の210×100×60mm台の発泡スチレン製ブロックを用意した 写真=小林祐史

トヨタ ヤリスのラゲッジスペース。デッキボードを下段にした状態で、容量は270リットルと発表されている 写真=小林祐史

【倍速動画で見る】素人がVDA方式で測定

カタログどおりのブロックを積むにはさまざまな工夫が必要 動画=小林祐史

発泡スチレン製ブロックを積んだヤリスのラゲッジスペース。後席バックレストの高さまでで179個が積めた。天井やリアウインドウのすれすれまで積み、バックレストや側壁との隙間にブロックを詰め込めば、発表どおりの270リットル=270個が積めそうだ 写真=小林祐史


各自動車メーカーのラゲッジスペース写真は
下記の「この記事の写真を見る」をクリック

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(12月1日まで)
応募はこちら!(12月1日まで)