クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

道路・交通最終更新日:2022.06.10 公開日:2022.06.10

【再掲記事】「自分の命は自分で守れる子供になってほしい。」/三陸鉄道|東日本大震災、震災後の記事を振り返る

東日本大震災から11年。次の大震災に備えて、この経験をしっかり覚えておくために、「くるくら」では震災3年後の被災地の状況を伝えた記事を再掲することにしました。13回目は「自分の命は自分で守れる子供になってほしい。/三陸鉄道」です。

文・芳野 珠美

記事の画像ギャラリーを見る

本記事は2014年2月に「メイトパーク」(「くるくら」の元サイト)に掲載した内容の再掲です。現状を伝える記事ではありませんのでご注意ください。


「自分の命は自分で守れる子供になってほしい。『まだ震災?』と言われても続けていきます」/三陸鉄道「震災学習列車」|特集:「被災地は今。」(JAF Mate誌 2014年3月号掲載)_01

三陸鉄道「震災学習列車」

震災学習列車の取り組みは2012年6月から始めまして、2014年1月末までで157団体、7,381名の方が参加されています。アメリカ、オーストラリア、中国、フィリピンなど海外からの参加もあります。

貸切の列車に乗ってもらい、40分の区間を70分かけながら、ガイドが震災時のお話をします。途中線路上で列車を止めてお話することもあります。うちは最大4両編成ですので、ガイドも4人。私ともう一人、それから駅長と、運転士です。普通の列車も運行しますので、スケジュール編成が至難の業です。今のところ、旅行会社の募集方ツアーは受け入れていないんですが、10人ぐらいの知り合いで貸切にしていらっしゃる方もいますよ。修学旅行や研修旅行なども多いですね。

最初は、次世代の子どもたちに、来て・見て・感じてほしい、将来の防災に役立ててほしいという気持ちから始めた企画です。大人は防災について知識がありますよね。でも子どもたちはどうなのか。起きたことを聞いて、見て、そして命とは絆とは、そこも考えてほしいと。

ですから、体験した子どもたちが「今日学習したことを、家に帰って親にも伝えます」と言ってくれたことが一番うれしかったですね。「今の避難場所では甘いなと思った」という意見もありました。

「自分の命は自分で守れる子供になってほしい。『まだ震災?』と言われても続けていきます」/三陸鉄道「震災学習列車」|特集:「被災地は今。」(JAF Mate誌 2014年3月号掲載)_02

後ろに見えるのは、期間限定のこたつ列車。震災学習列車以外にも、ユニークな企画列車も運行している。南リアス線は4月5日(土)から、北リアス線は4月6日(日)から、いよいよ全線運行を再開。

「自分の命は自分で守れる子供になってほしい。『まだ震災?』と言われても続けていきます」/三陸鉄道「震災学習列車」|特集:「被災地は今。」(JAF Mate誌 2014年3月号掲載)_03

震災の前後の様子が分かるパネル等も使い、分かりやすく説明している。(撮影=落合憲弘)

現地で見ることは、テレビを見ることとは違います。なので、震災学習列車を運行するときは、何両編成であっても、1両に一人必ずガイドがついてお話しし、内容をテープで流さないことにしました。ガイドにマニュアルはないですから、各車両のガイドで違う話をすることもあります。

「がれき」という言葉ひとつについても、ただのゴミではなくて、もともとはみんなの大切な財産で、思い出がたくさん詰まったものだったんですよね。そういった現地に住む私たちが感じる違和感などもお話しています。

私の場合、来てくれた人に一番強く伝えたいことは、「自分の命は自分で守れる子どもになって」ということです。親や先生たちがいつも守ってくれると思わないで。自分自身で命を守れる子どもになってほしい。そして、それぞれのいざという時を想像してみて、といつもお話しています。三陸には「つなみてんでんこ」という有名な言葉があります。「津波が来たら、親も兄弟も構わず、てんでんばらばらに逃げること。自分の命を守ること」。それは親や兄弟を見捨てることじゃないんです。何かあったとき、みんな自分で逃げると信じて、自分の命を全力で守りぬく。それがお互いのためになるということです。ですから、家族でいざという時のことを、事前に話し合っていてほしいと思いますね。

被災地の失敗など、話すのがつらい話もあります。地域に住む私たちの防災意識の低下があったこと。そこがダメだった。でも、同じことは繰り返したくないですから。「伝えていくこと」が被災地がやらないといけないことだと思うんです。地域が少しずつ復興しても伝え続けて、意識を低下させないこと。「まだ震災?」と言われることもあっても発信し続けていくつもりですし、震災学習列車も続けていきます。

被災された方にとって厳しい時期は、もしかして今ではないかとも思います。もう3年にもなるのに、仮設住宅のままだったり、落ち着いてきてふと津波のことを思い出したり、家族や仕事など失ったものや、将来のことを考えたり……つらいですね。

三陸鉄道としては、みなさまからの支援にはとても感謝していて、いつも恩返しをしたいという気持ちでいます。被災地ではありますが、「どうぞご遠慮せずにお越しください。そして、震災学習列車を降りたら楽しんで」ともお伝えしています。三陸鉄道の全線開通は4月上旬を予定しています(談)。

<DATA>

岩手県沿岸の田野畑~久慈、盛~吉浜(4月からは盛~釜石)駅間で運行。

★1両5万5000円(税込)の貸切制で最大57名まで乗車できる。8か月前から予約開始。学校や会社、友人同士で集まってなどの利用が多いという。

★3月11日(火)は、個人で参加できる震災学習列車を運行。80名限定で1名片道1,500円(往復は2,000円)で参加できる。問合せはTEL : 0194-52-0177へ。(2014年2月当時/最新の情報は下記ご参照ください)


■「震災学習列車」の最新情報

<DATA>

三陸鉄道では、震災の被害を乗り越え、2019年3月に盛駅―久慈駅間163キロが開通し、全国で最も長い第三セクター鉄道「リアス線」として運行中。「震災学習列車」は2022年6月現在も実施しています。1両貸切で43,30~51,700円(区間や車両により異なる)。 

お問合せ・詳細はこちらから:三陸鉄道/田野畑~久慈間、鵜住居~宮古間はTEL0193-71-1170、盛~釜石間はTEL:0192-27-9669

https://www.sanrikutetsudou.com/?p=239

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(4月30日まで)
応募はこちら!(4月30日まで)