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最終更新日:2019.04.26 公開日:2019.04.26

高速道路SA・PAのガソリンが高い理由。なぜ一般道と違うのか。

高速道路のSA・PAにあるガソリンスタンドで給油したことがある人なら、ガソリン価格が高いと感じた経験があるだろう。SA・PAのガソリン価格はなぜ高いのか? NEXCO中日本管内のSA・PAを運営する中日本エクシス広報戦略室(以下、中日本エクシス)に話を聞いてみると、納得の答えが返ってきた。

雨輝・加藤久美子

SA・PAのガソリン価格はどのようにして決まるのか?

上写真は、東名高速・海老名SA内のガソリンスタンド。周辺のガソリンスタンドに比べて15~18円高かった。

 中日本エクシスとは、NEXCO中日本管内のSA・PAの商業施設を管理・運営している会社。SA・PAのガソリンスタンドも同社が管理しているので、まずSA・PAのガソリン価格は誰が決めているか聞いてみた。

 中日本エクシスによると「20085月まではガソリンの上限価格を我々高速道路会社が設定していました。高速道路のように閉鎖された空間では、利用者がガソリンスタンドを選択する余地がないことから、ガソリンの販売価格が不当に高い価格となることを抑制するためです。しかし、原油価格が急激に高騰し、卸売り価格の大幅な改定が行われたため、上限価格の設定を見合わせました。現在、中日本エクシスが管理するガソリンスタンドでは、各スタンドが価格を決定しています」とのこと。

 ここでいう上限価格とは、日本エネルギー経済研究所石油情報センターが毎週公表している「給油所石油製品市況週動向調査」の全国平均価格をもとに、NEXCO中日本が独自に設定していたもので、毎週見直されていた。ガソリンスタンドを選択する余地がなく給油せざるを得ない状況の高速道路において、公平性のあるガソリン価格の決め方であるように見える。しかし、実際は違った。

 例えば、原油価格が急激に高騰し、一般道のガソリンスタンドが値上げをしたとしよう。SA・PAのガソリンスタンドは前週の平均価格を上限として設定しているので、一般道のガソリンスタンドのように即座に値上げすることができない。そのため、安い価格に据え置かざるを得なかった。すると、SA・PAのガソリン価格の方が実勢価格よりも安くなり高速道路で給油する人が増加し、スタンドの利益を圧迫する。逆に原油価格が下落すると、市価は下がっているにも関わらず、高い価格で据え置かざるを得ない。今度は、利用者が高速道路で給油しなくなってしまうのだ。つまり、前週の市況に基づいた上限価格の設定は、常に一般道のガソリンスタンドよりも不利な状況にあったのだ。

 そこで同社は上限価格の設定を廃止し、各スタンドが価格を決定できるように変更した。各スタンドが決定した価格は、週に一度同社が取りまとめ、ホームページで公表している。

聞いて納得。高速道路SAPAだからこその営業時間の影響。

チェーン装着のために場所を提供してくれた東名阪道・御在所SAのガソリンスタンド。

 そんな経緯もあり、2008年からSA・PAのガソリンスタンドは、販売価格を自由に設定できるようになった。しかし、ここで疑問が残る。各スタンドで価格を決定できるようになったのに、なぜ一般道のガソリンスタンドよりもリッターあたり10~20円高くなるのだろうか?

 中日本エクシスは「高速道路のガソリンスタンドは一部を除き、原則として24時間営業です。交通量が少なく夜間の利用者が少ないSAPAにおいては、採算が厳しい中でも年中無休で24時間営業しなくてはならないのです。そのため、一般道より高い価格設定にせざるを得ないと思われます」とコメント。

 確かにSAPAのガソリンスタンドは、高速道路が閉鎖にならない限り、どんな悪天候だろうともオープンしている。筆者も2年前の冬にお世話になった経験がある。東名阪道・御在所SAにて休憩中、雪が降り出してあっという間に積もった時、チェーンをつけようとしたがかなりの積雪で落ち着いて装着できる場所がなく、ガソリンスタンドにお願いして雪のない場所を提供してもらったことがあるのだ。この時は本当にありがたかった。

車検など、利幅の大きなサービスが提供できない

高速道路のガソリンスタンドの中には、JAF会員証で値引きしてくれるところもある!

 SAPAのガソリンが高いもう1つの理由は、一般道のガソリンスタンドの多くが実施している洗車や車検などの多様なサービスを実施していないこともあるだろう。特に禁じられているわけではないそうだが、高速道路は早く目的地に着きたい人が使う場所。そこでわざわざ洗車をしたり、車検を受けたりする需要があるとはとても考えづらい。ガソリンスタンドにとって収益の大きなこれらのサービスが展開できないため、ガソリンスタンドを経営できるだけの利益をガソリン価格に頼るしかないのだと考えられる。

 このように高速SA・PAのガソリン価格が高いのには、高速道路という特殊な環境だからこその理由があった。ユーザーとしては、一般道で満タンにして目的地に向かうことが最も安上がりな方法であるが、一方で、高速SA・PAのガソリンを購入する利用者が減れば、その経営は立ちいかなくなる。また、高速道路のガソリンスタンドは、公益性の高い社会インフラであるともいえる。ガソリン価格に依存しなくても維持していけるような新しいビジネスモデルを考える時期が来ているのではないだろうか。

 例えば、給油以外のサービスを実施していないスタンドはセルフスタンドに変更し、人件費を削減する。SA・PA内の商業施設で買い物をするとガソリン代が割引になる仕組みを作る。給油すると高速料金が安くなる仕組みを作る。などが考え得る方法だが、この程度では大きくは改善しないだろう。何か良い方法はないだろうか。

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