クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ最終更新日:2017.06.16 公開日:2017.06.16

【人とくるまのテクノロジー展:その5】低回転からトルクがモリモリ! HKS「電動スーパーチャージャ」

 5月24日~26日開催の「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2017 横浜」(パシフィコ横浜)を取材、自動車メーカーやパーツサプライヤー、そのほかさまざまな自動車に関するテクノロジーをシリーズで紹介する。

 今回は、HKSが開発している「電動スーパーチャージャ」に迫る。


ターボ車のトルクをもっと低回転から太くするには?

np170613-01-01.jpg

電動スーパーチャージャ。吹き流しが流れているのは、モータが稼働されていて、実際に空気が送風されているため。

 現在、過給器を搭載した市販車の多くで採用されている方式が「ターボチャージャー」である。ターボは、エンジンからの排気ガスを利用してタービンを回すことでコンプレッサーを稼働させ、そして圧縮した空気をエンジンに強制的に送り込み、より強い爆発を起こさせることで排気量以上の高い出力やトルクを得られるという仕組みだ。

 しかし、ターボには構造上の弱点がどうしても存在し、排気ガスの流量が少ないエンジンの低回転域ではタービンが回らないために過給を得にくい。低回転でも回そうとしたら小排気量でも立ち上がりのよい小型タービンを選択する必要があるが、今度は高回転域での出力向上を望めなくなってしまう。

 近年の技術的な進歩で比較的低回転からでも過給を得られるようになってきたとはいえ、1基だけで低回転から高回転まですべてをカバーする万能のターボは今のところ存在していない。

 そこでHKSが考案したのが「電動スーパーチャージャ」だ。中回転域以上のターボをそのまま活かす形で、電動スーパーチャージャを追加することで低回転域の過給を実現させようというものである。

np170613-01-02.png

開発は、アウディ「TT」に搭載される「2.0 TFSI」エンジンを利用しているという。実際に電動スーパーチャージャを取り付け、バイパスのパイピングなども施した2.0 TFSIエンジンを展示していた。(1)~(3)はHKSで開発したもの。(1)コントロールユニット。(2)電動スーパーチャージャ。(3)バイパスパルブ。中回転以上となってターボが過給し始めた際に、バイパスバルブを開けて電動スーパーチャージャを空気が通らないようにする。

np170613-01-03.jpg

電動スーパーチャージャとターボの空気の流れが切り替わるところを表した図。低回転時は上の画像の(3)のバイパスバルブが閉じて、電動スーパーチャージャを空気の流れが経由する(左側)。中回転以上になってターボが過給し出すと、バイパスバルブが開き、空気の流れが電動スーパーチャージャを経由しないようになる(右側)。画像は、HKSの電動スーパーチャージャのリーフレットより。

→ 次ページ:
スーパーチャージャーとはどんな過給器?

そもそもスーパーチャージャーとは?

 スーパーチャージャーもターボと同じ過給技術で、タービンを回すためのエネルギーを得る方法が異なっている。

 基本的な機構はターボと同じだが、クランクシャフトからベルトなどを用いてタービンを回す仕組みになっており、アクセルを踏んですぐの低回転からでも過給を得られることが特徴である。ただし、高回転域になるとエンジンの出力ロスが発生してターボに比べると効率が悪いことから、低~中回転用の過給器とされている。

 そして現在はターボの性能が上がってきて比較的低回転でも過給できるようになってきたことから、スーパーチャージャーは国産車ではほぼ絶滅状態の技術だ(日産「ノート」の一部のグレードに搭載される「HR12DDR(DIG-S)」エンジンのみで採用)。

np170613-01-02.jpg

日産がノートの一部のグレードで採用している「HR12DDR(DIG-S)」エンジン。赤の楕円内が、スーパーチャージャ。

 ターボとスーパーチャージャーは両方とも搭載でき、それを「ツインチャージャー」という。この方式ならお互いを補い合うことで低回転から高回転まで過給を得られるとされているが、コストの面、機構が複雑化することなどのデメリットから、今では少なくとも国産車では採用しているクルマはない(確認できたところでは、かつて日産「マーチ」に装備したグレードが存在した)。

 そこで、そうした問題を解決すべくHKSはスーパーチャージャーを電動化し、クランクシャフトから動力を得るのではなく、タービンをモーターで回すという仕組みを考え出したのである。

→ 次ページ:
電動スーパーチャージャの特徴に迫る!

電動スーパーチャージャの優れた点とは?

 なぜモーターがスーパーチャージャーと相性がいいのかというと、モーターは回り出す瞬間に最大トルクが発生するからだ。しかも、エンジンとは切り離されているため、アクセルを踏んだ瞬間からそのモータの最大出力で過給することも可能だ。

 電動スーパーチャージャの本体の構造は、モータ部にインバータを内蔵した「機電一体型モータ」が採用されており、電気的損失の低減と、小型化を実現したという。

np170613-01-04.jpg

電動スーパーチャージャの内部構成の模式図。画像は、HKSの電動スーパーチャージャのリーフレットより。

 もちろん、電動化することのデメリットもないわけではない。それだけ電力消費量が増えるわけで、常用するためにはそのための電気を発電しなければならないし、それを溜めておく電池等も必要になる。どちらかというと高級車向けのシステムとしており、開発もアウディ「TT」に搭載される2.0TFSIエンジンを用いて行われている。

 今回展示された電動スーパーチャージャの仕様は以下の通りだ。ただし、エンジンの出力やトルクがどの程度アップするのかは公表されていない。今後さらに開発を進め、商品化していきたいとしている。

【過給器仕様】
最大圧力比:1.6

【モーター仕様】
最大出力:2kW
最大トルク:0.3N・m
電圧:DC12V
最高回転数:7万rpm

【インバータ仕様】
入力電圧:14V(10~16V)
最大出力電流:400Arms
スイッチング周波数:MAX45kHz

2017年6月16日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

関連記事

この記事をシェア

  

応募する

応募はこちら!(6月30日まで)
応募はこちら!(6月30日まで)