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クルマ最終更新日:2017.05.30 公開日:2017.05.30

【人とくるまのテクノロジー展:その2】マツダの色へのこだわり、スバルのグローバルプラットフォーム

 5月24日~26日開催の「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2017 横浜」(パシフィコ横浜)を取材、自動車メーカーやパーツサプライヤー、そのほかさまざまな自動車に関するテクノロジーをシリーズで紹介する。

 今回は、マツダ、スバルをお届けする。


マツダのボディーカラーと塗装へのこだわり!

 マツダブースで注目したいのは、同社のボディーカラーの新色や塗装技術の開発を解説したコーナー。

 マツダは2010年にデザインテーマ「魂動(こどう) -Soul of Motion」を採用して以降、「カラーも造形の一部」という思想の下、まさに人の魂をも震わそうという意気込みで部署の垣根を越えて全社的に新色の開発を進めている。そんな同社が開発した最新の”赤”が、「ソウルレッドクリスタルメタリック」だ。

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ソウルレッドクリスタルメタリックによる塗装サンプル。光が当たっている部分は彩度がある一方、影の部分は目に見えて暗くなる。この画像では、ブース上方からのライティングに加え、撮影時に斜め下からフラッシュを当てているため、明暗が少し複雑な形をなしている。

 「ソウルレッド」は同社のイメージカラーのひとつだ。ソウルレッドクリスタルメタリックはその最新版であり、2016年11月に発表され、国内では2017年2月から発売となった新型「CX-5」で初採用となった。魂動のカラーとしては第3弾となる。

 同社の赤は、初期の「トゥルーレッド」から始まり、「ヴィンテージレッド」、「ヴェロシティレッド」、「カッパーレッド」、「ジールレッド」などさまざまなバージョンが開発されてきた。

 トゥルーレッドの美点はハイライトの彩度があること、つまり鮮やかだということだ。だが、陰影性が極端に低いことが大きな弱点である。立体感がなくなってのっぺりとしてしまうため、ボディの細かい造形をわかりにくくしてしまうところがある。

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トゥルーレッドのサンプル。フラッシュも上側から当てているので、下側が暗くなるはずだが、ほとんど差がないので3次元的に見えず、平面にすら見えてしまう。

 そんなトゥルーレッドに対して、陰影性を求めて開発されたのがジールレッドである。陰影はついて立体感が出るようになったのだが、今度は鮮やかさがなくなり、トゥルーレッドと比較すると地味になってしまった。

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ジールレッドマイカ。フラッシュも上からなので下側が暗くなっており、とても立体的。ただし、下側に見えているトゥルーレッドのような鮮やかさはない。

 トゥルーレッドの鮮やかさとジールレッドの陰影性という、両者の優れた部分を備えた、まさに理想の赤を求めて開発されたのが、2012年11月20日に発売を開始した3代目「アテンザ」で採用された「ソウルレッドプレミアム」だ。

 それでも満足せず、さらに鮮やかさと陰影性の両方を追い求めたその進化形が、ソウルレッドクリスタルメタリックというわけだ。

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ソウルレッドクリスタルメタリック、ジールレッド、トゥルーレッドの塗装サンプル。3つ並べると、ソウルレッドクリスタルメタリックは明るい部分がトゥルーレッドの鮮やかさに近い上に、陰影がジールレッドのようについているのがわかりやすい。

→ 次ページ:
マツダの新色開発にさらに迫る!

わずか3層の構造で実現されたソウルレッドクリスタルメタリック

 ソウルレッドクリスタルメタリックのように鮮やかさもあれば陰影性もあるような塗装を施す場合、従来の技術だと幾重にも塗り重ねる必要性があり、揮発性有機物質やCO2が増えてしまうという、環境面での問題があった。そこでマツダは、ソウルレッドクリスタルメタリックをわずか3層の塗膜で実現する技術を開発したのである。

 その3層とは、クリア層、透過層、反射・吸収層だ。クリア層はお馴染みのツヤ出しを目的とした層で、 ポイントは透過層と反射・吸収層だ。

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ソウルレッドクリスタルメタリックの塗膜構造。わずかな厚みの中に技術が詰まっている。

 透過層は、単に光を通すだけの透明な層というわけではない。赤をよりピュアに発色させるため、新開発の高彩度な赤色の顔料が混ぜられている。

 そして最も工夫されているのが、反射・吸収層。本来は反射層と吸収層の2層で表現される深みを1層で実現したことが大きな特徴だ。そのキーとなるのが、反射・吸収層に混ぜられている、反射用の極薄の「高輝度アルミフレーク」と、光を吸収してシェードの濃さを強める「光吸収フレーク」のふたつ。

 アルミフレークはサイズが均一化された上に、光吸収フレークと共にボディ面への均等かつ平滑な分布がなされているという。それは塗装の精度を向上させたことに加えて、乾燥工程において塗膜の体積を収縮させる手法を用いたことで実現した。これにより光の反射を緻密に制御できるようになったことで、ハイライトの鮮やかさとシェードの深みを大幅に向上させられたとしている。

 なお、ソウルレッドクリスタルメタリック(クリスタル)とソウルレッドプレミアムメタリック(プレミアム)の大きな違いは最下層にある。層構造は3層で同じだが、最下層がクリスタルでは説明したように反射・吸収層であるのに対し、プレミアムは反射層である。

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ソウルレッドプレミアムメタリック、マシーングレープレミアムメタリック、ソウルレッドクリスタルメタリックの塗膜機能の分担。マシーングレープレミアムメタリックもマツダのデザインテーマ「魂動 -Soul of Motion」を象徴する2つ目のカラー。オートカラーアウォード2016(記事はこちら)では、同色をまとったマツダ「ロードスターRF」がグランプリに輝いた。

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ソウルレッドクリスタルメタリックとソウルレッドプレミアムメタリックの比較。左が2017年式の最新CX-5で、ソウルレッドクリスタルメタリック。右が2014年式の先代CX-5で、ソウルレッドプレミアムメタリック。同じライティングの条件で並べて撮影されてはいないので、厳密な比較は難しいが、ソウルレッドクリスタルメタリックの方が若干陰影の深さを感じる。

 このほか、塗装関連では同社が2009年から導入している環境負荷を従来より抑えた最新の塗装技術「アクアテック」の解説も行っていた。同社は2002年から、それ以前と比較して大幅に環境面で優秀な塗装技術「スリー・ウェット・オン」を導入しているが、アクアテックはそれをさらに強化する技術だ。ソウルレッドクリスタルメタリックも同技術でもって塗装されており、従来と比較して揮発性有機物質を78%、CO2を14%低減させることに成功しているとしている。

 塗装の奥の深さを垣間見ることのできるマツダブースである。

→ 次ページ:
SUBARUの新戦略に迫る!

全車種共通のスバルグローバルプラットフォームを展示!

 スバルブースの目玉は、2016年3月に発表された(昨年の人とくるまのテクノロジー展には出展されていない)、2025年までを見据えて今後は全車種共通で使用されることになる「SUBARU GLOBAL PLATFORM(スバルグローバルプラットフォーム、以下SGP)」の展示だ。

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SUBARU GLOBAL PLATFORM。展示されていたのは、新型「インプレッサ」用だ。

 今後開発される新型はもちろんだが、既存の車種がモデルチェンジする際は新型はSGPをベースに開発されることになる。その上、今後の電動化なども考慮した設計となっているという。

 ただし同社スタッフに話を聞いたところ、プロドライバーがラリーなどのモータースポーツ用にチョイスすることの多い「WRX STI」のようなスポーツモデルに関しては、SGPで行くのか未決定の部分もあるという。少なくとも、同展示会初日の5月24日に発表されたWRX STIの新型はビッグマイナーチェンジモデルであることもあり、採用されていない。

 さらに補足しておくと、厳密には完全に同一のSGPを全車種に使うというわけではない。車種ごとの特徴に柔軟に合わせていく形だ。要は、ひとつの「設計思想」のプラットフォームを全車種で採用する、というのが正しい。

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SGPを別角度から。

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SGPのリア部分。

→ 次ページ:
SGPを採用することでどんなプラスが?

SGPを導入することのメリットとは?

 SGPを導入することの大きなメリットが動的質感、「走りの質感の高さ」とする。ステアリング操作に対するクルマの迅速かつ正確な反応により、深いドライビングプレジャーを提供するとした。

 それを実現している大きな要素が各部の剛性アップ。既存のプラットフォームよりも70~100%向上している。それによりドライバーの意思にダイレクトに応答するハンドリング、直進安定性や快適な乗り心地の向上、不快な振動騒音の削減などを実現しているという。

 なお、現在SGPを採用しているのは、2016年にモデルチェンジした「インプレッサ」と、完全新規モデルであるクロスオーバーSUV「XV」の2車種だ。

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2016年にモデルチェンジした新型インプレッサ。撮影は「平成28年度自動車アセスメント結果発表会」の会場(東京国際フォーラム)にて。

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2016年に発表し、17年3月から予約を開始したクロスオーバーSUVの新車「XV」。同車にもSGPが採用されている。撮影は「平成28年度自動車アセスメント結果発表会」の会場(東京国際フォーラム)にて。

 人とくるまのテクノロジー展の記事はこのあとも掲載。トヨタ、日産、ホンダの国内3大メーカーに関しては、こちらをご覧いただきたい。

2017年5月30日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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