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最終更新日:2018.01.22 公開日:2018.01.22

レースもエコ化進行中!HV&EVレーシングカー、どれだけ知ってる?前編

 現在、レーシングカーもハイブリッド(HV)化が進み、F1は2種類のエネルギー回生システムとガソリンエンジンを組み合わせたパワーユニット(PU)をマシンに搭載してレースを行っている。

 またWEC世界耐久選手権には、トヨタ「TS050 HYBRID」のようなガソリンエンジン+モーターのHVレーシングカーが参戦できる最上位「LMP-1H」クラスがある。さらには、”EVのF1″といわれる、完全にガソリンエンジンから脱却した「フォーミュラE」も開催中だ。

 そうしたトップカテゴリー以外でもHVやEVが参加するモータースポーツは増えており、時代の流れから今後はさらに増えていくことが予想される。

 そこで、これまで撮影した未公開写真から、そうした車両を年代順に紹介する。前編は1990年代半ばから2010年代前半までに開発された5台をピックアップしてみた。

WECに参戦するトヨタ「TS050 HYBRID(2017年仕様)」の展示用車両(8号車)。アウディやポルシェなど、ライバルのワークスチームがWECを撤退してフォーミュラEに移ってしまった(もしくは参戦を表明)が、トヨタは悲願のル・マン24時間レース初優勝を実現するため、2018年もWECへの参戦を正式発表した。東京オートサロン・トヨタブースにて撮影。

ホンダのF1用17年型PU「RA617H」。PUは、シングルターボを備えたガソリンエンジン、減速時にモーターを駆動して発電する「MGU-K」、エンジンの排熱(排気エネルギー)で発電する「MGU-H」という2種類のエネルギー回生システム、コントロールユニット、バッテリーなどからなる。MGU-Kは発電した電気をバッテリーに溜めておき、加速時にエンジンをアシスト。MGU-Hは発電した電気を用いて、ターボが機能しないエンジンの回転数が低いときにタービンを強制的に回転させたり、MGU-K経由でエンジンをアシストしたりする。MGUとはモーター/ジェネレーター・ユニットのことで、Kは物理を意味する「kinetic」、Hは熱を意味する「Heat」の略。東京モーターショー2017にて撮影。

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世界初のEVラリー総合優勝車!

世界初のEVラリーで総合優勝したトヨタ「RAV4 EV」
1995年

95年8月、世界初のEVラリー「第1回スカンジナビア・エレクトリック・カー・レース」にTMME(トヨタ欧州法人)からエントリーし、総合優勝を果たした。MEGA WEB・ヒストリーガレージにて撮影。

 現在、国内では販売が終了しているが、欧州では人気で現在も販売が続いているトヨタのクロスオーバーSUV「RAV4」。その初代の内の「RAV4-L」の3ドアモデルをベースに、EVコンバートして開発した試作モデルがこの「RAV4 EV」だ。

 同車は1995年8月に世界で初めて本格的に開催されたEVのみによるラリー「第1回スカンジナビア・エレクトリック・カー・レース」に参戦するために開発された。なお同ラリーでは、総合優勝を果たした。

 95年当時、すでにリチウムイオン方式のバッテリーは技術的には開発されていたが、商品化されて間もない時代だったため、同車のバッテリーにはその時点での従来製品のニッケル水素方式が採用されている。

 同車の開発および走行で収集されたデータは後のEV開発に役立てられたという。

【スペック】
全長×全幅×全高:3695(3705)×1695×1610(1635~1660)mm
ホイールベース:2200mm
車両重量:1350(1140~1280)kg
モーター種類:永久磁石式交流同期モーター
モーター出力:20kW/288V
バッテリー:シール型ニッケル水素電池
 ※カッコ内は市販車のスペック

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国内の24時間レースに参戦した1台!

国内の24時間レースに参戦したレクサス「GS450h」
2006年

レクサス「GS450h」。06年、スーパー耐久シリーズの特別戦である十勝24時間レースに参戦し、総合17位という結果を残した。MEGA WEB・ヒストリーガレージにて撮影。

 94年から08年まで15年間にわたり、日本にはスーパー耐久シリーズの1戦として、十勝スピードウェイでの24時間レースが開催されていた。その13回目となる06年に、スーパーGTにトヨタ系古豪チームとして参戦する「LEXUS team SARD」は、HVレーシングカーを開発して24時間レースに参戦を果たした。

 同チームがベースとしたのはHVセダンのレクサス「GS450h」。同レースを運営するスーパー耐久機構から特認車両の認定を受け、最大排気量クラスの「ST1」として参戦した。合計33台が参戦する中、予選5位、総合17位という成績を残した。

 参戦の目的は、市販車への技術的なフィードバック。24時間レースという過酷な環境で、HVシステムのさらなる小型軽量化や高効率化などを目指す開発の一環としての参戦だった。

 なお、スペックにあるHVシステム全体の最高出力が、エンジンとモーターの最高出力の合計ではないのは、当時の技術的な理由や仕様などによるもの。

【スペック】
エンジン最高出力:218kW/6400rpm
モーター最高出力:147kW
HVシステム全体の最高出力:254kW
車両重量:1550kg以上

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圧倒的な速さで国内24時間レースに勝利!

24時間レースで総合優勝のデンソー・トヨタ「スープラ HV-R」
2007年

07年のスーパー耐久シリーズの1戦、第14回十勝24時間レースで予選ポールポジションからスタートして総合優勝を果たしたデンソー・トヨタ「スープラ HV-R」。MEGA WEB・ヒストリーガレージにて撮影。

 07年、TOYOTA team SARDは十勝24時間レースに再び参戦。この年は、レクサス「GS450h」で得られたデータを基にして、新たにレース専用HVシステムを開発。それを、前年まで同チームがスーパーGTで走らせていたトヨタ「スープラGT」に搭載し、本格的なHVレーシングカーとした(「スープラ」で参戦するので、チーム名はLEXUSではなくTOYOTA team SARD)。

 ドライバーは、昨年も走った平中選手とクート選手の2人に加え、大物の飯田章選手も招聘。そしてレースでは、予選でポールポジションを獲得し、レースも総合優勝というパーフェクトウィンを達成した。

 同車には、レース走行において回生領域・効率向上を目的として、ふたつの特徴的な技術が採用されている。ひとつは、前輪にはインホイールモーターを採用したこと(後輪はインホイールではない)。さらに、4輪ともエネルギー回生システムが組み込まれており、減速時に発生するエネルギーの回収効率を向上させ、加速力の向上が図られた。

 そしてもうひとつは、専用設計キャパシタ(蓄電装置)の開発。加減速の連続するレース走行に対応させるため、2次電池よりも充電時間が短いことにメリットであるとして、キャパシタを採用したのである。

【スペック】
車重:1080kg以上
エンジン
 形式:3UZ-FE 改 S-GT仕様
 総排気量:4480cc
 最高出力:353W以上/6800rpm
 最大トルク:510N・m以上/5600rpm
モーター最高出力
 Frモーター:10kW×2(インホイール)
 Rrモーター:150kW

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EVのミッドシップ・レーシングカー!

EVのミッドシップ!? 日産「リーフ NISMO RC」
2011年

ワイドボディ化と低重心化が図られ、一見すると初代「リーフ」とは別のクルマのように見えてしまう。またEVのコアとなる機器のバッテリー、インバーター、モーターも極力車体中央の重心に近い位置にレイアウトを変更された。EVのミッドシップともいえる1台。モータースポーツジャパン2017にて撮影。

 11年4月のニューヨーク国際オートショーで初披露され、同年のル・マン24時間レースでデモランなどを行ってきた日産の初代「リーフ」をベースとしたEVレーシングカー「リーフ NISMO RC」。

 デモカーでは終わらず、2012年9月2日にスポーツランドSUGO(宮城県)で開催された全日本電気自動車グランプリシーズ「EV-GP」の第3戦にスポット参戦を果たした。このときは、日本のトップドライバーのひとりで同車の開発ドライバーでもある松田次生選手がステアリングを握り、ポールポジションを獲得。決勝は、ストレートスピードと航続距離で勝るテスラ「ロードスター」に抜かれ、2位となった。

 同車の特徴はレースを想定した重量配分になるよう、主要機器の搭載位置が大幅に変更されたこと。リチウムイオンバッテリー、インバーター(直流もしくは交流から周波数の異なる交流に逆変換する電源回路)、モーターはすべて市販リーフのものをそのまま使用しているが、レイアウトは大きく変更された。

 EVを構成する機器の中では重量物のひとつなのがリチウムイオンバッテリー。運動性能を考慮すると、重量物はできるだけ車体の中央に寄せた方がよく、運転席後方に移動させた。まさにEVのミッドシップレイアウトとしたのである。さらに、インバーターとモーターも搭載位置がリアに変更されている。

 ボディは全長は20mm延長、全幅は172mm増やされ、逆に全高は333mm低くなった。ワイドボディ化と低重心化が行われたのである。さらに車重も600kg近い軽量化が図られ、サスペンションも変更。その結果、コーナリングスピードと加速性能がアップしたというわけだ。

 ちなみにバッテリーは交換を行えるパック方式を採用。それにより、急速充電で加熱してしまう問題を回避した。

【スペック】
全長×全幅×全高:4465×1942×1212mm
車重:925kg
モーター
 最高出力:80kW
 最大トルク:280N・m

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Ecoレースに気軽に参加できるレンタル車!

Ecoでスポーツするホンダ「CR-Z HS&EP仕様車」
2012年

ホンダ「CR-Z Honda Sports & Eco Program仕様車」。モータースポーツ入門向けのレース・スポーツ走行仕様のレンタル車両。資格さえ満たせば、誰でもレンタルしてワンメイクレースに参戦可能。モータースポーツジャパン2017にて撮影。

 「Ecoでスポーツ」するドライビングスクールとしてホンダ後援の下、鈴鹿サーキットとツインリンクもてぎを運営するモビリティランドと、「無限」ブランドで知られるチューニング・エンジンメーカーのM-TECによって2012年から両サーキットで開催されているプログラムが、「Honda Sports & Eco Program(HS&EP)」だ。同プログラム参加者のためのレンタル車両として2017年まで活躍していたのが、ホンダのHVスポーツカー「CR-Z」の”HS&EP仕様”である。

 同プログラムの特徴は、スクールに加え、モータースポーツ競技「晴れ舞台プログラム」が用意されていること。基準ラップ内で走行して1ラップあたりの燃費を競う「Ecoチャレンジ」と、決められたガソリン量でサーキットを8周走りきれるように燃費走行しながら同時にレースもする「10リッターチャレンジ」のふたつだ(EcoチャレンジはBライセンス、10リッターチャレンジはAライセンスが必要な上、スクールで必要な受講を済ませるなど参加条件がある)。

 「CR-Z HS&EP仕様」は、サーキット走行の経験がない人でも楽しめるよう、スポーツ走行やレース参戦に必要な最低限の装備が組み込まれている。ロールケージや専用サスペンション、フルバケットシート&4点式シートベルト、エアロパーツ、オーバーテイクシステム、エコアシストメーター、専用エキゾーストシステムなどを備える。なお、スペック的には、ノーマルだ。

 なお、CR-Zは2017年1月に生産を終了し、2018年からは「フィット ハイブリッド」にバトンタッチすることが発表されている。

【スペック】
全長×全幅×全高:
4075×1740×1395mm
車両重量:
1140kg
エンジン
 種類:直列4気筒SOHC
 総排気量:1496cc
 最高出力:88.3kW/6600rpm
 最大トルク:145.1N・m/4800rpm
モーター
 種類:交流同期電動機
 最高出力:14.7kW/2000rpm
 最大トルク:78.4N・m/1000rpm

 EVレーシングカーの後編はこちら。

2018年1月22日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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