その3/危機管理産業展2016で見つけた 逃走妨害装置 さす股「タックル」
さまざまな業界関係者向け展示会・見本市という秘密の花園でひっそり咲く、関係者相手に展示される製品の数々。これらの中から専門的な不思議さが心くすぐるものを毎回ピックアップして、白日の下に紹介してしまおうというこの企画。
第3回は、東京・有明の東京ビッグサイトで行われた「危機管理産業展2016」(2016年10月19日~21日開催)に出かけて、展示品を物色してきました。
防災やセキュリティなどの危機管理にかかわるあらゆる分野を網羅したビジネストレードショーと銘打つこの展示会。
危機管理業界の門外漢である、私のハートを撃ち抜いたのは、こんな展示品なのでした。
左/毎度おなじみの東京ビッグサイト。右/これが今回の主役、逃走妨害装置のさす股「タックル」
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戦う「さす股」じゃない、逃走を妨害するためのさす股!?
ところで他人の家や施設などに、無理に入り込んでくる存在のことを「侵入者」って言います。
英語で言えば「invader」(インベーダー)。そう言えば、昔、一世を風靡したテレビゲームの「スペースインベーダー」って、そんな侵入者(または侵略者)との攻防戦ゲームでした。
今、あなたのいる場所に思いもよらぬ侵入者が入り込んできて、1対1で対峙することになったら、自分はどう対処するかを考えたことがありますか? もちろん「名古屋撃ち」じゃ対処できないですよ。
「どなたですか?」って聞いてから考えるっていうのもあまりに牧歌的対応すぎるだろうし、こちらからいきなり殴りかかるっていうのはリスクが大きすぎるし・・・。
やっぱり大事なのは自分の身を守りつつ、安全な場所に避難するか、助けを呼ぶっていうのが常道でしょう。
危機管理産業展のブースの中、2m近くある金属製の棒を片手で支えるように立てて、㈱プロップの内田常務取締役は説明してくれました。
「さす股ってご存知ですか? 犯人などを捕らえるのに用いた道具の一つ。江戸時代からあって、長い棒の先に、二股に分かれた金属製の頭部をつけたもの。昔はそれでのど首などを押さえつけて、犯人などを捕捉したんです」
内田さんが手に持っていたのが、実は「さす股」だったんです。
「従来のさす股は、先がUとかYの字の形になっていて、その部分で相手の体を壁や床に押し込んで制圧するタイプのものだったんです。しかし弊社のこのさす股『タックル』は、そんな戦うさす股ではないんです」(内田さん)
えっ、戦わないさす股って?
「さす股の頭部部分が、W字形になっていて、たとえば相手の胴のあたりにぶつけるとクワガタムシの角みたいにパカっと両方からくわえ込んで、ロックして外れなくなるんです。相手に枷(かせ)をはめることで、自由な体の動きを奪って、逃走を妨げることもできる。そんな使い方を想定したさす股なんです」(内田さん)
その想定した使い方を、視覚化した写真が次のページにあります。それをご覧ください、次のページをどうぞ!
左/ブースで「タックル」を片手に持って立つ、㈱プロップの内田さん(右)と陳さん
右/さす股の頭部。中央のT字部分に相手(侵入者)の体がぶつかると、W字形の輪が体を挟み込む仕掛け。ロック機構で、輪が閉じた状態から無理に開くことができない。ロックの解除レバーは、相手から1.5mほども離れた、さす股の柄の側にある。
→次ページ:侵入者の体の自由を奪い、行動の邪魔になれば、こちらも隙を見て避難することだって可能。戦わずして勝つのだ!
侵入者の体の自由を奪い、行動の邪魔になれば、こちらも隙を見て避難することだって可能。戦わずして勝つのだ!
従来のさす股は、相手の体を壁や床に押し込まなくてはならないので、力も必要だし、ある程度使い方に習熟して使わなければ危険が伴うこともあった。
「このタックルは、アルミ合金製で重量は約1.8kg。軽いので女性でも扱いやすいです。押し込むのも、さす股押さえ(T字の部分)にぶつかれば自動的にしまるので、ロックするのもそれほどの力を必要としません」と内田さん。
しかもロック解除も、解除レバーは自分の手元の柄の側にあるので、侵入者からは届かない(解除できない)。
また1.5~1.6mくらい相手と自分の体と一定の距離を保てるから、相手がたとえ刃物を持っていても、刃物はこちらには届かない。アウトボクシング的対応ができる点もメリット。
(1)両手で柄のグリップを握り、侵入者の胴をめがけて押し込む。タックルの輪の部分が包み込んで閉じ、侵入者の胴をガッチリ抱え込む。
(2)侵入者は自分ではタックルの輪を外すことは不可能。その隙を見て、危険な状況から立ち去ることができる。
(3)タックルを閉じたまま侵入者が逃走しようとすると、棒の長さが邪魔になる。
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一度挟み込んだらはなさないのに、侵入者へのダメージも考慮。
さらにこのさす股がすごいのは、侵入者へのダメージも考慮されているところ。
W形の輪の部分には、細い部分を挟み込んだときに少しでもスペースができないようにするためにバネが取り付けてある。だから痩せ型の胴回りが細い人に対しても使える。しかも胴回りを包み込むように動くので、侵入者を無傷で取り押さえられる。
戦わないからこそ、安全なこともあるんですね。勉強になりました。
販売価格は、32,000円(税別)とのこと。
ちなみに『西遊記』の沙悟浄(さごじょう)が手に持っているのは、さす股じゃないですよ。あれは降妖杖(こうようじょう)などとも呼ばれる、三日月型の刃がついた武器です。
さす股とフォルムはちょっとだけ似てるけど・・・。
左/この柄の部分にある、白いレバーがロック機構の解除レバー。
右/侵入者側から見るとこんな感じになる。さす股の輪は一度ロックが掛かると侵入者側から解除するのは無理。
東京ビッグサイトの最寄り駅「国際展示場正門」駅は、この日改修工事中でした。天井が板張りになっていた。珍しかったので撮影しちゃいました。
2016年11月11日(JAFメディアワークス IT Media部 上條 謙二)※2016年10月21日取材