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最終更新日:2023.06.16 公開日:2022.12.12

首都圏三環状の要「外環道」の起点、大泉JCT付近の地下トンネル工事現場を取材

NEXCO東日本、NEXCO中日本、国土交通省関東地方整備局は11月19日、東京外郭環状道路(外環道)建設のための地下トンネル掘削工事において、関越自動車道と交差する大泉JCT(東京都練馬区)近くの工事現場を報道陣に公開した。

文・写真=会田肇

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直径16mのトンネル工事現場に立つ

12月8日に掘進が再開された外環道・大泉側本線北行トンネルの工事現場(東京都練馬区)

 現在、首都圏では都心を中心として、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、東京外かく環状道路(外環道)、首都高速中央環状線(中央環状線)の3つの環状線の整備が進行している。これを”首都圏三環状”と呼び、すでに中央環状線は全線が、圏央道も9割の約270kmが開通している。

残る外環道は、都心から約15kmの東京23区の外側を周回する高規格道路で、周回しても総延長距離が約85kmとそれほど長くないことから”使い勝手の良い環状線”とも言える。現在、高谷JCT(千葉県)から大泉JCTまでが供用済みとなっており、計画が決定している大泉JCTから東名JCTを結ぶ本線16kmがトンネルとして工事が進められているところだ。

東京外かく環状道路(関越~東名)の工事概要。

 今回公開された現場は、そのトンネルの起点ともなる関越道・大泉JCT。トンネルはシールドマシンによって掘進されて壁面が組み立てられていくわけだが、トンネルの直径は16mほどあり、ここは片側3車線の道路として提供される。掘られたトンネルはチューブ状となっているが、今回の取材現場はすでに路面の下地となる部分が完成されていた。

階段を降りて現場に下りるとそれを実現するための広大な地下空間が奥の方までずっと続く。高速道路のトンネルは普段、クルマで通過するため、自分の足で降り立つことはなかなかないが、こうした場所に降り立つと、その半端じゃない広さと規模感に圧倒されっぱなしになる。

トンネルはシールドマシンによる「シールド工法」によって掘り進められ、掘った場所は「セグメント」と呼ばれる幅1.6mのリング状のコンクリート壁を組み込みながら、「土を削る」、「土を運び出す」、「前進」、「セグメント組み立て」の4つの作業を繰り返して掘削していく。NEXCO中日本の説明によれば、シールドマシンの掘削速度は4cm/分ほど。一つのセグメント分を掘るのに要する時間はおよそ40分を要する計算になり、そこから出土する土砂はトラック70台分にも相当するという。

こうした現場を目の当たりにすると、開通したときの状況が瞼に浮かび上がって気分は自ずと高揚してくる。特にこの部分が開通すると、これまで環状八号線(環八)を使って延々と一般道を走っていた状況がノンストップで中央道と東名道に結ばれるようになるわけで、物流業界だけにとどまらず、一般ドライバーにとってもその効果は計り知れないと言って差し支えないだろう。

シールドマシンが掘進した場所は幅1.6mのコンクリート製セグメントを組み込んでいく。青いパイプは工事中の空気を取り入れる専用のダクト

フロア面は路面の下地がすでに完成されていた。この下には非常用脱出通路が全路線に渡って走る

次のページでは
工事再開までの見通しについてを説明

工事は慎重に再開される……!

公開された「大泉側本線」の工事概況。すでに工事を再開している南行本線に加え、北行本線側も12月8日に再開した

 ところで、2022年2月より事業用地内での掘削が進められていた大泉側本線南行きトンネル工事は、今年の4月、地中壁に接触しカッタービットが損傷し、4月以降工事は一旦停止されていた。その後、半年の補修作業を終え、11月に入ってから掘進を再開している。

この損傷の原因について、NEXCO東日本関東支社と国土交通省関東地方整備局は、図面作成上のCAD操作を誤ったことにより、地中壁を誤った位置に設置していたことを明らかにしている。言い換えれば、シールドマシンの掘進自体は、順調に予定通りの掘進を行っていた訳で、設計通りに地中壁が設置されていれば、トラブルは発生しなかったこととなる。この事象を踏まえ、今後の掘進はより慎重に進めていくことが重要となる。

今回、取材できた現場となった「大泉側本線」の概要。本線北行は、あと30mほどで事業用地外となる

 また、大泉側本線のもう一機の本線北行トンネル工事は、事業用地(事業者が取得済の用地)の外まであと30m付近の比較的浅い部分に位置に1230m掘り進んだ状況で工事を停止していたが、後日の情報によると、12月8日よりシールドマシンによる工事が再開されたところだ。掘進再開後はそこから約30mで事業用地の外に出ることになり、その後、地下40mよりも深い大深度での工事が進められることになる。これは「大深度地下の公共使用に関する特別措置法」(大深度法)において定められた地下の利用方法で、大都市の地下を公共に利する使い方を目的に、地下40mより深い空間などでは地上の所有権が及ばないというものだ。

とはいえ、大深度法に基づいて工事を進める事業用地外であっても、地表面に影響を及ぼすわけにはいかない。この日は、そんな中で発生してしまった調布市内の陥没・空洞発生事故を踏まえた様々な対策についても説明があった。

それによると、再び陥没・空洞を発生させないためにも、たとえば掘進停止中も土の塊を生じさせないことや、取り込んだ土の量を丁寧に把握するなどして、地域の安全・安心を高めながら工事を再開することが重要となる。また、新たにボーリング調査箇所を追加したり、様々な実験に基づいた添加材を選定するなどして、工事そのものについても高い信頼性確保することに努めているという。

東京・調布市内で発生した陥没・空洞事故を踏まえ、工事再開に当たっては原因を究明の上、それぞれに適切な対応策を施していく

 こうした様々な対策を講じたことで「東京外環トンネル施工等検討委員会」(2022年6月に第24回、10月に第25回を開催)では、大泉側本線(南行)シールドトンネル工事(2022年2月25日~4月7日)および、10月13日に掘進を完了した中央JCT北側Hランプのシールドトンネル工事において、再発防止対策が有効に機能したことを確認。これにより事業用地外の掘進のお墨付きを得ることにつながったのだ。これを踏まえ、NEXCO東日本とNEXCO中日本では、いよいよ本格的な本線工事の再開に着手する。

細かな情報公開、工事の行方は皆で見守る

工事を再開するにあたって再びトラブルが発生させないための対策を説明する担当者

 ここで重要となるのが陥没・空洞を発生させてしまったことによる周辺住民の不安を取り除くことだ。

そこで、NEXCO東日本とNEXCO中日本では、周辺住民へのきめ細かい「お知らせ」に力点を置き、住民が工事の進捗をいつでも詳細に把握できるようにしている。具体的には、工事の進捗状況に合わせたお知らせを、掘進作業の準備が整った時点、シールドマシン到達前および通過前後など、工事の進捗に合わせてチラシにして配布。さらに地上部での振動・騒音、地表面計測の作業予定を知らせるほか、シールドマシンの位置などがリアルタイムで把握できるような工夫もする予定となっている。これらの情報を必要に応じて繰り返すことで周辺住民は工事状況をつぶさに知ることができるわけだ。

外環道は地下40mよりも深い大深度に、直径16mのトンネルが上下2本作られることとなる。今回の現場取材をして感じたのは、地下までも過密な東京において、このトンネルを通す技術力の高さだ。この広大な空間が16kmも続くと考えただけでも、その偉大さに感動すらおぼえたりもする。外環道は1963年(昭和38年)に「都市間高速道路整備構想」として計画されたのが最初。その当時に誰がこの長大なトンネルになるとは想像しただろうか。一人のドライバーとして、その完成した日が一日も早く訪れることを切に願いたいと思う。

シールドマシンを備える設置台車。ここからおよそ30m先からは事業用地外の工事となる

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