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最終更新日:2016.04.12 公開日:2016.04.12

200mを10周したのに、 トリップメーターは2.1kmに。 その謎に迫る!

文と構成・横内信弘 / 写真と動画・山出高士

こんにちは、ライターの横内です。いつも奇怪な実験を繰り返してきたエジソンスタッフが、今度は200mトラックを車で200周走行する実験を行うとのことで、現場に呼び出されました。

そこで告げられた今回のテーマが、「ODOメーターやトリップメーターは、どのくらい正確なのか?」

ロングドライブで遊びに行くときに、車のODOメーターやトリップメーターで、目的地までの距離を確かめたことってありませんか? ガソリンの消費量と走行距離を見比べて「今回の燃費は・・・」なんて計算に利用する方も多いと思います。

でも、そもそも車の距離計測はどのくらい正確なのでしょうか?? 例えば、タイヤの空気圧が低かったり、条件によっては表示される距離に影響があるのでしょうか・・・と、こうした疑問を解消しようというわけです。

そこで今回の実験では、0.1km単位で表示でき、ゼロリセットができるトリップメーターの表示を採用。クルクルクルと合計200周、40kmの挑戦。結果やいかに。

今回の実験の最大のポイントは、実際に走行する距離を事前にしっかり把握しておくこと。そこで、確実に一周200mになる図のようなトラックを、エジソンスタッフが作りました! ここを2台の同車種の車で走行します。

2台の車のうち、シルバーの車はタイヤの空気圧を「指定空気圧」に、黒の車は「空気圧を半分」にしています。

また、走行ラインにバラつきがないように、車幅1.69mに対して、コース幅は2.5mとタイト目に設定。極力トラック内の内側を走行することもルールとしました。さらにドライバーによる技量の差が出ないように、100周を終えた時点で2台の車のドライバーを入れ替える念の入れようです!

以上の条件で、10周ごとにトリップメーターに表示される距離を記録。それを200周まで続けました。

このお手製コースと2台の車で、以下の2つを確認しました。

まずは、タイヤの空気圧が違う2台の車のトリップメーターを見比べます。

10周、20周、30周・・・と、10周を終えるごとに車のトリップメーターをチェックしていきましたが、特に差が出ないまま50周を終了

「空気圧は、関係ないのかなぁ・・・」なんてことを考えていたその時、60周を終えて初めて2台の車のトリップメーターに差が出ました! タイヤの空気圧を半分にした黒い車は、指定空気圧のシルバーの車より0.1km表示が長くなっていました。その後、120周、180周を終えた段階で、さらに0.1kmずつ距離の表示が増える結果に。

つまり、トリップメーターの表示が60周ごとに0.1km(100m)ずつ増えていたんです。1周当たりに換算すると1.67m(0.8%)程度の差が積み重なっていったことになります。

「0.8%程度の違いなら、たいした問題ではない」って思ってしまいそうなんですが、仮に年間走行距離1万kmの場合に置き換えると、なんと80kmの誤差として表れることになるんです。ドライバーの皆さん、タイヤの空気圧はこまめにチェックし、指定空気圧で走るようにしましょう!

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先の実験で指定空気圧の車は、200周を走り終えた時点で42kmとトリップメーターに表示されていました。でも、ちょっと待ってください、変ですよね? 200周を走ったのなら、200×0.2km(200m)=40km が正しいのでは??

「トリップメーターに表示された距離」の結果を見ると、実は10周目を走り終えた時点から、実際のトラックの距離より0.1km長くなっていました。そして、10周ごとに確実に0.1kmずつ上乗せされていき、200周を終えた時点でその合計の差が2.0kmに開いていました!

この結果が表すところは、「トリップメーターには誤差があり、それほど正確ではない」ということなのでしょうか?

ところが、指定空気圧の車の数値を見ていくと、「トリップメーターの表示は10周ごとに実際の距離より0.1kmずつ増える」という規則的な変化をしていました。何か理由があるのでは?と勘繰らずにはいられません。

そこで、もう一度実験条件に立ち返り、誤差が生まれる可能性について細かく見ていきたいと思います。

まず、タイヤの軌跡です。右タイヤと左タイヤ、さらに車のセンターでは当然走っている距離が異なります。この距離の差が、全体の結果にも関係があったのではないでしょうか。

また、コースをタイトに作ったとはいえ、まったく同じ走行ラインを200周保ち続けたというのも考えづらいでしょう。

そこで、コース内で車のタイヤが走行し得る軌跡をなるべく正確に調べてみました。タイヤごとの、一周の最短ラインと最長ラインは以下のようになります。

左タイヤを見ると、どんなに大回りで10周しても2.1kmになりませんので、左タイヤの軌跡がトリップメーターの表示であると考えるのは難しそうです。

※左タイヤの最長ライン0.20588km×10周<2.1km

では、次に、車両のセンターと右タイヤを見てみましょう。この2つは、「10周したときに2.1kmになる可能性がある走行ライン」といえます。

それでは、このどちらが、実際のトリップメーターの表示に近いと考えるのが自然でしょうか。200周を走り終えたときの車両センター、右タイヤがたどり得る距離の範囲を考えてみます。

今回の実験では、ドライバーは「できるだけトラックの内側(走行距離が最短になるライン)を走るように心がける」ルールにしていましたよね。これを踏まえて上の図を見てみましょう。200周を終えた時の最短ラインの数値が42kmに近い方は・・・右タイヤということが分かります! その誤差を計算してみると、42km走っても、最大でわずか0.2%未満です。

この結果をもって、カーメーカー各社に、ODOメーターやトリップメーターの具体的な誤差の範囲や計測の場所(タイヤ)に関して質問してみたのですが、「公表はしていない」とのこと。そのため、もしかしたら、車種ごとに異なるのかもしれませんし、右回りの走行だったら、違う結果になっていたかもしれません。ただ、今回の実験方法からは、はっきりと、「トリップメーターは右タイヤの走行軌跡を計測して表示している可能性が極めて高い」といえます。

誤差が生まれる理由(一般論)や距離計測の仕組みについて

今回のカーメーカー3社への取材では、前述した具体的な誤差の範囲や計測の場所の他、誤差が生まれるケースや計測方法についても聞いてみました。

走行距離を正確に計測するということは、実はカーメーカーのノウハウがつまった技術的に重要な部分なのかもしれません。カーメーカー各社が揃って公表できなかったことからも、きっとそうなのでしょうね。


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