クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

クルマ最終更新日:2023.07.31 公開日:2023.07.21

新型フェラーリは億超えでも即完売!? 「SF90 XX」は過去の跳ね馬といったい何が違うのか?

フェラーリが新型モデル「SF90 XX」を発表した。”XX”に込められたその意味とは? モータージャーナリストの小川フミオが解説する。

文=小川フミオ

フェラーリのXXシリーズとは何か?

ルーバーやウイングなど、SF90ストラダーレとはだいぶ雰囲気が異なる

記事の画像ギャラリーを見る

フェラーリが2023年6月29日、プラグインハイブリッドのスポーツカー「SF90 XX(エックスエックス)」を発表しました。同社のマーケティング統括を務めるエンリコ・ガリエラ氏は、このクルマの特徴について「公道を走れる初のXX」と説明します。

もう少し詳しく解説すると、従来、サーキット専用として特別な顧客向けに提供されてきた「XX」シリーズを、ストリートリーガル(公道用)に仕立てたのが、このSF90 XXの立ち位置になります。別の見方をすれば、既存の「SF90ストラダーレ」に手を加え、サーキットで思う存分に走れるようにしたのが、このSF90 XXなのです。

サーキット走行を前提にしつつも公道も走れるという、両方からのアプローチが実を結んだSF90 XXは、性能面でも向上しています。ひとつは出力。フロントに2基搭載するモーターで13PSのアップ。またミドに搭載するV8ツインターボエンジンで17PSのアップ。システム最高出力で合計30PSアップの1030PSを発揮します。

2005年からスタートした「XXプログラム」。写真はXXシリーズ第一弾として、エンツォ・フェラーリをベースに開発されたFXX。限定29台がデリバリーされた。

エクストラブーストでさらに加速

加えて、空力性能も向上しました。ボディの空力特性を徹底的に磨きあげて、サーキットでラップタイムを競う走りにも耐える性能を追求しています。なかでも目を引くのは、前後フェンダーに設けられたルーバーと、フロントの空気の流れを整流する大型Sダクト(写真だとオレンジ部分)と、大型の固定式リアウイング。

サーキットでより高速走行が出来るように、空気の力で車体が浮き上がらないよう押さえるダウンフォース効果を狙っています。フェラーリでは、リアの場合、SF90ストラダーレに対して「2倍のダウンフォースを実現」と説明しています。

フェラーリ SF90 XX ストラダーレ|Ferrari SF90 XX Stradale

カーボンファイバー製シートには4点式セーフティベルトが備わり、ダッシュボードはアルカンタラがあしらわれるなど、まさにレースカーそのものだが、それでいて贅沢さもあるインテリア

さらに、プラグインハイブリッドシステムによる、大容量のバッテリーを活かして「エクストラブースト」機構をあらたに採用したのもこのモデルの特長。SF90 XXでは「クオリファイング」というドライブモードを選ぶことで、使用することが出来ます。コーナーの出口で「いくぞ!」とアクセルペダルを床まで踏めば、瞬間的にトルクがモリモリっと湧き出てきます。

エクストラブーストを作動させる諸条件には、ハンドルが直進方向を向いていること、また一定の安全マージンが確保されているなど、いろいろとあるようですが、それをクリアさえしていれば、満充電の場合、30回はこの“ドンっ”という鋭い加速が楽しめるそうです。また、ブレーキ制御やトルク制御なども、さまざまな電子デバイスを活用し最適化。コーナリング性能(サーキットでのラップタイム)の向上が目指されています。

こうしてさまざまな箇所を磨き上げた結果、SF90 XXは「スペチアーレ(限定モデル)とXX(サーキット専用モデル)という2つのプログラムを合体させ、いいところを追求した最上の仕上がり」(プレスリリースより)となった、というわけです。

F50以来となる羽付きフェラーリが復活

ガリエラ氏が「もう1台サプライズがある」と途中でスパイダーを紹介

フェラーリ SF90 XX スパイダー|Ferrari SF90 XX Spider

大きな固定式リアウイングについて、フェラーリでは審美的でないという理由で永らく見送ってきましたが、ここにきて、ついにロードゴーイング(公道を走れる)モデルに採用。その理由について、記者会見の席上で、前出のガリエラ氏は「F40やF50といったモデルを特徴づけていたのは大きなリアウイングで、現代のフェラーリ車にもぜひ、という顧客の声の重視しました」と説明。

いっぽう、デザイン統括のフラビオ・マンツォーニ氏は「機能とエレガンスと両立させるのがフェラーリのデザイン」とまず前置きしてから、「リアの造形については、さまざまな空力的付加物を考慮しながら、SF90 ストラダーレとはまた違う造型美を構築しました」とデザインの見どころを説明してくれました。

ボディスタイルの審美性については、クーペでも、同時に発表されたスパイダーでも、高いレベルにあることがわかります。時速45kmまでなら、わずか14秒で開閉が可能なんていうスパイダーの特徴をみていると、サーキット走行が主目的のクルマとはいえ、エレガンスとコンフォートを捨て去っていないことがわかります。

SF90 XX ストラダーレ(クーペ)の価格は、イタリアで77万ユーロ(1ユーロ=158円とすると約1億2000万円)。同スパイダーは85万ユーロ(約1億3000万円)。クーペのデリバリーは24年の第2四半期から、スパイダーは第4四半期から開始。販売台数はクーペが限定799台、スパイダーは、限定599台ですが、発表の時点ですべて売約済でした。

橫一直線のテールランプやリアウイングなど、リアビューもSF90ストラダーレとはだいぶ雰囲気が異なる

SPECIFICATIONS
フェラーリ SF90 XX ストラダーレ|Ferrari SF90 XX Stradale
ボディサイズ:全長4850×全幅2014×全高1225mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1560kg(乾燥)
駆動方式:全輪駆動
総排気量:3990cc
エンジン:V型8気筒ツインターボ+電気モーター (PHEV)
エンジン最高出力:797PS(586kW)/7900rpm
エンジン最大トルク:804Nm/6250rpm
モーター最高出力:233PS(171kW)
システム最高出力:1030PS(757kW)
トランスミッション:8段ツインクラッチ
最高速度:320km/h
0-100km/h:2.3秒

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

応募する

次回は5月7日からスタートです!
次回は5月7日からスタートです!