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クルマ最終更新日:2023.04.20 公開日:2023.04.20

名門ランチアが復活! 未来を占うEVコンセプトカー「Pu+Ra HPE」が登場

イタリアの自動車メーカー、ランチアがついに復活。4月15日、EVコンセプトモデル「Pu+Ra(プーラ)HPE」を発表した。ランチアの未来がつまった注目の1台を、自動車ジャーナリストの武田公実が解説する。

文=武田公実

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ランチア プーラ HPE|Lancia Pu+Ra HPE

 1906年に創業し、長らく「イタリアの良心」のごとく世界中のファンから敬愛されてきたランチアだが、近年では往年の輝きを失い、迷走している感が否めなかった。2014年にはイタリア国内専売ブランドとなり、国外での販売活動を終了。ブランド存亡の危機も噂されていたことは記憶に新しい。

 しかし2019年に、FCAグループがグループPSAと経営統合して「ステランティス」として再編成。ランチアは、「DS」や「アルファロメオ」と同じプレミアムグループとして存続するという指針が発表されたことで、事態は大きく舵を切ることになる。

 そして今年4月半ば、これから電動車ブランドの道を目指すというランチアの未来を提示した、きわめて興味深いコンセプトカーが、全世界に向けて公開されたのだ。

名門ランチアの伝統を次世代テクノロジーで体現

 ランチアの新しいコンセプトカーの名前は「Pu+Ra(プーラ)HPE」。「Pu+Ra」とは英語の「Pure」に相当し、純粋にして過激なランチアの新生デザイン言語を示しているという。また「HPE」は「High Performance Electoric」のイニシャル。エコ・サステナブルでエキサイティングに進化したクルマであることを謳っている。

 実は「HPE」の名が冠されるランチアは、これが初めてではない。1975年に、ランチア・ベータに追加された3ドアのシューティングブレーク風スポーツワゴンには、スポーティさと実用性の象徴である「High Performance Estate」の名が掲げられていたのだ。

 この「ベータHPE」のエッセンスはボディデザインにも引用され、全体のプロポーションはシューティングブレーク風。リアウィンドウもベータHPEを彷彿とさせ、有名なサンブラインド構造を再訪する包み込む水平線がモダンなひねりを加えることもあって、ランチアの「ファミリーフィーリング」を思い起こさせる。

 またプレーンなショルダーラインには1950年代の「アウレリア」や「フラミニア」、テールエンドの丸いランプの配置には、こちらも伝説的な「HFストラトス」の影響も感じられよう。

ベータHPEのリアのスタイリング。水平線のスリットがプーラHPEにも活かされている。

丸形テールランプは、HFストラトスから意匠。

 いっぽうフロントは、今なお象徴的なものとして記憶に残るランチア伝統の盾型グリルを未来志向に再解釈したもので、カリス(聖杯をイメージしたY字状に広がる黒色のパネル)の上に際立っているのは、ファッションの世界からインスピレーションを得たオリジナルのフォントを使用して作成された、新たなランチアのスクリプトである。また、革新的な円形のルーフは、新しいランチアのデザイン言語の特徴である建築要素を明確に参照した、広いパノラマビューを提供しているという。

 くわえて低く抑えたルーフ、スリムなデジタルウィングミラー、空力重視のデザインを施したホイール、3ピースのフロントプロテクションプレートなどのデバイスによってエアロダイナミクスを徹底的に追求したことから、バッテリーEVでは重要な要素となるエネルギー消費については、10kmあたり1kWh未満に抑えているという。一充電での最長走行可能距離は700 kmを超えるとともに、充電時間は10分弱を目指すとの由である。

ランチアの偉大な歴史を彩るアイコニックな名車たち。

持続可能な素材で構成された、ランチアに相応しい上質なインテリア

 ランチアといえば思い出されるのが、上質にしてハイセンスなインテリア。これまで「エルメネジルド・ゼニア」や「ミッソーニ」、あるいは「ポルトローナ・フラウ」など、イタリアを代表する名門アパレル&ファニチャーブランドとのコラボにより、素晴らしく居心地の良い移動空間が用意されていた。

 いっぽうステランティス&ランチアでは、Pu+Ra HPEについて「高級家具業界のリーダーである『カッシーナ』とのコラボレーションのおかげで、家具の世界に触発された最初のクルマ」と謳っている。

 カッシーナ製のフロントシートは、巨匠ヴィコ・マジストレッティがかつて同社のためにデザインした「マラルンガ」アームチェアに触発されたデザイン。黄土色のベルベット表皮は、化学物質の低排出とGWP環境への影響に基づいて、グリーンガード認証を取得した新素材のものである。いっぽうリヤシートとその周辺は、ポルトローナ・フラウ社から供給されるベルベット風新素材「Velvety Nubuck」で設えられる。

フロントシートは、なんとカッシーナ製!

 またドアのインナーパネルには、大理石の切り出し時/加工時に発生する粉末を固めた「MARM MORE」、ダッシュパネル上縁を大きく覆う丸テーブルにはマズッケリ社のバイオプラスチック材「M49 BioAcetate Renew」を使用するなど、ランチアらしい上質な豪華さとサステナブルへの配慮の両面を追求したものとなっているのだ。

 ステランティスの電動化戦略に沿って、ランチアは2024年にハイブリッドバージョンと電気自動車の二本立てで新型「イプシロン」を発売するとのこと。また2026年以降のイプシロンは100%バッテリーEVのみの体制に順次移行し、2028年からは次期「デルタ」のリリースと同時に、電動モデル専業ブランドとしての未来を模索してゆくことになるという。

 BEVへの一本化については今後の情勢に左右される可能性もあり得るが、それでも偉大な名門ブランドが存亡の危機にあったことを思えば、未来への道筋がようやく示されたことに安堵する向きも多いことだろう。

 そしてPu+Ra HPEで提示されたランチア最新のデザイン言語および哲学は、これから登場してくるであろう次世代ランチアBEVのエクステリアやインテリアのデザインやマテリアルにも色濃く引用されるとのことなので、これからもステランティスおよびランチアの動静に注目していきたいところである。

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